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「ESGウォッシュ」に騙されないための4つのポイント

「ESG投資信託」や「ソーシャル・インパクト・ファンド」など、金融機関が環境や社会に配慮した投資商品を販売するケースが増えてきている。それに伴い気候変動や社会的課題に挑戦している企業を対象にした投資信託やインデックスファンドなどが増えていることは心強いことだが、一方で、個人投資家にとってそれらのファンドが社会的に本当にポジティブな影響があるのか、それとも単なるマーケティング手法の一環でしかないのかの見極めが難しい場合がある。そうした中、ThinkESGでは「ESGウォッシュ」に騙されないための4つのポイントを紹介しつつ、世界最大の資産運用会社ブラックロックが販売しているESG型ファンドと銘打つ3本をレビューした。

「グリーンウォッシュ」や「ESGウォッシュ」とは?

 グリーンウォッシュとは、1980年代に環境保護活動家のジェイ・ウェストベルトが提唱した言葉で、企業が環境に対する取組みにおいて実態よりもよく見えるように宣伝することである。主に企業が環境保護活動において虚偽の主張や、誤解を招くような主張をする際に指摘する言葉となる。

グリーンウォッシュはファッション、食品、金融など、さまざまな業界で行われている。金融業界では近年、「グリーン」「サステナブル」「エシカル」な「ESG商品」を販売し、事実はどうであれ高い利益を得ているのが現実だ。

ブルームバーグ社によると、2025年までに環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した運用資産は世界的に53兆米ドルに達する見込みであり、これは予測される全世界の運用資産の3分の1以上に相当するという。

より多くの消費者がエシカルで責任あるサステナブルな投資機会を求めることが予想されることからも、ESG投資市場は急速に成長していくことが見込めれる。

そうした中最近の調査では、多くのファンドや資産運用会社が社会的責任やサステナブルな投資について、立証できる範囲を超えた主張をしていることが明らかになってきている。こうしたことからも「ESGウォッシュ」は今後更に増えていくことが懸念されている。

金融業界のモニタリングを行う米国のNGO As You Sowが運営するファンド比較サイトでファンド名に「ESG」が含まれる86本のファンドを分析したところ、半数が1つ以上の課題分野(化石燃料・武器産業・森林伐採・タバコ・民営刑務所への関与など)で「D」または「F」の低評価を得ている。世界最大の資産運用会社で有名なブラックロックのESGファンドは14本の内10本が「D」または「F」と判定されている。また英国のNGO団体ShareActionが去年行った調査で、世界で最も影響力のある資産運用会社75社の商品やESG 投資方針を分析したところ、「ESGリスクの管理に非常に限定的なアプローチであることから、50社がDまたはE評価を受けている 」と発表した。

「ESGウォッシュ」に騙されないための4つのポイント

 それでは投資家は、投資信託やファンドがESGウォッシングを行っているかどうかをどのように見分ければよいのか。ここでは、ESGウォッシュを見極めるための4つのポイントを紹介する。

1. 商品情報が曖昧ではないか?
証券会社や資産運用会社が提供する金融商品が、責任投資やESG投資の観点で明確に何をしているのかわからない場合、それはESGウォッシュである可能性が高い。

賢い投資家は、投資商品を選ぶ前にその商品がESG課題に対して何を行っているのかについて、表面的な声明文を読むだけではなく、より詳しい情報を求めるようにしている。それが大事なファーストステップである。

投資商品を検討する際には、そのファンドの投資先企業の個別銘柄を確かめ、明確でシンプルな情報があるかをまず確認しよう。

2. ファンドの投資戦略を理解できるか?

「エシカル」「サステナブル」「ESG」と表示される商品は、社会的影響を定量的に測る「インパクト投資」のファンドから、投資先企業の選定プロセスに明確なESG基準を組み入れるファンド、また主流の除外項目(タバコや武器関連産業など)を適用するファンドまで様々である。実はその中でもインデックスファンドやETF(上場投資信託)の場合、市場平均のESGスコアを上回る銘柄への投資比率(ウェイト)を上げて、ESGスコアが優れない企業への投資比率を下げる(アンダーウェイト)という戦略が主流となっている。こうして本来であればESGの観点から投資対象にならないはずの企業がこっそり投資先に含まれるケースは少なくない。

商品ラベルに騙されないようにするには、投資信託やファンドの目論見書を確認し、投資対象とされる企業がどの程度厳密に審査されているか、また、投資ポートフォリオの銘柄選択にはどのような社会的、環境基準が用いられているかという情報を確認することが重要である。

これを確認する良い方法は、ファンドの主要なポートフォリオの保有銘柄に目を通し、「これらの企業は持続可能な、あるいは社会的責任ある方法でビジネスを行っている企業なのか?」と考えてみよう。

もし、「グリーン」や「ESG」と表示されている商品の中に、社会課題や環境問題に積極的に取り組んでいるのか微妙な企業が含まれている場合は、何らかのウォッシングが行われていると考えられる。

3. 運用会社は十分な報告を行っているか?
優良なESG投資商品は、持続可能性や倫理的かつソーシャル関連のコミットメントの進捗状況を投資家に定期的に報告しているだろう。

資産運用会社はどのように持続可能性を上げたのか、あるいはエンゲージメント(目的を持った対話)を通じてどのように企業活動に良い影響をもたらしたか、などについて報告を行っているかを確認するのが好ましい。

また、ファンドの影響力について誇張している投資商品には注意をしよう。 ESG・サステナビリティ報告の記録と、ポジティブなインパクトの定量的または定性的な実績があるかについて、ステークホルダーに向けて情報開示を行っているかを確かめる必要がある。(新規設定のファンドの場合は、運用会社のESGへの取り組みに関する方針などを公式HPから確認しよう)

4. 自身の倫理観・ESG価値観にあっているか?
最後に、自分自身のサステナビリティや社会問題をめぐる個人的なスタンスを振り返り、ESGの観点から何に投資したいのか、したくないのかを考えてみよう。

個人投資家は、購入する商品が単に環境に優しいというラベルではなく、自分自身の倫理基準を満たしているかどうかを意識する必要があるだろう。疑問がある場合は第三者に意見を求めたり、様々な投資信託やファンドマネージャーのESG資格・クオリティに関する評価指標を探して見てみよう。

投資ファンドにおけるESGウォッシュのスクリーニング方法の実例として、ThinkESGではブラックロック社が販売する3つの投資信託を以下のように評価した。

ESGファンドレビュー

  • Blackrock iShares MSCI ACWI Low Carbon ETF (CRBN)
  • BlackRock U.S. Carbon Transition Readiness ETF(LCTU)
  • Blackrock Global Impact Fund(ブラックロック・世界株式インパクト投資)

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