ESGブログ・意見

ESG スタートアップを支える「投資型クラファン」

ここ数年、「投資型クラファン」という言葉を耳にする機会が増えた。個人投資家がスタートアップ企業に投資できる「投資型クラファン」が広がり始めている。ESGを軸にするスタートアップ企業も増えている一方で、ESG投資家が参加するにはどんなプラットフォームがあるのか? そして投資先プロジェクトのリスクやリターンをどのように見極めるべきなのか? 今回のブログで4つの人気プラットフォームをレビューした。

目次

1)投資型クラウドファンディングとは?

新規・成長企業へのリスクマネーの円滑な供給に資することを目的として、非上場株式の発行を通じた資金調達を行うための制度である。

クラウドファンディング(CF)とは「群衆(crowd)」からの「資金調達(funding)」の語を用いた造語であり、一般に、新規成長企業等があるプロジェクトを行うために必要な資金を、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ集める仕組みである。このクラウドファンディングは3種類の枠組みが存在し、寄付型(寄付として資金を提供するのみ)、購入型(製品・サービスを受け取る)、投資型(株式やファンドを取得する)等がある。

さらに、投資型クラウドファンディングは以下の3つの種類に分けられる。
特定の事業に投資し、売り上げに応じてリターンが分配される「ファンド型」、CF企業が投資家から集めたお金を事業主に貸し出し、その際の金利分が投資家に利息として還元される「融資型(ソーシャルレンディング)」、
非上場企業の株式に投資し未上場株を取得できる「投資型」の3種類に分けられる。今回は投資型クラファンの人気プラットフォーム4社の特徴や注目プロジェクトを紹介する。

2)人気のプラットフォームと特徴

FUNDINNO(株式会社日本クラウドキャピタル)

設立年:2015年11月

累計成約額:71億5650万円

累計成約件数:220件

ユーザー数:85,022人 (2021年地点で国内シェアナンバーワン)
資本提携:野村ホールディングス
FUNDINNOは厳正な審査を通過した将来性あるベンチャー企業に投資ができる日本初の株式投資型クラウドファンディング。

紹介案件のカテゴリーは、医療、アグリテック、スポーツ、ブロックチェーン、コワーキングスペース、ロボットなど多岐にわたる。

FUNDINNOの特徴
①ネットで10万円程度から投資できる
②大きなリターンを期待できる
③投資先企業の成長を楽しめる
④税制優遇が受けられる

公式ウェブ:FUNDINNO(ファンディーノ)

Angel Navi(旧SBIエクティクラウド)

設立年:2017年10月
累計成約額:不明 

累計成約件数:不明

ユーザー数:不明
資本提携:株式会社ietty、株式会社Casa

投資型クラウドファンディングサービスAngel Naviの運用に加え、ベンチャー企業への幅広い成長支援サービスを提供している。

Angel Naviの特徴
①投資型クラウドファンディングサービスAngel Navi
成長が見込まれる有望なベンチャー企業と、非上場企業への投資機会がほぼなかった個人投資家とを、インターネットを介し繋ぐプラットフォーム。
個人投資家へ希少なベンチャー企業への投資機会、ベンチャー企業へ成長投資のための新しい資金調達の方法を、それぞれ提供している。
審査などでは、財務・会計・法務の各専門家(元投資銀行マン2名、元会計士1名、元弁護士1名)が関与するなど、プロフェッショナル性の高い体制。

②インキュベーション・サービス
ベンチャー企業が事業開発などのコア業務にフォーカスできるよう、AngelNaviの活用「前」と「後」双方のステージのベンチャー企業へ、様々な経営/財務コンサルティングをしている。中期的観点での事業計画とエクイティ・ストーリー策定、資本戦略の精査、営業・マーケティング戦略の精査・実行、HR戦略の精査、管理業務(経理や株主管理他の総務)の受託、などで支援。

③M&A・資金調達支援サービス
M&A、および、「株式投資型クラウドファンディング・サービス」を活用後の「次」の資金調達も支援し、ベンチャー企業の成長を継続的にサポート。投資家やM&A候補先の精査・仲介、スキームのストラクチャリング、バリュエーションからドキュメンテーションまでの幅広い条件交渉、などを行う。

④VC支援サービス
有望なベンチャー企業への投資機会を探っているVC、例えばCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)へ、投資先ソーシングなどで支援。

イークラウド

設立年:2020年 

累計成約額:約1億4633万円

累計成約件数:4件

ユーザー数:1651人
資本提携:株式会社大和証券グループ本社、XTech株式会社、・Fintertech株式会社

イークラウドの特徴
①プロが厳選した有望な出資案件をセレクトし、ベンチャー企業へバリューアップのサポートができる。

②紹介案件のカテゴリーは、創薬・製薬、バイオ、ライフスタイル、医療ヘルスケア、飲食・フードテック、コマース・D2C、ゲーム、地方創生など多岐に渡る。

公式ウェブサイト:株式投資型クラウドファンディング イークラウド

CAMPFIRE Angels

設立年:2011年
累計成約額:1.57億円

累計成約件数:7件

ユーザー数:不明
資本提携:株式会社ウィルズ

CAMPFIRE Angelsの特徴
①CAMPFIREブランドの強みを活かし、アートやファッション等のカルチャー領域、教育やシェアリングエコノミー等のtoC領域におけるスタートアップの資金調達を中心にサービスを展開。
②最短1ヶ月で募集を開始できるスピード感
③面談から着金まで基本的にオンラインで完結する手軽さ
④年間1億円までの調達が可能なシード期に最適な本格性を特徴としている。

初めて資金調達に挑戦するスタートアップでも、経営経験者や金融業界出身のファイナンスのプロによるアドバイザリーサポートを活用し、安心して資金調達に臨むことが可能。

3)注目プロジェクト

ESGの視点から、各プラットフォームが応援するスタートアップ企業のプロジェクト例を紹介する。

FUNDINNO(ファンディーノ) 

プロジェクト例:〈服は"棄てる"から"土に還す"へ〉野菜を育てる次世代サステナブル素材「和紙」を使った服作りで、国内外のファッション業界が抱える大量廃棄問題に挑む!

目標額:15,000,000円
達成額:57,600,000円

プロジェクト概要
1. 何を解決するためのビジネスか
● ファッション業界における服の大量生産・大量消費・大量廃棄がもたらす環境負荷
2. どの様に解決に導くのか
● 着用後は土に還し、和紙を原料とする生地開発で服と同時に野菜を提供するサステナブルモデルを構築
3. どの様にビジネスを実現するか
● 世界的に有名なファッションブランドで経験を積んできた精鋭クリエイティブチームによるグローバル目線の商品設計
● 生産から販売まで大手パートナー各社と連携してワンストップで提供する体制を構築
● サステナブル意識の醸成・賛同を目的とした事業発表イベントを実施。現在では約2,000名のサステナブルユーザーを保有
● 動画による商品詳細閲覧機能を搭載したECを構築。サステナブルなショッピング体験を提供

Angel Navi 

プロジェクト例:株式会社One Terrace
目標額:25,000,000円
達成額:28,250,000円

  • 日本の労働人口減少に伴い市場拡大が見込まれる外国人材領域の課題解決を目指し創業
  • 日本語教育、留学、就職、採用、在留資格管理、グローバル人材研修を一貫支援するサービスを提供
  • 加えて、大学、日本語学校向けの留学生管理システム、企業向け在留資格管理システム等のクラウドサービスを提供(サブスクリプションモデル)
  • ベトナム、ミャンマーに拠点を持ち、現地人材マーケットにて大手を凌ぐ高いプレゼンスを確立
  • 今年インド拠点設立、他アジア諸国に展開を予定
    ⇨大手企業に簡単に模倣できないビジネスモデル
    (株式会社マイナビ、NOVAホールディングス等との業務提携あり)

株式投資型クラウドファンディング イークラウド 

プロジェクト例:タンパク質合成の特許技術で世界に進出!食と医療の課題解決に挑むバイオベンチャー「NUProtein」 NUProtein株式会社

目標額:29,640,000円
達成額:57,380,000円

  • 人工培養肉製造や再生医療に不可欠なタンパク質を、従来の3,000分の1のコストで製造可能に
  • パナソニックで知財開発とCVCを経験してきた起業家が、名古屋大学発の技術を世界に展開
  • 米国・欧州の大手代替肉企業や、国内外の製粉メーカー、世界最大級の試薬商社等とも提携済み

CAMPFIRE Angels 

プロジェクト例:【FDA※認可取得済み!】骨再生医療材料でアジア市場を開拓する、バイオ医療テックカンパニー ※FDA:アメリカ食品医薬品局

目標額 10,000,000円
達成額 30,100,000円

  • 米国トレド大学発、バイオ医療ベンチャーのOseteoNovus Inc.の日本子会社
  • 主力製品は吸収性骨再生用材料(人工骨)「ノボグロ(NovoGro)」
  • 脊椎外科・整形外科手術の作業性を高めることで利用拡大が見込まれる
  • 「ノボグロ(NovoGro)」はFDA(米国食品医薬品局)認可取得済
  • 当社(オステオノバス株式会社)の目的は日本及びアジア太平洋市場における事業拡大。日本市場は最重要マーケット
  • 近くPMDA(独立法人医薬品医療機器等総合機構・厚労省所管)へ承認申請(本年8月予定)
  • 2021年6月に台湾当局の承認取得済み。豪・東南アジア市場を順次検討
  • 日本法人の事業はOsteoNovus Inc.からの輸入販売からスタート。事業の進捗に応じて、日本における生産を計画。将来的に研究開発も視野に
  • 日本での市場価値が高まれば、親会社を吸収の上、日本での上場を目指す。 

4)4つのプラットフォームのまとめ

ここまで様々な投資型クラウドファンディングの事例を紹介してきた。

FUNDINNOは最も実績のあるクラウドファンディングで2021年10月時点で208件、約69.3億円の成約実績がある。実績重視ならば FUNDINNOと言えるだろう。

Angel Naviは投資および経営で豊富な経験・スキルを持った経営陣が揃っている。エンジェル投資、金融(M&A、資金調達やIPO)、IT、ベンチャー経営実務などでトップクラスの実績を残してきたプロフェッショナルなメンバーが、個人投資家へ有望な出資案件をセレクトし、ベンチャー企業へバリューアップのサポートをしている。

イークラウドは実績は少ないながらも、大和証券グループと事業提携をするなど、運営体制に力を入れているのが特徴だ。ベンチャーキャピタルで投資を行ってきた経験豊富なメンバーが企業発掘をしており、公認会計士や弁護士といった外部の専門家とも連携しているため今後に期待できるクラウドファンディングサービスの一つだ。

CAMPFIRE Angelsは医療の分野での資金集めが得意であるが、低環境負荷を実現する、先端技術×有機農業の分野のAgriTech企業なども支援しており、達成率200%超で実績も重ねている。

5) リスクとリターンについて

投資型クラウドファンディングを利用した投資は大きなリターンを見込める可能性がある分、リスクが高い。場合によっては投資した金額が分配金を上回る「元本割れ」になる場合もあり、投資家にとってはリスクと言える。

生活の余裕資金かつその企業の将来性をしっかり見極めた上で投資すべきだ。
また、企業が成長する時間は数年単位で必要になるため、利益が出るのはかなり先になると予め理解しておく必要がある。

投資判断の際には、必ずサービスサイト上の「投資型クラウドファンディング約款」、「商品詳細説明書」、また各匿名組合契約(各ファンド)の「契約締結前交付書面」、「匿名組合契約書」、「リスク情報」を確認のうえ、ご自身で投資判断を行うことを推奨する。


参考URL

ファンディーノ
https://fundinno.com/

Angel Navi

https://www.angel-navi.com/

イークラウド

https://ecrowd.co.jp/

CAMPFIRE Angels
https://angels.camp-fire.jp/ 

日本証券業協会

https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/kabucrowdfunding/https://market.jsda.or.jp/shijyo/kabucrowdfunding/toriatsukaigyousha/20200907114040.html

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