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世界111の化石燃料関連企業による排出が、1991年から2020年の間に約28兆ドル(約4,000兆円)相当の熱波被害をもたらしたとする研究結果が発表された。研究では、排出量ごとの気温上昇や経済損失が企業別に数値化され、5社だけで全体の3分の1を占めることが明らかになった。この手法は、企業ごとの「気候変動責任」※を科学的に裏付ける新たな証拠として注目されている。

※気候変動責任とは?
気候変動責任(climate liability)とは、気候変動に起因する損害に対する法的責任のことで、過去と将来の損害の両方を含み、政府、企業、その他の行為者の行動にも及ぶ可能性がある。

気候変動責任は確立された科学

ダートマス大学の研究チームが発表した最新の論文により、世界111の化石燃料関連企業が1991年から2020年にかけて排出した温室効果ガスが、極端な熱波による経済損害28兆ドル(約4,000兆円)を引き起こしたことが明らかとなった。本研究は学術誌『Nature』にて2025年4月23日に公開されており(*1)、排出量を企業ごとに分解し、その影響を経済被害として金額換算する独自のモデルを提示している。

本研究の著者である、ダートマス大学地理学部のジャスティン・マンキン教授と、同大学博士課程修了者のクリストファー・キャラハン氏は「我々は、気候変動責任に関する科学的根拠はすでに確立されていると主張する」と断言しており、タバコ産業が肺がん、製薬業界がオピオイド中毒で問われたように、気候災害に対しても加害企業の責任を問うべきと主張する。*2

最も責任の重い5社

研究では、温室効果ガス排出のうち上位5社が総コストの約3分の1にあたる約9兆ドル(約1,290兆円)の損害に関与していると試算された。

  1. サウジアラムコ(サウジアラビア):2.05兆ドル(約293兆円)
  2. ガスプロム(ロシア):2.00兆ドル(約286兆円)
  3. シェブロン(アメリカ):1.98兆ドル(約283兆円)
  4. エクソンモービル(アメリカ):1.91兆ドル(約273兆円)
  5. BP(イギリス):1.45兆ドル(約207兆円)

損害評価には、1,000通り以上のシミュレーションを用いて、特定企業の排出が存在しなかった世界と比較し、気温上昇の差異が用いられている。このシナリオに基づくと、例えばシェブロンによる大気汚染が地球の気温を約0.025度上昇させたと結論づけた。

研究者たちは、さらに80通りのシミュレーションを用いて、各企業の温室効果ガスが年間で最も暑い5日間にどの程度影響しているかを算出し、極端な熱波の強度と経済生産の変化を結びつける数式を適用した。このシステムは、2021年の北西太平洋熱波のような極端気象イベントが気候変動にどの程度影響されたかを分析するため、過去10年以上にわたり科学者が用いてきた確立された手法に基づいている。

また、研究者らは、1990年以降に排出された温室効果ガス1%あたり、熱波による損害だけで5020億ドル(約72兆円)の損失が生じていると算出した。この数字にはハリケーン、干ばつ、洪水などの被害は含まれておらず、実際の損害総額はさらに高い可能性がある(排出データは、一般公開されている「カーボン・メジャーズ・データベース」から取得された)。

科学的根拠に基づく責任追及

ダートマス大学のマンキン教授は、

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