国際標準化機構(ISO)は6月17日、「ISO ネットゼロを目指す組織向け規格(ISO 14060)」に関するパブリックコメント募集を開始した。ISO 14060規格は、企業のネットゼロ目標、移行計画、および温室効果ガス(GHG)報告のための、統一された国際的に認められた枠組みを確立するものであり、組織が信頼性が高く包括的なネットゼロ移行計画を策定することを支援するために設計された、世界で初めての独立して検証可能な国際規格である。*1
この国際規格草案は、9月上旬までに各国の合意形成を行うため、170カ国以上のISO加盟国の会員を対象に、12週間のパブリック・コンサルテーション期間を設けて公開されている。本記事では、4段階の主張フレームワークと、カーボンクレジットの購入者にとって最も関連性の高い規定について分析する。これには、継続的な排出量の取り扱い、GHG排出量実質ゼロ(ネットゼロ)達成における「相殺」の要件、カーボンクレジットの品質基準、および移行期間中のクレジットの利用方法などに注目する。
ISO 14060の適用範囲
ISO 14060は、組織がネットゼロに沿った道筋と移行計画の進捗状況を策定、実施、および伝達するための原則、要件、および指針を規定している。これには、パリ協定を尊重しつつ、地球規模のネットゼロを支援するための目標設定、移行計画の策定、行動の実施、およびこれらの目標に向けた進捗状況の証明が含まれる。要件を満たす組織は、世界的に認められたアプローチに従って、検証済みかつ
認証済みの主張を行うことが可能になる。
ISO 14060は、公共部門および民間部門のあらゆる組織(企業、法人、NGO、学術機関など)に適用され、バリューチェーン全体(スコープ1、2、およびすべての重要なスコープ3排出量)を網羅している。
この規格は、4段階の主張フレームワークを定めている:
- 1. ネットゼロへの志向(英:Ambition)2年以内に目標を設定し、移行計画を公表することを約束する
- 2. ネットゼロに沿った移行計画(英:Transition Plan)目標と計画が設定され、実施が開始される
- 3. ネットゼロに沿った進捗(英:Progress)中間目標が達成されている
- 4. ネットゼロの達成(英:Achievement)残留排出量は、毎年、永続的な吸収・除去によって相殺される
各段階には、期限付きの要件、報告義務、および不遵守の場合の措置が定められている。これは、組織が一度取得すればそれで済むような「バッジ」ではなく、すべての段階で年次検証と公開報告が求められるのが特徴的だ。*3
ガバナンスおよび移行計画の要件
本規格は、ネットゼロ達成に必要なコミットメントとガバナンスに焦点を当てており、その目的のために、企業に対し、目標設定から2年以内に詳細な移行計画を公表することを義務付ける。*2 そのロードマップには、とりわけ以下の内容が含まれていなければならない:
- 提案を裏付ける「信頼性のある定量化されたデータ」
- 戦略を企業のコアビジネスモデルに統合するためのプロセス
- 企業が計画する行動のタイムライン
- 進捗状況の測定、報告、検証方法に関する情報
- カーボンクレジットの活用計画に関する詳細
グリーンウオッシュ防止措置
重要な点として、不遵守やグリーンウォッシュを管理するための具体的な安全策が設けられている。
この4段階の主張フレームワークには、企業がどのような表現を使用できるかについて明確な指針を示す、厳密な文言要件が定められている:
- ステージ1:「ネットゼロ目標の設定を約束する」
- ステージ2:「20XX年までにネットゼロを達成するため、ネットゼロ整合型移行計画の実施を約束する」
- ステージ3:「ネットゼロに沿った道筋にある」または「ネットゼロに向けて進展している」
- ステージ4:「組織としてのネットゼロを達成した」
各ステージには最長期間が設定されており、次のステージへ進むための要件が定められている。中間目標を達成できなかった組織には、最大2回の非連続な調整期間または是正期間が与えられる。3年以内に道筋に戻ることができない場合、主張を行うことを中止しなければならない。
組織がネットゼロを達成した後、何らかの理由(例:炭素除去「CDR」の逆転や実施の失敗など)によりネットゼロのステータスを失った場合、直ちに公表するとともに、3年間の猶予期間内にステータスを回復する必要がある。猶予期間を経過した後もステータスが回復しない場合、再検証が行われるまで主張を撤回しなければならない。
継続的な排出への対処方法:削減対策の優先順位 「Mitigation Hierarchy」
本規格では、バリューチェーン内の排出量削減を明確に最優先とする正式な緩和の優先順位(英:Mitigation Hierarchy)を定めている。「組織の温室効果ガスインベントリ境界内における排出削減は、他の緩和措置よりも優先されなければならない。」
組織は、パリ協定に合致したセクター別のネットゼロ達成経路に沿って、スコープ1、2、およびすべての重要なスコープ3カテゴリーについて、科学に基づく排出削減目標を設定しなければならない。目標は絶対値でなければならず、すべての温室効果ガス(GHG)の種類を網羅し、スコープごとに個別の目標として設定されなければならない。
最初の中間目標は、目標設定年から5年以内に設定されなければならず、その後の目標は10年以内の間隔で設定される。中間目標を達成できなかった組織は、構造化された是正枠組みの対象となり、最大2つの非連続的な調整または是正期間(各期間の期間は最大3年)が設けられる。
カーボンクレジットは、中間目標またはネットゼロ排出削減目標の進捗として算入することはできない。これは厳格な要件として定められている一方で、ネットゼロ達成までの移行期間中の良質カーボンクレジットの明確な使用用途も定められている。*3
移行期間におけるカーボンクレジットの役割
本基準では、移行期間におけるカーボンクレジットの正当な活用事例として、以下の3つを定めている。
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