ハワイの山火事
ハワイのマウイ島で起きた山火事による死者数が110人(8月17日時点)と発表された。行方不明者は1000人を越えているため死者数は今後も増え続ける可能性がある。アメリカの山火事としては過去100年で最悪の被害で、連邦緊急事態管理局(FEMA)によるとラハイナ再建に少なくとも55億2000万ドル(約8000億円)が必要だと推計している。*1
山火事の原因として、通常より短期間で干ばつ状態を作るフラッシュ干ばつとハリケーンが挙げられている。専門家によれば、気候変動が、マウイ島の壊滅的な被害やフラッシュ干ばつのような異常気象の可能性を高めている。*2
世界で起こる異常気象
気候変動が影響しているのはハワイだけではなく、アフリカから南極まで地球の7つの大陸すべてで異常気象が起こり続けている。カーボン・ブリーフの分析によると、先月(2023年7月)世界中で発生した異常気象は、32カ国で発行された新聞の少なくとも84紙114面以上に掲載された。*3 カーボン・ブリーフのグローバル・ジャーナリスト・チームが、ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、アジア、オセアニア、南極に影響を及ぼしている致命的な極端気象についての国内外の報道を以下にまとめた。
- ヨーロッパの熱波
- ギリシャ神話に登場する3つの頭を持つ犬にちなんでケルベロスと名付けられた高気圧の影響で、ヨーロッパ全域の気温が記録的なレベルまで急上昇した。
- イタリア、スペイン、ギリシャの一部では45度、イタリアのサルデーニャ島では48度を記録する可能性がある。ヨーロッパで記録された最高気温は、2021年にシチリア島で観測された48.8度である。
- ギリシャでは7月14日正午から午後5時まで、アクロポリスが日差しから観光客を守るという名目で閉鎖された。
- インドとパキスタンの大洪水
- 南アジアは再び記録的なモンスーン雨に見舞われ、インド北部とパキスタンに壊滅的な被害をもたらした。
- インドの洪水による経済的被害は、インドステイトバンクの報告書によると20億ドル(2900億円)近くにのぼる。
- アメリカの洪水と記録的な暑さ
- アメリカ南部や南西部の酷暑から、北東部の豪雨や洪水まで、アメリカ全土に異常気象が発生している。
- アメリカ国立気象局によると、この暑さによって7月11日以来少なくとも7月20日まで毎日、猛暑注意報、注意報、警報がアメリカ人口のほぼ3分の1(1億人以上)に発令された。
- ウルグアイの猛暑と干ばつ
- 3年間にわたる極端な少雨により、淡水の埋蔵量が歴史的な低水準にまで減少し、過去最悪の水危機が起こっている。
- ウルグアイ気象研究所によれば、1947年以来、『現在が最も乾燥している』
- ウルグアイの350万人の市民の半数以上が水道水を利用できておらず貯水池の脆弱性が指摘された。
- カナダの記録的な山火事
- カナダでは4月初旬から森林火災が発生している。
- 今年の山火事で焼失した土地の面積が過去最高の10万平方キロメートルに達した。
- 中東と北アフリカの猛暑
- 史上最も暑い夜が観測された。
- 中国の洪水と記録的な暑さ
- 7月15日から16日にかけての週末、北西部の新疆ウイグル自治区にある気象観測所が、中国史上最高気温となる52.2度を暫定的に記録した。
- 韓国、日本、フィリピンの洪水と記録的猛暑
- 記録的な大雨による洪水や猛烈な暑さで被害が相次いでいる。
これらの報道は一部であり、実際にはさらに多くの異常気象に地球全体が苦しみ、多くの死者を発生させている。
保険業界の7.2兆円の損失、暴風雨が主要ドライバー
自然災害による経済損失は、上半期全体で1,200億ドル(約17.5兆円)に達し、世界の保険業界は、自然災害による500億ドル(約7.2兆円)の損失を計上し、2011年以来最悪の年明けとなったと発表した。*4
大雨、強風、急激な気温変化を特徴とするいわゆる暴風雨は、今年上半期の損害額の7割を占め、保険金請求の「世界的な支配的要因のひとつ」となっているとスイス損害保険会社のスイス・リーが発表した。
同保険会社の調査によると、気候変動による異常気象の増加、都市部の拡大と保険料の高騰が上半期の損害額を押し上げている。6月末までの6ヵ月間に発生したこのような災害による損害額は350億ドルで、過去10年間の年平均180億ドルと比較すると、約2倍になっている。米国だけでも、雷雨による保険損害は340億ドル(約5兆円)に上り、半年間で過去最高となった。フロリダ州とカリフォルニア州では異常気象が続き、一部の保険会社は同州での販売停止を余儀なくされた。*5
スイス・リーのチーフエコノミスト、ジェローム・ジャン・ヘジェリ氏は「気候変動は、熱波、干ばつ、洪水、極端な降水量といった特定の災害ですでに影響をきたして」おり、「気候変動への適応に向けた投資を増やすべき時期に来ている」と述べた。
ハリケーン・シーズンが始まる直前となる今回の損害は、自然災害に対する保険業界の対応能力に対する懸念を深めるものであり、年間1,000億ドル(14.5兆円)を超える保険金請求は損害保険業界にとって新常態となりつつある。エルニーニョ現象の到来により、世界の気温はさらに上昇すると予想されており、リスクのある地域に建設される物件に保険が手頃な価格で提供され続けるためには、保護措置を講じる必要がある。
持続可能な経済社会であるために
スイス損害保険会社のキャタストロフ・ペリル(自然災害リスク課)の責任者であるマーティン・ベルトッグ氏は、「平均を上回る損害額は、温暖化する気候に牽引されたものではあるが、それ以上に、世界的に都市化した環境における経済価値の急速な高まりによって、保険損害額が年率5~7%の増加傾向にあることを再確認させるものである」と述べた。請求額は自然災害の多発のみならず、復興時に必要な資材や人件費のインフレに後押しされている。請求額の増大に対応するため、再保険会社は保険料の大幅な値上げを要求している。
ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄で構成される株価指数FTSE100の保険会社であるヒスコックス(Hiscox Ltd)は、
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