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英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、「アジア太平洋気候リーダーズ2023」の企業リストを5月25日に公表した。同ランキングは、過去5年間に自社の温室効果ガス排出量削減を最も進めたアジア太平洋企業上位275社をリストアップしたものだ。日本企業4社は上位10社にランクインした。野村総合研究所(3位、75.1点)、中外製薬(6位、73.8点)、NTTデータ(8位、73.4点)、丸井グループ(10位、73.2点)それぞれの取り組みが高く評価され、国別の成績では日本企業が2年連続トップで130社が掲載された。

気候リーダーの評価基準

今年は、市場動向を反映させるため、リスト入りの基準が改善された。去年は、スコープ1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出、燃料の燃焼、工業プロセスなど)およびスコープ2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の温室効果ガス(GHG)排出量を5年間で最も削減した企業をリストアップしていたが、今回は、2016年から21年にかけてのスコープ1と2の排出量削減における企業のパフォーマンスを算出するだけでなく、スコープ3(原料調達・製造・物流・販売・廃棄等、一連のサプライチェーン全体に伴う間接排出量)に関する透明性を反映するスコア、さらに排出量削減への取り組みを示すその他の指標を割り当てた。これらの指標には、企業の環境情報開示を促進する非営利団体CDPとの連携や、企業の排出削減計画を評価するScience Based Targets initiative(SBTi)との連携が含まれている。これら2つの要素(排出量原単位の削減とコミットメント基準、それぞれ80%と20%の重み付け)を組み合わせて、各企業の総合スコアを算出している。

スコープ1−2−3の指標

スコープ1と2の排出量は、表中の「コア・エミッション」と呼ばれ、それぞれ企業の事業活動と使用するエネルギーから発生し、原単位は売上高100万ドルあたりのCO₂換算排出量トンとして試算されている。スコープ3の排出量は、事業者自ら排出しているScope1、Scope2以外の事業者の活動に関連する他社の温室効果ガスの排出量であり、包括的に考慮するのが困難だ。標準的な指標はなく、サプライヤーや顧客からの信頼できるデータもつかみにくいため、企業は常にそれらを開示しているわけではない状況だ。しかし、一般的にはスコープ1や2の排出量をはるかに上回り、世界的な基準設定機関である国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)の新しいガイダンスに詳述されている報告義務化は、多くの法域で避けられないと考えられているため、スコープ3に関する透明性は重要な要素となってきている。

評価対象企業

2021年の売上高が5,000万ドル以上のすべてのアジア太平洋企業(アジア太平洋14カ国のいずれかに本社を有すると定義)が評価対象なった。CDPから評価を受けている企業については、B-以上のスコアを持つ企業のみが検討対象となっている。CDPと連携していない企業も対象にしたが、総排出量が年間CO₂換算で200万トン以上の企業については、CDPの評価がA-以上であることが必須条件とした。

また、FTは、例えばGHG以外の汚染物質や森林破壊など、より広範な環境への影響の観点から、「気候リーダー」であるという主張を弱めるような行為が確認されている場合は、その企業を除外している。新たな化石燃料開発事業を進めるエネルギー企業は、このカテゴリーに含まれる。

最高得点の企業

最も高いスコアを獲得した企業は、香港に上場しているコンピューターメーカーのレノボ・グループ(79.7点)、次いでプロフェッショナルサービス企業2社がランクイン: インドのウィプロ社(75.6点)と日本の野村総合研究所(75.1点)。業界別で見ると、昨年同様、エレクトロニクスおよびテクノロジー産業が57社で最も多く、次いで金融サービス業界から34社となっている。

また、上位2カ国も変わらず、日本企業が130社、オーストラリアから46社がトップ企業にランクインした。

トップ10に入った日本企業4社に加え、トップ35に入った日系企業は以下の通り:

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