ESGブログ・意見

脱炭素投資のトレンドとは?②自動車産業

米大統領選でパリ協定復帰の是非が争点の一つとなり、9月には世界最大のCO2排出国、中国でも習近平国家主席が「60年より前の排出量実質ゼロ」を目標として掲げた。

日本では、菅首相は環境問題を成長戦略と捉えており、「脱炭素を企業の新たな投資先にしたい」と自民党税制調査会長に協力を求めた。2050年までにCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロ)の達成に向けて議論が深まっている。

ネット・ゼロに取り組む企業への「脱炭素投資」をする上で、どのような業界が注目されるのか。前回のブログで触れたように、運輸産業は産業部門に次いで2番目に多いCO2排出量を占めている中、今回は自動車産業の取り組みを解説する。

自動車産業の排出削減に向け、ガソリン車に対する規制が世界各地で相次いでいる。英国は2030年以降、フランスは2040年以降のガソリン車の新車販売を禁止、米カリフォルニア州とカナダのケベック州も2035年以降の禁止を表明している。さらにCO2排出量世界一である中国も2035年までにガソリン車を廃止して環境車に切り替えることを明らかにしている。

日本では、これまで自動車メーカーは環境への対応策の中心にハイブリッド車(HV)を据えてきた。燃費がよく普及したものの、依然二酸化炭素を排出してしまう。CO2を走行中に出さない電気自動車(EV)も開発しているが、電力消費コストの高さや急速充電できる場所の少なさにより、国内の普及率はは1%に届かないのが現状だ。もう1つ大きな課題としては、電力供給によるCO2排出量だ。電源そのものの排出係数が他の先進国に比べて高く、削減効果はエネルギーミックスにも影響される。

次世代自動車は、燃料や駆動方式等に応じて6つのタイプに分類でき、2030年に向けて、ハイブリッド車、電気自動車、プラグインハイブリッド車を中心に、乗用車における次世代自動車の普及に関する政府目標が定められている。


(出処:みずほ情報総研)

しかし、HVやプラグインハイブリッド車は排出量を理由にEUのサステナブル投資推進のためのフレームワークであるEUタクソノミーが示す持続可能な経済活動の分類から2026年以降に除外される予定であり、イギリスは2035年以降HVの販売禁止に踏み切る。国際エネルギー機関(IEA)の「ネットゼロ・エミッション」シナリオでは、2030年に販売される乗用車の50%以上が電気自動車で、2019年の2.5%から急増する必要がある。HVでなく、ゼロエミッション車(ZEV)が次世代自動車として世界的に注目されている中、脱炭素の基準から国の方針のアップデートも今後求められるだろう。

各メーカーの取り組み

具体的に各自動車メーカーはどのように脱炭素化に向けてアプローチしているのだろうか。国内売上ランキング上位3社に焦点を当てて、それぞれ紹介する。

環境問題に本気度を見せたいトヨタ

2015年10月に「トヨタ環境チャレンジ2050」を公表するなど、かねてから環境問題に着手している。中期的マイルストーンの設定しており、2030年までにEVを550万台販売、2020年代前半までにEV車種を11種へ拡大などを掲げている。他に、詳細な情報が掲載された特設ホームページサイトの設置するなど、その本気度がうかがえる。製品のCO2排出ゼロだけでなく、ライフサイクルやサプライチェーンにおいてもゼロカーボンを目指す。また、経済産業省が示す30年の水素・燃料電池戦略ロードマップで掲げる乗用・商用耐久性15年以上などの目標の実現に向け、産学連携で触媒をはじめとした新規材料の開発をしている。


(出処:トヨタ自動車)

しかし、トヨタは今年6月にステラに時価総額で抜かれている。トヨタは「日本トップの自動車企業」という印象があるが、それを理由に取り組みを過度に評価するのは早急なようだ。

EV販売で先陣を切るホンダ

ホンダは1960年代から環境に配慮した経営に尽力してきた。1996年には資材調達から設計、開発、生産、輸送、販売、 使用、廃棄段階に至る製品ライフサイクルの各段階で環境負荷を低減するという基本姿勢を整理、明文化した「ホンダ環境宣言」を公表している。さらに、「気候変動問題」「エネルギー問題」「資源の効率利用」への対応を「Triple ZERO」として掲げている。

さらに、先月30日から初の量産EV「Honda e」を発売し、業界の先陣を切る形となった。販売台数は1000台に留まっているが、今後生産の本格化に期待したい。

(出処:ホンダ自動車)

また、ホンダは長年携わってきた自動車のF1世界選手権シリーズから21年限りで撤退すると表明。2050年までのカーボンニュートラルの実現という「100年に1度」と言われる難しい挑戦に取り組むと意気込んでいる。

ラインナップを増やす日産

日産自動車は2017年から2022年までの中長期目標として「ニッサン・グリーンプログラム2022」を掲げている。車の電動化や知能化を通じてCO2を削減する「カーボン・ニュートラル」、車の排出ガス低減と車室内の快適な空気環境を目指す「ゼロ・インパクト」、資源に配慮する「新規採掘資源依存ゼロ」、水使用量の削減と水質管理の「ゼロ・ストレス」の4つを柱としている。

(出処:日産自動車)

製品については、EVの「リーフ」に加えてさらなるラインアップや電動パワートレイン「eパワー」の採用車種を拡充し、日産は23年度までに世界で8車種以上を投入する方針だ。サプライチェーンにおいても「ニッサンインテリジェントファクトリー」の導入により、環境負荷低減を図る。

過去半年の「EVファンド」のパフォーマンスは?

 EVに投資しているファンドを比べてみよう。楽天証券で「EV」で検索をかけた結果、8件がヒットした。年間トータルリターンが高いTOP2のファンドを紹介する。

(出処:楽天証券

iFreeActive EV

まず、最もパフォーマンスが良いのは、大和アセットマネジメントが運営する純資産総額5.39億円のiFreeActive EVだ。日本を始めとした世界のEV関連株式に投資している。 EVマザーファンドを母体とするファミリーファンド形式を採用している。運用管理費は年率1.221%だ。

テーマ型ファンドだといえ、ポートフォリオ構築にあたってはEV関連企業に対象を絞っている。テーマ関連事業の売上高やテーマ関連事業売上高の総売上高に占める比率の見通し等を勘案し、10~20銘柄程度を組入銘柄として選定している。テーマ銘柄としての代表性や流動性等を考慮し、各銘柄の組入比率を決定している。

(出処:大和アセットマネジメント)

投資先の企業としてはアメリカや中国がそれぞれ約40%を占めており、業種としては情報技術や一般消費財・サービス、素材の割合が大きくなっている。

(出処:大和アセットマネジメント)

iTrustエコイノベーション

次いで、ピクテ投信投資顧問株式会社が運用するiTrustエコイノベーション。こちらは以前のブログでも紹介した。純資産額3.81億円、運用管理費年率1.463%の世界の環境関連企業の株式を対象にしたファンドだ。具体的には、電気自動車関連が大半を占め、エコ・ロボティクス、再生可能エネルギーなども対象とする。特定の銘柄、国や通貨に集中せず、分散投資を基本とし、リスク分散を図っている点が特徴的だろう。

銘柄選定においては、テーマ・アクティブスクリーニングを実施した後、定量分析を二度実施している。しかし、具体的な基準は公開されおらず、透明性は高いとは言えない。

(出処:ピクテ投信投資顧問株式会)

半数が米国株で構成されており、半導体・半導体製造装置が30.9%、資本財が16.8%となっている。

(出処:ピクテ投信投資顧問株式会)

日本の「EV元年」となる2021年

2021年はすでにEV販売を開始しているホンダに続いて、日産自動車の「アリア」、レクサスブランド初の市販EVとしてトヨタ自動車が国内投入する「UX300e」、加えてマツダの「MX-30」が注目される。同時に、欧州、米カリフォルニア、中国など巨大自動車マーケットでEVの需要増加が見込める中、EV関連企業を投資対象とする投資信託は非常に高いリターンを見せている。

自動車部門の脱炭素化に向けては、ハイブリット車からゼロエミッション車への転換が加速している。環境負荷の小さいエネルギーを使うEVの普及、公共交通機関の利用促進やDXの力を借りたライドシェアによる自動車の走行自体の削減等により、排出削減が進められることになるだろう。しかし政府の2050年CO2実質ゼロ目標達成には、充電設備の拡充や販売台数の引き上げ、電力の脱炭素化に向けた更なる取り組みが必要となる。

世界的にモビリティの脱炭素化が求められる中、最先端を行くテスラのように、ゼロエミッション車を中心とした革新的イノベーションを軸に、適用能力を持つ企業が急成長するだろう。ESG投資家にとっては「脱炭素投資」をこれからのチャンスとして捉え、自動車産業の環境技術の進展に着目することは投資判断のヒントになるだろう。


参考リンク:

日本経済新聞:首相「潮流変わった」 温暖化ガスゼロ、企業の投資先に

朝日新聞デジタル就活ナビ:温室ガス「2050年ゼロ」宣言 「脱炭素」の企業研究でリードを

国際エネルギー機関(IEA):2050年までにゼロエミッションを達成するには(英文

日本自動車会議所:自動車業界挙げ「脱炭素」 経団連「チャレンジ・ゼロ」

トヨタ自動車:環境チャレンジ2050 | ESG(環境・社会・ガバナンス)に基づく取り組み | サステナビリティ

ホンダ自動車:Honda|環境への取り組み|環境取り組みの基本方針

時事ドットコム:脱炭素化で新たな挑戦 ホンダの八郷隆弘社長

日産自動車:日産|環境への取り組み

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