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Know The Chain: 強制労働リスクに取り組む企業評価

サプライチェーンにおける強制労働リスクに取り組む企業を評価する投資家向けの指標であるKnowTheChainは、180社を対象に業種別ベンチマークを段階的に発表している。対象となっている食品・飲料メーカー、ICTとアパレル&フットウェアの中、食品・飲料とICTのベンチマークが先に発表された。日本企業13社も対象となり、平均評価スコア(17/100)は残念ながら非常に低い。業種別にランキングを解説したい。

食品・飲料メーカー

コロナウイルスは、食品サプライチェーンの重要性を浮き彫りにした。ナイジェリアの精米工場では労働者が閉じ込められ、ロックダウン中も働かざるを得ない状況に置かれた。米国の食肉工場では移民労働者が病欠の電話をしたら解雇されると脅され、インドでは何千人もの紅茶労働者が賃金を受け取らず、飢えと苦難に直面している。

KnowTheChainの調査によると世界大手食品・飲料企業43社の大半がサプライチェーンにおける強制労働のリスクに対処していない。

「購買」(17/100)と「労働者の声」(16/100)のテーマでは、企業のスコアが最も低い。2018年と2020年の両方でベンチマークを実施した企業は、「コミットメントとガバナンス」、「トレーサビリティとリスク評価」、「採用」などのテーマで改善を示したが、「労働者の声」と「購買」のテーマでの改善は限定的であった。これらのスコアが低さは、企業がコロナ・ショックで労働者を保護できていことを示している。

一方で、米テスコ(65/100)がユニリーバ(60/100)を抜いてベンチマークをリードしている。テスコは、供給者との入札プロセスにおいて、迅速な支払いや労働パフォーマンスの統合など、責任ある購買慣行を実施していると報告しており、労働者から高評価を得ている(67/100)。テスコはサプライチェーン全体で労働者教育や結社の自由について組合やNGOとの連携を公表しており、労働条件や賃金の改善事例を報告している。

食肉会社が劣悪な労働条件を世界中で脚光を浴びる中、大手のWHグループ(1/100)、タイソン(9/100)、ホーメル(12/100)、JBS(12/100)は、強制労働のリスクに対処するための努力がほとんど見られない。国際的なファストフードチェーンであるバーガーキングとマクドナルドのサプライヤーであるJBSとタイソンのスコアは、2016年に測定を開始して以来、継続的に悪化しており、労働者の権利と最低限の福祉を軽視していることを示している。

日本企業はセブン&アイ・ホールディングス(22/100)、イオン(17/100)、サントリー(8/100)3社がランクインしたが、情報開示が不十分であることからいずれも高いスコアとは言えない。

セブン&アイ・ホールディングスは「コミットメント&ガバナンス」と「購買慣行」のテーマで平均以上のスコアを獲得しているが、強制労働の方針や慣行に関する情報開示が同業他社に比べて少ない。

イオンは、強制労働の方針・慣行に関する情報開示が同業他社に比べて少ない。同社のスコアは、強制労働や労働者に支払われる求人料禁止の行動規範の開示、従業員や供給者への人権研修、供給者に対する監視・是正措置プロセスの開示を基準にしている。

サントリーは強制労働の方針や慣行に関する情報開示が同業他社に比べて著しく少ない。2018年以降、同社は業績と開示を強化するための追加措置を講じていないようだ。「トレーサビリティ&リスク評価」、「採用」、「救済」テーマにおいて改善が望まれる。

ICT

大手ICT企業49社の結果はは悪く、4分の3以上が50%未満、平均スコアは30%であった。

「採用」について、49 社のうち 36 社(73%)が、自社のサプライチェーンにおいて、労働者から支払われる人材紹介料を禁止する方針をとっている。 13 社のみが労働者に報酬が支払われたという証拠を開示したが、そもそもそのような請求を防ぐプロセスを設定している企業はない。

「労働者の声」は平均100点中12点と、ベンチマークの中で最も低いスコアを獲得したテーマだ。どの企業も、サプライチェーンの労働者がより良い労働条件を求めて自由に組織化し、団体交渉を行うことができるよう努めていない。

2020年のベンチマークでは、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(70/100)がトップで、HP(69/100)、サムスン(69/100)、インテル(68/100)、アップル(68/100)が僅差で続いている。これら5つの企業はいずれも、サプライチェーン内の労働者への料金の返済を開示しているだけでなく、労働者への料金請求を改善する措置を講じている。

日本からはソニー(36/100)、日立(27/100)、任天堂(23/100)など10社がランクイン。

ソニーは日本企業の中では総合で最もスコアが高かった。「労働者の声」と「モニタリング」を除くすべてのテーマで、強制労働の方針や慣行に関する情報開示が同業他社よりも多かった。「トレーサビリティとリスク評価」、「採用」のテーマで、日本企業の中で最も高いスコアを獲得した。一方で、影響を受けたステークホルダーとの関わりや、労働者に対する救済措置の結果を開示していない。

日立は、強制労働の方針や慣行に関する情報開示がグローバルの同業他社に比べてやや少ないものの、「コミットメント&ガバナンスとモニタリング」では日本企業の中で最も高いスコアを記録した。2018年と比較すると、同社の順位は12位から25位に下がったが、同社がパフォーマンスと開示を強化するための追加措置を講じていないと判断されたためである。是正措置の要請したとするも、ステークホルダーとの関わりや労働者に対する是正措置の結果については開示していない。同社は、「購買慣行」、「労働者の声」、「救済」をテーマとしたパフォーマンスと開示を改善するよう奨励されている。 

まとめ

KnowTheChainの調査を通して、労働における人権問題が浮き彫りになった。日本企業は最高でもソニーのICT関連49社中17位という結果となり、良い成績だとは言えない。一方で、トップランクのヒューレット・パッカード、サムスン、アップルなどはリスク対策に優れている企業としてESGのS・G要素に強いとして評価を高めている。企業のサプライチェーン全体の労働環境への配慮が今後も求められるだろう。

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参考リンク:

Business Human Rights Resource Center:KnowTheChain: Ranking companies' efforts to address forced labour in their supply chains

Know the Chain (2020/2021 Benchmark):https://knowthechain.org/benchmark/ 

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