ESGブログ・意見

エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されている国連気候変動会議COP27(第27回国連気候変動枠組条約締約国会議)では、気候変動における被害に苦しむ途上国を含んだアフリカ大陸での開催につれ、気候危機における「損失と損害」についての議論が注目されている。

初の議題『Loss and Damage(損失と損害)』

今回初めて会議の正式アジェンダの中に『Loss and Damage(損失と損害)』が取り上げられた。

今年初めに開催されたドイツ・ボンの会議でパキスタンによって提案され、正式に採用された。パキスタンはここ数ヶ月のあいだ、前例のない洪水によって国土の3分の1に大きな影響を受けている。

この損失と損害の問題は、30 年以上にわたって議論されてきたが、正式な議題となるのは今回が初めてだ。二酸化炭素排出量の少ない途上国での被害が甚大になってきた今、特に重要な議題となってきている。

2021年にグラスゴーで開催されたCOP26では、発展途上国のグループが先進国に対し、損失と損害に対する資金提供を約束するよう求めたが、米国や EU などから反対され、最終的に否決された。

しかし今回、途上国が気候危機による被害を強く訴えたこと、先進国の協力が不十分だとして不満の声を次々とあげたことにより、先進国が途上国を支援する仕組みについてきちんと話し合うことで合意するに至った。

損失と損害の定義と対応策

この用語は、気候危機の責任が最も少ない途上国で発生した損失を、先進国や高排出国に負わせるべきだと主張する国や組織によって使用され始めた。このため「損失と損害」という用語は、「気候補償」と説明されることもある。

IPCC によると、「損失と損害」は大きく 2つのカテゴリに分けられる。一つは「収入と物的資産」に関する経済的損失。もう一つは 「死亡、移動性、および精神的健康の損失」などの非経済的損失だ。

気候危機の経済的影響は、その影響の深刻さと地域コミュニティの脆弱性の両方によって決まると言われている。これらは、貧弱なガバナンスや投資の欠如などの要因によって悪化する可能性があると言われる。

先進国だけでなく途上国でも、温室効果ガスの排出を削減するような緩和策、または温暖化の影響の増大を防ぐための適応策のための資金が必要だ。

しかし先進国が途上国の気候変動対策を支援するためにすでに約束している資金は、現在、温室効果ガスの排出削減対策(「緩和」)か、温暖化の影響拡大から身を守るための適応策のどちらかにしか向けられていない。

どちらの資金も、熱波によって愛する人を失ったり、サイクロンによって財産や農地に損害を受けたりするなど、気候変動による損失を経験した人への支援を特に目的としていない。

そこで、途上国は特に気候危機に対して脆弱な人々が経験している損害と損失を補うために支援する「損失と損害の金融ファシリティの創設」を求めている。

損失と損害と気候正義の関係性

国連事務総長のアントニオ・グテーレスは、損失と損害について、

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2022/11/13

COP27特集: 気候変動における「損失と損害」とは?

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2022/11/4

木質バイオマス発電、ほんとにサステナブル?

「カーボンニュートラルな電気」として木質バイオマス発電の導入量は年々増加してきました。当初は林地残材などの地域の森林資源利用の推進は目的の一つであったが、近年は海外産の原料輸入が急速に伸びています。世界に先駆けてバイオマスの導入を活発に進めてきた欧州でも同様の現象が起こっており、木質バイオマスの「カーボンニュートラル」や持続可能性について多くの疑問点が顕在化してきています。本記事では欧州での最新の取り組みと交えながら、日本や世界における木質バイオマス発電の持続可能性について説明します。 バイオマスエネルギ ...

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2022/7/11

自然なくして、ネットゼロは成立しない

自然破壊と気候変動という2つの危機は、表裏一体の関係にある。しかし、あまりにも長い間、この2つの危機は別々に議論され、対処されてきた。資本市場も同様で、両者の問題は別個のものとして扱われてきた。しかし、そうではないはずだ。 経済的には、自然環境は何千兆円もの価値を持つが、今までその価値は正しく財務的に評価されていなかったため、環境を破壊するのにコストがほとんどかからず、逆に環境を保全する取り組みがコストとして計上されてきた。しかし事実場、逆のはずだ。企業は公の財産である自然環境を破壊した場合、社会にそのコ ...

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2022/6/25

科学的知見に基づいたネットゼロ目標を評価する『Net Zero Tracker』

Net ZeroTrackerは、国、地域、都市、企業が約束した温室効果ガス排出実質ゼロ目標を達成し透明性のある説明責任を果たせるよう、専門家たちがデータをもとに評価する取り組みだ。 世界では、2018年のIPCC特別報告書をきっかけにネットゼロ(※)の目標設定をするところが大幅に増加した。しかしこれに対し、透明性と説明責任を果たしているところはまだ多いとは言えない。 そこでこれら目標に対し、関連するデータを収集し、あらゆる分野の専門家が進行状況を理解・評価できるようにしようと立ち上がったのが、Net Z ...

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2022/6/13

ビジネスと人権、日本の動きは?

昨今消費者や投資家の人権意識が高まっていることから、国際社会で「ビジネスと人権」に対する施策や取り組みが増えてきている。 2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されたことに加え、国連グローバルコンパクトの10原則や2015年に採択されたSDGsの普及などにより、人権の取り組みは後押しされてきた。 最近では、G7諸国の多くが企業のサプライチェーンにおける人権リスクや影響を特定し、人権侵害を未然に防ぐための報告義務やデューディリジェンスの要件を公表している。 欧州委員会でも、2022年2月 ...

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2022/1/23

2022年を見据えたESGテーマ3選~③生物多様性~

はじめに  現在、自然環境の悪化に伴い、生物の多様性が、これまでにない早さで刻一刻と失われつつある。これは、私たち自身が、人類を含めた多くの生命にとって欠かすことの出来ない命の土台である生物多様性を自ら壊していることに他ならない。人為的な動物の移動による外来生物の生態系への影響や、森林伐採などで動物たちの住居を奪うという事態も頻発している。 そんな中、海外では政府や企業が生物多様性を考慮した取り組みが徐々に進んできている。本ブログでは、欧州における政府、投資家や企業の取り組みや、生物多様性の世界的保護を話 ...

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2022/1/10

2022年を見据えたESGテーマ3選~②地域の脱炭素化~

はじめに  脱炭素が競争力と結びつく時代、地方の成長戦略として、地域の脱炭素化を目指す官民連携が進められている。地域の強みをいかした地域の課題解決や魅力と質の向上に貢献する機会となることから注目を集めている。 そんな中、2021年6月9日に行われた政府の国・地方脱炭素実現会議で、「地域脱炭素ロードマップ」の公表と同時に、地域脱炭素を後押しする枠組として環境省が先導する「脱炭素先行地域」を設けて積極的に脱炭素地域の先行事例を日本全国で拡大させていく取り組みを行うことが発表された。  本ブログでは、2022年 ...

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2022/1/4

2022年を見据えたESGテーマ3選~①アグリテック~

はじめに   世界的な人口増加や食料不足、農業従事人口減少、食料廃棄の現状から、世界的に「食産業」のサステナビリティ課題が問題視されている。そんな中、課題解決に挑むアグリテックやフードテック企業が投資家の注目を集めている。日本においても、「スマート農業」と呼ばれる新技術や、代替肉商品や人工知能AIを活用したシステムの導入が進展している。今後、アグリテック・フードテック産業の成長余地は大きいと想定されており、農業の持続可能性を支える分野として、日本を含む世界のESG投資家はこうした関連株式に投資する傾向が高 ...

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2022/1/3

2021年、ESG投資信託で+26%リターン

2021年は、ESG投資に益々注目が集まった年となりました。Withコロナの生活が長引き、出口戦略が危ぶまれる中、思い通りに復活出来なかった部分が残る反面、ニューノーマルのあるべき社会の姿を改めて考えさせられました。 著者はESG投資を実践し始めてから来年で10年立ちますが、数年前まではブティークな運用会社ばかりが主に取り組んでいた責任ある投資が、近年では世界の潮流となるほど広がっていると日々感じています。 今年のはじめに「2021年のESG投資予測」のブログで予測したマクロトレンドはそれぞれ強まっていき ...

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2021/12/23

2022年、ESG投資家のための6つの優先事項

2021年には、ESG投資の普及が大きく加速し、責任投資の哲学と実践が主流となり、成熟してきた。 しかし、持続可能で公正な未来を実現するために、まだ多くの優先事項が残る。 機関投資家に対してESGを重視した投資を長年促進してきた責任投資原則(PRI)のCEOを退任するフィオナ・レイノルズ氏は、2022年に向けて、責任ある投資家が優先すべき6つの重要な事項を指摘した。 1. 社会的課題、すなわち人権問題の重要性 数年前に比べ、COVID-19の大流行によって、社会問題がファイナンスのアジェンダに上り始めたこ ...

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