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SDGs x インパクト投資

持続可能な開発目標(SDGs)とは、地球規模課題を受けて、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すために採択された国際目標です。(*1 ) SDGsを達成するための手段として、インパクト投資が注目を集めています。

目次

SDGsとは

持続可能な開発目標(SDGs)は2015年に国連総会で採択されました。17のゴール・169のターゲットから構成されており、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを理念に掲げています。

(出所:外務省)

資金源は①開発途上国自身による資金拠出、②先進国による資金援助、③民間投資の大きく3つに分けられます。SDGs達成には多額の資金を要するため、民間投資の必要性が高まっています。国連はSDGs達成のために、2030年まで毎年約300兆円の追加投資が必要になると試算しています。

SDGsの取り組み内容は国連や国家などの大組織にとどまらず、企業やNGO、金融といったより多様なプレイヤーにも積極的な関わりを呼びかけるものとなっています。その中、SDGs達成に向けて民間部門による事業の幅が広がりつつあることも民間投資が注目される要因の一つです。

民間部門のコミットメントが高まる背景には、SDGsが達成された社会における企業のリスクの存在があります。2030 年に SDGs に反するような製品の製造・販売、サービスの提供はできなくなることが予想されます。つまり、「SDGs に合致するビジネスには商機がある」 ことを意味し、SDGs の 17 の目標はビジネスチャンスを見つけるツールにもなり得ます。(*2)

SDGs達成に貢献する投資方法

SDGsの達成の手段として考えられているのが、これまでThinkESGで取り上げてきたESG投資です。ESG 投資の普及を図る国際団体GSIA (Global Sustainable Investment Alliance)は、ESG投資を以下7つのタイプに分類しています。(*3 )中でも、今回はインパクト投資についてご紹介します。

注目を集めるインパクト投資

以前のブログでもお伝えしたように、インパクト投資は、ポジティブな社会的インパクトを意図とし、そのインパクトの持続可能性を支えるために経済的リターンを求める投資方法です。(*4)

他の投資方法には、ESG評価の高い企業を投資対象にする「ポジティブ・スクリーニング」や、ESG評価の低い企業を投資対象から外す「ネガティブ・スクリーン」などの手法があります。しかし、インパクト投資はESG評価に頼らず、インパクト評価を用いて社会貢献を行う企業を見つけ出します。(*5 )

インパクト評価は下の図のような一連のサイクルによって実施されます。社会的インパクト投資家は、投資先企業と連携しながら自身の投資がもたらした社会・環境面のインパクトについて評価を行います。なお、インパクト評価においては、投資先企業の事業の評価だけではなく、投資家が投資先を決定するプロセスや、投資家が投資先企業に対して行った、非資金的な支援も含めて評価を行うものとされています。(*6)

詳しくは、こちらのESGニュースをご覧ください。

インパクト投資は小型株や非上場株が多く、高い成⻑が見込まれます。他のESG投資に比べて相対的に高いリターンが期待できる一方で、比較的高いリスクがあるのも事実です。(*7 )下の表の通り、現状ではESG投資運用額のうちインパクト投資が占める割合はごく僅かです。しかし、2019年末のインパクト投資の世界の市場規模は推定 7,150億ドル(約75兆円)、2019年4月時点で2050年には10兆ドル(約106兆円)に達するという試算が出ており、急速に勢いを増しています。

(出処)GSIA “2018 Global Sustainable Investment Review”

日本におけるインパクト投資

国内諮問委員会(GSG)のレポートによると、2019年度の日本のインパクト投資残高は推計4480億円であり、前年から1000億円を超える増加が見られました。また、インパクト投資を実施した団体のうち、新たにインパクト投資を実施した団体が全体の約1/3を占め、インパクト投資のプレイヤーが幅広く拡大していることが把握されました。(*8)

さらに政策面においては、2019年に開催されたG20大阪サミットの首脳宣言や、安倍総理のスピーチにおいてインパクト投資が明言されました。

商品の種類

これまで、SDGs達成のためにインパクト投資が有効であることをお伝えしてきました。

では、インデックスファンド、アクティブファンド、マイクロファイナンス、スタートアップ・初期投資の4種類に分けて、実際にどのような商品があるのかをご紹介します。

インデックスファンド

  1. eMAXIS ジャパンESGセレクト・リーダーズインデックス

こちらは、三菱UFJ国際投信が国内の金融商品取引所上場株式を対象に運用するインデックス型の投資信託です。大きな特徴と言えるのが、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数に連動する投資成果をめざしている点です。この指数は、MSCI Inc.が開発した株価指数で、業種内において相対的にESG評価が優れた企業で構成されています。

MSCI ジャパンESGセレクト・リーダーズ指数は、親指数(MSCIジャパンIMIトップ700指数:時価総額上位700銘柄)構成銘柄の中から、親指数における各業種分類の時価総額50%を目標に、ESG評価に優れた企業を選別して構築される指数です。この選別手法により、ESG評価の高い企業を選ぶことで発生しがちな業種の偏りが抑制されています。MSCI ジャパンESGセレクト・リーダーズ指数に対する著作権およびその他知的財産権はすべてMSCIInc.に帰属します。(*9)

この指数を運用に反映するため、以下のプロセスで実施されています。

(出処:三菱UFJ国際投信)

2. UBS MSCI先進国サステナブル株式インデックス・ファンド(愛称:みらいゲート・先進国)

こちらは、USBアセットマネジメントが世界中のESG評価が高い企業の株式で構成されるMSCI ワールド SRI 5% イシュアー・キャップト・インデックスに概ね連動する投資成果を目指したインデックス型の投資信託です。

MSCI ワールド SRI 5% イシュアー・キャップド・インデックスとは、世界の先進国の株式を対象とした株価指数「MSCIワールド・インデックス」(構成銘柄数約1,600)から、「ギャンブル」「タバコ」「兵器」など特定の企業を除外した上で、ESG格付けが高く、かつ、不祥事スコアが高い企業群を厳選して構成された「MSCIワールドSRI指数」をもとに、1銘柄あたりの配分比率を5%以内に制限した指数です。

このインデックスを採用することで、当ファンドはポジティブ・ネガティブスクリーニングを実施していると言えます。

また、インデックスとの連動性や運用の効率性等を高めるため、UBS独自のシステムを活用し、UBSアセット・マネジメント・グループが各組入銘柄 の比率の調整およびリスク管理を行っています。

(出処:UBS)

アクティブファンド

  1. 世界インパクト投資ファンド

主に世界の株式を対象に、ウェリントン・マネージメント・カンパニー・エルエルピー社によって運用されるファンドです。Better Worldという愛称があります。

マザーファンドへの投資を通じて投資する(ファミリーファンド方式)ことで、信託財産の中長期的な成長を図っています。

(出処:三井住友DSアセットマネジメント株式)

銘柄選定にあたり、「衣食住の確保」「生活の質向上」「環境問題」の3つのカテゴリーの中で、それぞれ3~4種類のテーマが設定されています。これにより、SDGsと親和性の高い銘柄が選ばれていると言えるでしょう。

また、以下の図表にある投資先銘柄を絞り込む基準に「インパクト事業への集中度・事業比率」や「インパクトの定量評価」などを明確にしていることから、しっかりとインパクト要素を取り入れていることが読み取れます。

(出処:三井住友DSアセットマネジメント株式会)

 

2. シュローダー日本株ESGフォーカス・ファンド

シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社による、国内の株式に投資するファンドです。国連責任投資原則(PRI)で5年連続で最高格付けを獲得するなど、実績があります。(2019年時点)(*10) (*11)

また、一般的な企業評価に加えてシュローダー・グループのアナリストによるESG評価を実施しています。競争力、成長力、マネジメント力、財務体質に ESGを加えた総合評価の高い企業を厳選する一方で、法令順守の意識や環境・社会への配慮が希薄な企業を回避しています。世界株式ファンドと同様に、こちらもファミリーファンド方式を採用しています。

(出処:シュローダー・インベストメント・マネジメント株)

LINE証券

*上記に挙げたファンドに共通している留意点として、組入有価証券等の価格下落、発行体の倒産、財務状況の悪化、為替変動等の影響によって、ファンドの基準価額が下落して損失を被る場合があります。 したがって、投資者の投資元本は保証されているものではなく、投資元本を割り込むことがあり、リスクを考慮して判断する必要があります。

 

マイクロファイナンス

マイクロファイナンス(小規模金融) とは、貧しい人々に小口の融資や貯蓄などのサービスを提供し、彼らが零細事業の運営に役立て、自立し、貧困から脱出することを目指す金融サービスです。(*12) SDGsの理念である「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という考え方に合致しているでしょう。

マイクロファイナンスに参加する方法は2つあります。マイクロファイナンスを実施しているNPO団体などへの寄付・投資と、ソーシャルレンディング事業者を通じた支援です。ソーシャルレンディングとは、資金の貸借のニーズを結びつける金融サービスを指します。日本国内にはマイクロファイナンス案件を取り扱うソーシャルレンディング事業者があり、そこを通じて支援すると良いでしょう。

具体的に、国内でマイクロファイナンス案件を取り扱っているソーシャルレンディング事業者として、次の2つが挙げられます。

1.クラウドクレジット

こちらは海外のマイクロファイナンス案件を専門に取り扱っています。

案件の主な国としてはカンボジアやペルーが挙げられます。利回りは低いものでは2.5%、高い案件では7%以上のものもあります。一案件ごとの投資額として1万円から設定することができ、少額資金の投資を希望する方に適していると言えます。

2. ネクストシフトファンド

カンボジア、ジョージア、モンゴル3カ国のマイクロファイナンス案件を取り扱っています。ネクストシフトファンドの期待利回りは5%~7%であり、日本国内のソーシャルレンディング案件と比較しても高い利回りが期待できる一方で、最低投資額は2万円からと、クラウドクレジットと比較して高いです。

 

スタートアップ・初期投資

非上場であるもののソーシャルビジネスを目的にSDGsのゴール達成に直接的に取り組んだり、小規模にも限らず新しいビジネスのあり方を新たに描く企業があります。例えば、廃棄されたバナナの繊維からバナナペーパーを製造・販売していたり、紙やプラスチックの代替となる新素材を開発したりと、事業内容は多岐に渡ます。(*13)

こうしたスタートアップ企業に投資する方法は3つあります。

1.投資家自ら投資する

個人的に投資先を探す方法です。ただし、ベンチャー企業が関係のない一般的な個人投資家に株式を売ることは滅多になく、難しい方法と言えます。また、SDGsに適った事業を行っているのか個人の裁量で判断することになるでしょう。

2. ベンチャーキャピタルを介して投資する

ベンチャーキャピタル(VC)とは、将来性や成長性の高い未上場企業へ投資・支援をして、株式の売却等により大きなリターンを目指す投資ファンドを指します。

ただ、高額な出資金を設定しているケースもあるため、個人投資家では難しい場合もあります。また、ファンドの出資者の募集情報を自分で探す必要があり、場合によっては一般の個人投資家の出資が制限されていることもあります。

近年、VCによるインパクト投資に期待が寄せられています。しかし、VCがベンチャー企業へ社会的インパクト投資を行うにあたり、大企業と比較してリソースが少ないため、事業のインパクト評価をどのように行うのかという課題があるのも事実です。(*14)

3. クラウドファンディングで投資する

クラウドファンディングとは、インターネットを利用して幅広い投資家から事業に必要な資金を募る方法です。クラウドファンディングを支援するWEBサイトにベンチャー企業等がその事業内容を登録し、投資家を募ります。

企業は資金調達成功の見返りとして、返礼品や社内イベントの参加券、氏名掲載といったサービスを提供することもありますが、投資型のクラウドファンディングの場合は一般の株式投資と内容的に大きな違いはなく、投資額に応じて投資家に未公開株式を分配する形になります。

株式投資型のクラウドファンディングでは、未上場企業がインターネット経由で多くの投資家から少額ずつ資金を調達し、投資家は対価として株式(未上場株式)やストックオプション(一定期間内にあらかじめ決まった価格で株式を購入できる権利のこと)を得るという仕組みになっています。投資金額は5万円や10万円といった少額から可能であり、手軽で始めやすい投資方法となっています。(*15)

実際のサービスとして、以下の2つをご紹介します。

Fundinno

2015年に日本クラウドキャピタル社が日本初となる株式型クラウドファンディングとして立ち上げました。株主コミュニティという、投資家と出資先、仲介業者を繋げるシステムがあり、投資先企業へのフォローアップが厚いです。基本的に出資は一口10万円程度ですが、稀に1万円から出資可能な案件もあります。

unicorn

2018年末に第一種少額電子募集取扱業者の認可を受けた新興の株式投資型クラウドファンディング仲介業者です。スタートアップ企業への投資を専門とし、投資先の起業家にフルサポートを行って株式公開まで導く事業モデルになります。(*16)

まとめ

以上のように、SDGs達成の手段としてインパクト投資が注目されています。投資方法は様々ですが、投資先を選ぶ重要なポイントとなるのが投資基準になるインパクト評価の内容・方法でしょう。前のブログでも触れましたが、リスク許容度や投資スタイルを考慮した上で、投資先を探してみてください!


【参考リンク】

*1 外務省:SDGsとは?

*2 大和総研:企業がSDGs に取り組む意義

*3  GSG レポート

*4 渋澤健『ESG投資 資産運用しながら社会貢献』朝日新書 2020年

*5 The Motley Fool:市場規模を増やしているンパクト投資とは何か?ESG投資との違いも解説

*6 大和総研:インパクト評価をどのように行うか

*7 大和住銀投信投資顧問:5分でわかるインパクト投資

*8 GSG国内諮問委員会:日本におけるインパクト投資の現状

*9 三菱UFJ国際投信:eMAXISジャパンESGセレクト・リーダーズ

インデックス投資信託説明書

*10 Schroders:シュローダーのESG投資の取り組み

*11 ESGCLARITY:UN PRI Reports 2019: Schroders scores well on strategy and governance

*12 Positive Planet Japan:マイクロファイナンスの仕組み

*13 経済産業省 関東経済産業局:本業を通じてSDGsに取り組む中小企業・ベンチャー企業の先進事例の紹介

*14 大和総研グループ:VCが社会的インパクト投資において期待される理由とは

*15 日本証券業協会:株式投資型クラウドファンディング

*16 NewSphere:【比較】投資型クラウドファンディング・ソーシャルレンディングのおすすめ|事業者とサービスを紹介

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