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英国最大の年金基金が化石燃料からのダイベストメントを開始

[2020年7月29日(水) イギリス]

英国の公的年金「国家雇用貯蓄信託(National Employment Savings Trust)」ネストは、気候変動への懸念から、石炭やオイルサンド、北極圏の石油開発などに関わる企業を投資ポートフォリオから除外する。

英国最大の年金基金であり、900万人の会員を擁する政府が支援するナショナル・ジョブ・セービング・トラスト(ネスト)スキームは、化石燃料からの投資撤退(ダイベストメント)を開始することになった。環境活動家は業界にとって画期的な動きとして同機関の発表を歓迎していると言う。

ファンドは、石炭採掘、オイルサンド、北極圏の石油開発事業などに関与している企業への投資を禁止する。労働と年金省の公社は、政府の「自動加入」スキームの下で保有する労働者の年金の多くを処理し、新型コロナウイルスからの持続可能な経済回復を見据えた上で 「気候変動に配慮した投資」へ55億ポンド(約7千5百億円)をシフトする。

除外される銘柄の中、BHPなどの世界最大の鉱業会社の何社は、石炭採掘から利益を得る限り、株式ポートフォリオに保有できないことになる。8月3日までにBHPの保有株を最終的に売却するという。

ネスト年金はまた、従来の石油大手のような炭素集約的な保有株式を減らす一方で、再生可能エネルギーやグリーン・インフラへの投資を増やすことを目指している。

同ファンドの最高投資責任者であるマーク・フォーセット氏は、ネストは気候変動の深刻さについて明確なメッセージを強く発信していると述べた。

「コロナウイルスと同様に、気候変動は年金加入者と彼らの財産に深刻なリスクをもたらしている。気候変動は壊滅的な被害をもたらし、私たちの生活を完全に崩壊させる可能性がある。気候変動によって荒廃した世界に老後の生活を送るために、生涯を通じて貯蓄をしたいと思う人はいないだろう」

「世界経済が新型コロナウイルスからゆっくりと回復していく中で、私たちはこの回復がグリーンなものであることを確認したいと考えている。私たちには、持続可能な成長と低炭素経済への移行を支援するユニークな機会がある。」

ネストはまだ他の民間年金ファンドより運用資産が比較的少ないが、数百万人の労働者からの貯蓄が今後数十年の間にその財源に注ぎ込まれることで、この業界では巨大なプレーヤーになると期待されている。

他の年金基金はネストよりも先を行っている。2016年にはウォルサム・フォレストの地方政府年金制度が、石炭、タールサンド、石油・ガスを売却し、昨年はカーディフの評議員が同様のコミットメントを発表した。

環境アクティビストは、ネストの新しい気候変動方針を歓迎し、他のファンドのより良い行動を促す可能性が高いとコメントする。NGO「ShareAction」のローレン・ピーコック氏は次のように述べた。「ネストは、気候変動の緊急事態を引き起こした最も責任のある企業に対して明確な期待を設定し、より持続可能な社会を構築するための年金の力を示している。」

ネストの世論調査によると、年金受給者の65%が、自分たちの年金は気候変動の影響を軽減するような方法で投資されるべきだと考えていることがわかった。強く反対した人はわずか4%だった。


参考記事:

https://www.theguardian.com/environment/2020/jul/29/national-employment-savings-trust-uks-biggest-pension-fund-divests-from-fossil-fuels

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