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WBA:人権重視する大手企業格付けを発表

国連財団、英保険大手AVIVA、蘭NGOによる、世界の大手企業のSDGs達成貢献度を評価するWorld Benchmark Alliance(WBA)は企業の人権への配慮を評価する「企業人権ベンチマーク」(英:Corporate Human Rights Benchmark)を発表した。

農産物、アパレル、採取産業、ICT製造企業199社を対象に3テーマ13項目の基準に沿って評価を実施。日本からは16社がランクインした。今回の調査では、自動車産業も初めて調査対象となり、日本の自動車メーカー7社も格付けされた。

目次

「企業人権ベンチマーク」とは?

これらの指標は、人権尊重に関するハイレベルなコミットメント、人権デューデリジェンス、救済措置へのアクセスを含む国連指導原則の柱に基づいている。具体的な基準は以下のようになっている。

  • ガバナンスとポリシーへの取り組み
    • 人権尊重
    • 労働者の人権尊重
    • ステークホルダーとの関わり
    • 労働環境の是正
  • 尊重と人権配慮の企業文化への組み込み
    • 責任とリソース
    • 人権配慮
      • 識別:人権リスク・影響を特定する過程と要因
      • 評価:特定されたリスク・影響の評価
      • 統合と行動:評価結果の社内統合と適切な行動
      • 追跡:人権リスク・影響への行動の有効性のモニタリングと評価
      • 報告:人権の影響がどのように対処されているかの会計処理
  • 救済措置と苦情処理の仕組み
    • 労働者からの苦情処理の経路と仕組み
    • 外部からの苦情処理の経路と仕組み悪影響の是正と教訓の取り込み

調査の中で評価された企業の78%はOECD諸国に拠点を置く企業であるが、人権に関する疑惑の被害を受けている85%は発展途上国、特にインド、中国、インドネシアが影響を受けていた。

日本企業のランキングは?

ランクイン入りを果たした日本企業は次のようになっている。

スコア 企業
20~26.5 該当なし
15~20 ファーストリテイリング
10~15 イオン、キリンHD、アサヒグループ
5~10 ソニー、日立、東京エレクトロン、キャノン、エネオスHD、パナソニック、村田製作所、任天堂、セブンアンドアイHD
0~5 ファミリーマート、日本製鉄、キーエンス

(参考:WBA)

日本企業トップ3

日本トップはファーストリテイリング(19.5 /26)。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(以下、UNGP)」をはじめとする国際基準に則り、「ファーストリテイリンググループ 人権方針」や人権委員会の設定、人権教育など取り組みを強化している。しかし、本調査の中でウイグル人の強制労働によって栽培された「新疆綿」をユニクロが使用しているという疑惑について取り上げられた。ウイグル地区で生産された綿花を購入することは、間接的に強制労働に加担することになりかねない。ユニクロと強制労働をさせた工場との間での取引は確認できなかったものの、報道後に管理システムの見直しを図ったかどうか明らかでなかったとしてWBAは低く評価をしている。

続いてイオンがラインクイン(13.5/26)。人権に関する指針やCSRガイドラインを企業として掲げていることが評価された。一方で、従業員へのハラスメント救済措置を企業規範の中で謳っているだけで、実際の取り組みが見られないと報告。さらに、従業員の苦情処理システムの不十分さを指摘した。

日本で3位につけたのはキリン(12/26)。「持続的成長のための経営諸課題」(グループ・マテリアリティ・マトリックス)の1つとして人権を掲げ、サプライヤーとのコミュニケーションを密にするために管理システムを導入しているにもかかわらず、サプライチェーン内での人権問題の管理について、責任の所在が記載されていないと指摘されている。

さらに、合併事業提携先のミャンマー・エコノミック・ホールディングス社(以下MEHL)が少数民族を迫害しているミャンマー国軍との繋がりがある疑惑について、直接的な関係は認められなかったものの、具体的な対応に関する説明や迫害犠牲者への救済措置が不十分であると指摘された。

日本企業ワースト3

最下位はキーエンス(1/26)。唯一、企業として人権尊重について言及している点が評価されたが、具体的な取り組みはほとんど確認できずに得点に至らなかった。日本製鉄(2.5/26)は、1910年から1945年までの間に朝鮮人を強制労働させていたとして元労働者及びその遺族が訴訟した徴用工訴訟問題への対応の不十分さを指摘された。ファミリーマートは(4.5/26)「尊重と人権配慮の企業文化への組み込み」の項目で一切得点することができなかった。人権を考慮したリスク管理やイニシアチブが不透明である点が理由だ。

「E」以外に脆弱な自動車産業

今回の調査で、自動車産業が初めて調査対象となった。しかし、評価対象となった30社の自動車メーカーのうち、50%以上のスコアを獲得した企業は1社もなく、半数が10%以下だった。三菱自動車、日産自動車、スズキ自動車は最下位の0−10%の格付け、ホンダ自動車、マツダ自動車、トヨタ自動車、スバル自動車はその上の10−20%の格付けとなった。報告書は、サプライチェーンにおける人権リスクの管理や適切な追跡調査が行われていないことを指摘している。環境面で脱炭素化をリードする存在として期待される自動車産業だが、人権配慮の面で改善を期待したい。


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参考記事:
World Benchmarking Alliance - Corporate Human Rights Benchmark: https://www.worldbenchmarkingalliance.org/publication/chrb/rankings/type/ungp/ 

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