気候変動対策や脱炭素は、かつては企業の社会的責任や長期的理想として語られることが多かった。しかし、「グリーン経済」は、すでに実体経済の中心に組み込まれている。世界のグリーン経済はすでに約790兆円(5兆ドル)規模に達し、2030年までに約1,106兆円(1兆ドル)を超えると予測されている。これは単なる市場拡大ではなく、産業構造そのものの転換を意味する。過去10年間、グリーン経済はテクノロジー分野に次ぐ第2位の成長率を記録しており、景気循環や政治的逆風が存在する中でも、相対的に高い成長と安定性を維持してきた。これは、脱炭素やレジリエンス対応が一時的な政策テーマではなく、不可逆的な経済潮流であることを示唆している。
グリーン収益は企業の財務体質そのものを変えつつある
本記事は、ボストン発World Economic Forumの「CEO気候リーダーズ・アライアンス」とBoston Consulting Group(BCG)が共同で公表した報告書である「Already a Multi-Trillion-Dollar Market: CEO Guide to Growth in the Green Economy(すでに数兆ドル規模の市場:グリーン経済における成長のためのCEOガイド)」に基づいている。*1
報告書は、世界各地域・各産業にわたる数千社の上場企業を対象に分析を行い、その結果、2020年以降、グリーン関連収益は従来型収益の約2倍の成長率で、マクロ経済の不確実性、規制上のボトルネック、世論の分断が存在するにもかかわらず、グリーン経済は顕著なレジリエンスと活力を示し続けていることが明らかとなった。重要なのは、この成長が一部の先進国企業や特定産業に限定されていない点である。製造業、エネルギー、輸送、建設、素材、金融など、幅広い分野で同様の傾向が確認されている。
さらに、グリーン収益を有する企業は、資金調達面でも明確な優位性を持つ。報告書によれば、これらの企業はより低い資本コストで資金を調達できる傾向があり、負債・株式の両面で投資家から高く評価されている。特に、売上の50%以上をグリーン事業が占める企業は、同業他社と比較して平均12~15%のバリュエーション・プレミアムを享受している。これは、環境対応が単なる「好印象」ではなく、将来の収益安定性と成長力を示す指標として市場に認識されていることを意味する。
排出削減の大半は「すでに経済合理性を備えた技術」で可能
脱炭素は高コストであるという認識は、すでに過去のものになりつつある。報告書によれば、世界の温室効果ガス排出量の55%は、現時点でコスト競争力のある技術によって削減可能である。これは、再生可能エネルギーや蓄電技術の急速なコスト低下によるものである。
2010年以降、太陽光発電の平均コストは約90%、リチウムイオン電池も約90%低下し、洋上風力も約50%下落した。これにより、多くの地域で再生可能エネルギーは化石燃料と同等、あるいはそれ以下のコスト水準に達している。さらに、追加で20%の排出量についても、わずかなコストプレミアムで削減可能な段階に近づいているとされ、政策支援や制度整備が進む地域では、脱炭素の経済的障壁は急速に低下している。
エネルギー・輸送にとどまらないグリーン成長の広がり
エネルギーおよび交通分野がグリーン経済の中核であることは変わらないが、報告書はそれ以外の分野でも成長が加速していることを強調している。具体的には、
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