世界各国で脱炭素化に向けた取り組みが進む中、CO2排出を差し引きゼロとする「ネットゼロ」を目標に掲げる企業が増えている。そんな中、ドイツのシンクタンクNewClimate Instituteとブリュッセルに本部を置く非営利団体Carbon Market Watchの新たな分析によると、「カーボンニュートラル」または「ネットゼロ」を目標に掲げる世界の大企業25社のうち、実際の取り組みはネットゼロの目標達成に遠く及ばない企業が大半を占めると発表した。
報告書は、「企業の気候変動責任モニター(CCRM)」と名付けられ、真の気候変動に対するリーダーシップとグリーンウォッシングを区別することを目的とした調査で、世界最大手企業25社の気候変動対策に関する約束を精査したものである。 25社のうち、海運大手のマースク、そして通信大手のボーダフォンやドイツテレコムの3社だけが、それぞれのネットゼロおよびゼロエミッション目標年までにバリューチェーン全体の排出量の90%以上を脱炭素化することを明確に約束していると判明。平均的に、25社はそれぞれの目標年次までに、バリューチェーン全体の排出量を20%程度しか削減しないという。これにより、多くの企業の脱炭素化に関する約束に欠陥があることが判明した。例えば、ソニーやアップルの取り組みは一定の評価を得ているが、ネスレ、BMW、ユニリーバなどの公約は不十分なものであることが判明した。ネスレ、BMW、ユニリーバなどの有名企業が、排出量を大幅に削減するという自らの誓約をいかに下回るかを指摘するものとなった。
分析によると、企業は意味のある脱炭素化のために必要な誠実性と透明性を欠いているという。重要な情報が隠されていたり、会計上のトリックに頼っている企業もあると報告書は述べている。 また、予測される削減量の大部分をカーボンオフセットに過度に依存していることも、企業を弱体化させている。カーボンオフセットとは、企業が自らの温室効果ガス排出量の削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせるという考え方だ。しかし、そのクレジットが実質的な温室効果ガスの削減に結びついていない事例が指摘される中で、論議を呼んでいる。
世界の温室効果ガス排出量の約4分の1は、産業界からのものであることから、世界の大企業のうち680社以上が、昨年末までに何らかのネットゼロに関するコミットメントを発表している。しかし、この調査では、ネットゼロの約束において「妥当な誠実さ」を示していると評価したのはマースク1社のみであった。この海運会社は、短期的な削減目標に裏打ちされた目標を掲げて、排出量を大幅に削減することをコミットしている。
報告書の主なポイントや個社の評価を以下に要約する。
ー排出量削減の取り組みが不十分ー
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