ESGブログ・意見

Withコロナ:個人投資家の投資行動をどう変えたのか?

今年、新型コロナウイルスの流行は「コロナ・ショック」と呼ばれ、生活様式を大きく変えました。今回のブログでは、個人投資家の投資行動にどのような変化をもたらしたのか、ESG投資への流入で個人投資家はどれほど参入したのかを解説していきます。

目次

ESG投資規模の変化

個人投資家によるESG投資額は劇的に増えています。日興リサーチセンターによると、1~9月に関連する投資信託に前年同期の13倍となる7200億円が純流入し、過去最高となりました。ESGへの投資はこれまで機関投資家が中心でしたが、新型コロナウイルスを受けて、個人も企業の持続可能性や社会貢献などに投資対象を広げています。

以前ブログで取り上げたファンドのように、ESGでは大型の投信の設定が相次いでいます。アセットマネジメントOneが7月から始めたESG評価が高い世界の企業を組み入れた投信は、法人だけでなく個人からも応募が相次ぎ、当初設定額が3830億円と、過去2番目の規模となりました。また、野村アセットマネジメントが8月に運用を始めた、廃棄物のリサイクルや再利用の促進など循環型経済が進むことによって恩恵を受ける世界企業を対象にした投信にも約1000億円が入りました。

専門家も、今後もESG投資規模が拡大すると予測しています。BNPパリバ証券の中空氏は、日経ビジネスの取材の中で新型コロナ問題はESG投資の一つのフィールドとして捉えることもできるという見解を明らかにしました。

個人投資家の意識に変化?

読者アンケート

ThinkESGでは、読者の皆さまを対象にメールマガジン・Facebook・Twitter・Instagramで10月23日から28日にかけてアンケートを実施し、23名から回答を得られました。新型コロナウイルス感染症拡大後、投資行動に「変化なし」との回答が大半でした。「興味を持った」の回答は4分の1。投資を「始めた・増やした」と回答した方は9%程度でした。一方で、「企業のESG要素をより重視するようになったか」という旨の質問では、9割の読者はESG要素により注目するようになったと回答しました。少人数のアンケートですが、ESGに対する関心度が上がっているものの、必ずしも投資行動に反映されているとはいえない結果でした。

Q1. コロナウイルス感染症拡大後、投資行動に変化はありましたか?

Q2. 企業のESG要素をより重視するようになりましたか?

野村アセットマネジメントは今年7月中に18~69歳までの1万人を超える個人(投資未経験者含む)を対象に調査を実施しました。ESG投資に関する意識調査では、全体の3割が関心があると回答しました。年代を問わす占め、世代を超えたESG投資への関心が確認できました。また、「今後、株式などの証券投資に関心がある人」のうち、58%がESG投資に関心があると回答。野村アセットマネジメントでは個人投資家の中でESG投資がさらに拡大すると予測しています。


(出処:野村アセットマネジメント)

さらに、日本証券協会が6月末から7月頭にかけて日本全国の20歳以上の5000人の証券保有者を対象に実施した意識調査では、新型コロナウイルス感染症拡大以降、株式保有者の41.7%は、「以前とは変わらず、投資活動を続けている」と回答。「株式の投資額を増やした」(15.1%)、「この機会にはじめて株式を購入した」(2.4%)を含めると、約6割(59.2%)を占めました。年代別でみると、若い層ほど「この機会にはじめて株式を購入した」「株式の投資額を増やした」の割合が高く、 20代~30代は、「以前とは変わらず、投資活動を続けている」と回答した者を含めると、約7割(71.8%) に達しました。

(出処:日本証券)

どんなファンドが選ばれているのか

下のグラフが示すように、2020年は新規設定銘柄の本数・額が増加傾向にあり、ESGやSDGs、インパクト投資などに着目したファンドが相次いで設定されています。例えば、野村アセットマネジメントの「野村 環境リーダーズ戦略ファンド」、ブラックロック・ジャパンのDC(確定拠出年金)専用ファンド「ブラックロック・世界株式インパクト投資(DC『愛称:明日(あした)をつくる』」が挙げられます。10月16日時点で、ファンド名に「ESG」が入っている国内公募ファンドは29本で、残高合計は約6884億円となっています。

2020年9月の資金流入上位ファンドのランキングでは、アセットマネジメントOneの「グローバルESGハイクオリティ成長株ファンド」が首位となりました。当ファンドは3800億円を超える巨額の設定額となり、その後も資金流入が継続して6600億円に迫る純資産総額のファンドに成長しました。11位にはテーマ型のファンドである三菱UFJ国際の「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド」がランクインしています。

(出処:三菱アセット・ブレインズ)

注目を集めるDC型

今年新設されたファンドのうち5本が確定拠出年金(DC)専用ファンドになっています。加えて、「世の中を良くする企業(野村日本株ESG投資)(DC)」や「ブラックロック・世界株式インパクト投資(DC)『愛称:明日(あした)をつくる』」など、DC専用ファンドのために新たにマザーファンドを立ててファンドを新設している傾向も顕著です。DCは加入者が60歳になるまでは原則解約(換金)ができず、20代で加入した加入者は40年近い長期投資をすることになります。長期投資を行う制度の性格から中長期の企業価値の向上をめざすESG投資との親和性が高いと言えます。

今後の注目されるテーマとは?

社会の「S」

世界大手のコンサルティング会社マーサーは、コロナ・ショックを機に「S」(社会)への関心や取り組みが高まる予想。過去数年間は「E」(環境)、特に気候変動がホットトピックでした。これまで「E」と「G」(ガバナンス)と比べると注目度が低かった「S」は従業員の健康と安全の確保、雇用の維持等に対する企業としての対応が関心を集めると見られています。

関連ニュース:

Know The Chain: 強制労働リスクに取り組む企業評価

SDGs投資

また、新型コロナウイルスの流行に伴い危機意識が強まったことにより、SDGsが重要視されるようになったと考えられています。先述した日本証券の調査によれば、SDGs債を認知している者は18.5%。20代~30代は30.1%が 認知しており、年齢が上がるにつれ認知していない者の割合が増えています。SDGs債の保有状況は、全年代において保有割合は低いものの、若い層では「今後、購入してみたい」の割合が高く、20代~30代では、38.9%でした。

(出処:日本証券)

脱炭素

世界は脱炭素に向けて舵を切り始めています。EUは去年12月の首脳会議で、2050年にはEU全体として温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げることで一致しています。EU加盟国の中で最もCO2排出量が多いドイツも、2038年までに全ての石炭火力発電所を廃止することを決定し、イニシアチブを発揮。また、先月には、中国の習近平国家主席は「2060年までに実質ゼロを実現できるよう努力する」と表明しました。

こうしたゼロ・エミッションへの動きはESGニュースでも数多く取り上げてきました。

ロベコ、全ファンドで化石燃料銘柄への投資を除外

1000社が科学的知見に基づいてCO2削減目標設定

HSBC:2050年までにCO2ネットゼロを目指す

ケンブリッジ大学、2030年までに化石燃料からの脱却を目指す

大手銀行、脱炭素化へ:米シティ、モルガン・スタンレー

メルセデスベンツ、2040年までに炭素排出ゼロへ:アマゾンに電気自動車を提供

取り組みが遅れていると指摘されてていた日本ですが、先日26日に菅総理が所信表明の中で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と正式に発表しました。経団連は、6月に炭素ゼロを目指すプロジェクトを立ち上げています。これは、温室効果ガスの削減につながる企業の最新の技術などを公開し、自動車や電機、鉄鋼などのメーカー、銀行、大手商社や大学などが連携する仕組みづくりを目指しているものです。

市場では太陽光・風力発電など再生可能エネルギー関連株や電気自動車(EV)関連株に復活期待が強まっています。

ESGウオッシュに注意

ESGファンドが拡大する中で、注意しなければならないのがグリーンウォッシュです。例えば、ブルームバーグは世界的にESG・ETFへの今年の資金流入は2019年通年の額の約3倍に相当する220億ドル(約2兆3000億円)だと発表しました。しかし、ESGラベルは米規制当局の監視を受けているわけではなく、どう評価すべきかの共通認識がないために、本質的にはESGの評価を満たさない銘柄が含まれている場合があります。日本でもESG関連ファンドが増える中、ESGを銘柄名に掲げる投資信託であっても、その投資先の選定プロセスや判断基準、ESG要素の組み込みの透明性が問われます。

まとめ

これまで見てきたように、コロナ・ショックは世界経済に大きな打撃を与えた一方で、ESG投資の観点からはお金の流れを大きく変えた要因でもある。未知への脅威からリスク管理の重要性を認識する人が増え、同時にESG投資を後押ししています。ESGがトレンドになっているからこそ、投資先を判断する能力が試されています。また、これから投資を始めることを検討されている若者層の中ではESG要素に対する感心度は高まることが期待されます。より多くの個人投資家がESG投資を視野にいれることで、社会や環境課題の解決につながる投資商品の開発と新設定が鍵になるでしょう。


参照リンク:

日経新聞:ESG投信 個人マネー流入13倍

東証マネ部:2020年9月 投資信託の資金フロー

野村アセットマネジメント:ESG投資、若年層など個人の3割が高い関心 野村アセット調査 - 資産運用研究所|QUICK Money World -

日本証券: 個人投資家の証券投資に関する意識調査

Mercer:コロナ禍によりESG投資のトレンドは変化するのか?

NHK:菅首相 所信表明 “脱炭素社会実現” 経済界の取り組みと課題

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