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10万円でESG投資をするとしたら、何を選べばよいだろうか?

国民一人当たり10 万円が支給された特別定額給付金。受け取った10 万円でESG投資をするとしたら、どのような投資商品を選べばよいだろうか。10万円で買える銘柄は実は多く存在する。このウイズ・コロナの社会で選択肢となりうるESG投資商品をいくつか紹介する。

目次

ステップ1:あなたのリスク許容度は?

私が最初に尋ねるのは、あなた自身がどのくらいのリスクを負う覚悟があるかということである。これは投資の第一法則だと言う人もいるだろうが、ESGであれ従来の投資であれ、考える前にまずこのことを心に留めておくことが重要だ。簡単に言えば、リスクが高ければ高いほど、リターン(または損失)が大きくなる可能性があるということである。リスクの低い資産に投資したければ、期待されるリターン(または損失)の割合は小さくなる。この関係を簡単なグラフで表すと以下のようになる。

ESG投資もこのリスク対リターンの関係で説明できる。環境・社会・ガバナンスへの配慮が優れている企業を積極的に選ぶことで下振れリスクを低減しつつ、中長期的に投資収益率を高めることが期待され、多くの長期投資家にとってより安定して好ましい投資スタイルと考えられる。

比較的低リスク投資の例としては債券(政府系・企業系)が、中リスクの投資の例としては投資信託などが挙げられる。リスクの高い投資としては、個人で選択する単一株が挙げられる。

ESG型の社債ファンドは少ないため、今回は投資経験の少ない方でも挑戦できる中リスクのESG型投資信託に焦点を当てることとする。

次回のブログでは、投資のファンダメンタルズや企業評価の知識があり、ESG評価の高い銘柄をポートフォリオに組み入れたいと考える上級の投資家向けに、注目すべき企業をピックアップしながら解説していく。

ステップ2:あなたの求めている投資スタイルは?

投資信託の特徴

投資信託とは、プロの資産運用会社に委託をして彼らが運用する投資ファンドを選ぶことで、多くの企業に分散投資を行うことが出来るというものである。

投資信託にはパッシブ型とアクティブ型があり、以前のブログでそれぞれの違いについて説明をしている。パッシブ型ESGファンド(インデックスファンド)は、市場全体と連動した投資収益を得ることを目的に膨大な数の企業に投資し、ESG評価の高い企業の比率を上げて投資するという、比較的リスクの低い投資信託の形態である。しかし、市場の平均を軸に運用されるので、ESG配慮が低い企業も投資対象に含まれることがある。

アクティブ型ESG投資信託では、ファンドマネージャーがより明確な基準に基づいて投資先企業を選択するため投資先企業の数は少ないが、企業の詳細な調査の上でESG評価の高い企業のみを対象とする手法である(ただし、運用コスト・リスクは若干高くなる)。健康関連企業、低炭素企業、環境技術など、特定のESGテーマに焦点を当てたアクティブファンドが多数存在する。

ステップ3:ESGファンドを探してみよう

ESG型投資信託をCheck!

ネット証券で評価の高いSBIネオモバイル証券の検索で12件のESG型投資信託を確認することができた。その内1年間のトータルリターン(総合収益)上位2本のESG型投資信託は以下の通りであった。順を追ってみてみよう。

  1. CAM ESG日本株ファンド

CAM ESG日本株ファンドは、キャピタルアセットマネジメント(CAM)が国内の上場企業全般を対象に運用するアクティブ型の投資信託である。企業のESGに対する経営目標と態勢整備状況を定量的に分析・評価することで、経営力、成長性で優位な企業に中長期投資を行っている。

CAM ESG日本株ファンドの運用は、ESGの要素と財務情報を融合した独自の銘柄選定方法「CAM サステイナブル・インベストメント・モデル」を採用している。このモデルでは、日本のESG調査のパイオニアであるグッドバンカー社が提供する「ESGスコア」と、CAMが独自に分析する「財務スコア」を組み合わせたアプローチである。

同ファンドの目論見書を確認したところ、業種別の組入比率は2020年2月28日時点で主に電気機器(25.5%)、化学(15.4%)、情報・通信業(13%)、医療品(10%)、機械(8.7%)であった。さらに、組入上位の10銘柄をみると、ダイキン、富士通、ソニー、エイザイ、花王など、ESG評価の高い企業が並んでいるため、ESG要素がしっかり反映されている選定方法であることがわかるのでひと安心する。1年間のパフォーマンスが比較的に高いと考えられる同ファンドだが、ヤフーファイナンスで日経平均の実績と比較してみた。結果、以下のように安定的に日経平均の水準を上回る運用実績を打ち出していることが確認できる。信託の管理費(信託報酬)はアクテイブ型ファンドの中で低めの1.496%。

2.「ニッセイ日本株ESGフォーカスマザーファンド」

ニッセイ日本株ESGフォーカスファンドは、日本企業の株式を主要投資対象とし、信託財産の中長期的な成長を図ることを目標に運用が行われているアクテイブ型の投資信託である。「徹底した調査・分析に基づき、流動性、信用リスク等により不適格銘柄を排除し、ESGに対する取組みに優れ、持続的な企業価値の向上が期待される銘柄を厳選する」と目論見書に明記されている。しかし、公式HPや主要なレポートを確認したところ、実際のESG評価の手法や基準などの透明性が低い商品となっていた。

2019年末時点での業種別の組入比率は、電気機器 17.9%、情報・通信業 15.1%、サービス業 11.1%、機械 9.1%、化学 8.0%、医薬品 6.4%、食料品 6.2%と幅広く分散していた。最新のマンスリーレポートで組入上位銘柄を確認すると、日産化学、医療品のJCRファーマ、機械メーカーのダイキンと電気機器のキーエンスが含まれていた。国際NGO「Know the Chain」による企業の社会的配慮ランキングでは、サプライチェーンに関する労働環境などの情報開示の点で優れていないことを理由に、キーエンスは低く評価されている。一方で、1年間の運用実績を日経平均と比較したところ、同ファンドはCAM ESGよりは目立たないものの、以下のように平均を上回るパフォーマンスをしており評価することができる。信託報酬はリーズナブルな1.573%。

医療・ヘルスケア関連の投資信託2本をCheck!

ウイズ・コロナの社会で注目される医薬品、医療機器のサプライヤーなどの社会的貢献度は高まっている。その中で、医療分野を応援したいと考えている人は少なくないだろう。したがって、ネット証券で人気の楽天証券の検索では医療・ヘルスケア関連の投資信託が10件確認できた。その内1年間のトータルリターン(総合収益)上位2本のヘルスケア関連投資信託は以下の通りであった。順番に解説する。

  1. 日興AMアジア・ヘルスケア株式ファンド

シンガポール籍円建外国投資信託「日興AMアジア・ヘルスケア・ファンド」は、中長期的に高い成長が見込まれるアジア(日本を除く)の医療関連企業などに投資している。医薬品メーカーに限らず、医療用機器やバイオテクノロジー、医療施設などの幅広い分野の企業を投資対象としている。同ファンドの目論見書によると、アジアにおいて30年を超える株式運用実績がある日興アセットマネジメント・アジア・リミテッド(NAM アジア)が組入銘柄を厳選し、大企業から中堅企業、ベンチャー企業まで、幅広く銘柄を選択しているという。

アジア金融市場の中心地であるシンガポールを拠点として、各国の人口動態や医療制度の分析、医療施設の訪問および調査、医療関係者との面談など積極的に行うアクティブ型の運用を行っている。ポートフォリオの業種別構成比を見ると、上位は医薬品(36.1%)、バイオテクノロジー(22.5%)、ヘルスケア・プロバイダー及びサービス(18.8%)、ライフサイエンス・ツール/サービス(13.9%)と並んでいた。今後成長が期待されるアジア地域の医療セクターを対象とするファンドとして、過去1年間のトータルリターン48%を獲得しており、非常に高い運用実績を打ち出している。アクテイブ運用でも信託報酬はリーズナブルな1.8%。同ファンドの実績を日経平均と比較したチャートは以下。

4.三菱UFJ国際グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド

三菱UFJ国際の「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド」は、世界主要先進国市場の中から、製薬、バイオテクノロジー、医療製品、医療・健康サービス関連企業等の株式に分散投資を行っている。株式の運用は外資のウエリントン・マネージメント・カンパニーに委託しており、アメリカ最古の運用機関の一つである。企業の事業見通し、新商品の見込み、企業戦略、競合性等に重点を置いたボトムアップ・アプローチにより選定した銘柄に長期的なバリュー投資を行っている。また、自己免疫機能でがん細胞を攻撃する抗体医薬品の開発や、がんの増殖などに関係する特定の分子を狙い打ちする分子標的薬の開発、さらにがんの新たな治療法として遺伝子治療の一つである細胞治療の研究などに関わる企業への投資もしている。

同ファンドの目論見書にて投資状況を確認すると、対象地域の中でアメリカの銘柄は7割程度でもっとも多く、次いでイギリス(7.96%)、日本(7.93%)、スイス(6.26%)の企業で構成されていた。組入上位30銘柄をみると、アメリカ大手のPFIZERやイギリスのASTRAZENECAなど、新型コロナウイルスのワクチン開発での世界的貢献が期待される企業も含まれている。過去1年間のトータルリターンをみると19.9%を獲得しており、高い運用実績を打ち出している。しかしこのファンドの信託報酬は比較的高い2.42%。

ステップ4:販売窓口を選ぶ(オンライン証券か大手証券会社か銀行か?)

個々の投資信託の販売窓口は異なるため、幅広く検索することをおすすめする。主に以下の3つの窓口がある。

  • ネット証券:最もコスパは良いが自己判断で確かめる必要がある。
  • 証券会社:野村・大和などの大手証券会社 。最も高価だが専門家と直接話し合うことができる。
  • 銀行︙取り扱い商品は限られているが既に口座を持つ銀行の場合は便利。

投資信託取引口座を開設する必要があるので、実際に投資信託を購入できるようになるまで数週間の事務処理を要する。

まとめ

自分のリスク許容度を踏まえ、投資信託や個別企業の株式など、どのように投資をしたいのか考えてみよう。その上でESG要素を考慮した投資商品をリサーチしてみよう。重視したいESGテーマや投資スタイルに沿って信頼できる投資ファンドを見つけたら、自分の使いやすい販売窓口を探してみよう。

今回のブログで紹介した様々なESG投資信託のパフォーマンスを確かめるため、筆者は上記のESG型投資信託で運用実績の高いCAM ESG日本株ファンドと、医療セクターを応援する日興AMアジア・ヘルスケア株式ファンドと、三菱UFJ国際「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド」にそれぞれ10万円づつ投資し、それらのファンドの進捗状況をブログで約四半期ごとにモニタリングしていく。


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