1. はじめに
現在、日本の2030年度の温室効果ガス削減目標を「2013年度から46%削減し、さらに50%の高みに向け挑戦を続けていく」という「脱炭素社会」の実現に向けて、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの発電量を2030年までに約二倍に増加させる必要があるとされる。しかし再エネの最大の欠点である「不安定性」を乗り越えなければならない。そこで再エネの主力電源化を支える欠かせない技術として「長期エネルギー貯蔵技術:Long-duration Energy Storage(LDES)」の導入が鍵となる。携帯機器や電気自動車などに使われている二次電池(リチウムイオン電池、ニッケル水素電池など)をはじめ、さまざまな種類が存在し、日本企業も優れた技術を誇っている。
本記事では、これらの多様な電力貯蔵技術の特徴や用途、バッテリーエネルギー貯蔵の優れた技術を持つ日本企業の実績、そして諸外国の事例を取り入れ解説する。
2. 電力貯蔵技術とは
太陽光発電などの再生可能エネルギーは、天候に左右されるという弱点があり、電力系統において蓄えることのできるエネルギーの量と時間による制限を受ける。この課題を、LDESと呼ばれる8時間を超える放電時間を持つシステムの導入により、解決できる。さらに、太陽光発電などの自然エネルギーの活用と併用して連携することで、より省エネ効果を高めることができ、さらに高い効果を得ることが期待できる。
つまり、再生可能エネルギーによる不安定な電力供給に対し、安定性と信頼性をもたらし、電力需要の変化により柔軟に対応できるシステムの構築に寄与する可能性があるということである。
今までは主な使用用途として、コンビニエンスストアや事務所などの小型の店舗では産業用小型蓄電気、ビジネスの建物やオフィスビル、商業施設などの大型の建物などでは、大型・中型蓄電気が設置されている。これにより、災害時のバックアップ用電源として、電力を供給することが出来るだけでなく、平常時も電力をコントロールすることで、電力を適切な使用量に管理し、経済的な使用と省エネ化を図ることが出来る。今後、個別の施設に加え、地域の電力グリッド全体を支えることのできる大容量のメガワット級の電力貯蔵システムが求められる。
3. 多様な長期電力貯蔵技術
現在、主に使用されるのはリチウムイオン電池であるが、他にも有望とされている長期電力貯蔵技術として、リチウムを含めた七つの種類がある。
◇バッテリーエネルギー貯蔵(リチウムイオン電池など)
リチウムイオンが正極と負極の間を往復している二次電池の電力貯蔵
◇水素エネルギー貯蔵
余剰電力が発生した際に、水電解を行うことで水素を作り出し、水素として電力を貯蔵すること
◇揚水式貯蔵(PHS)
発電所の上部と下部に大きな池(調整池)をつくり、昼間の電力需要の多いときは上の調整池から下の調整池に水を落として発電し、発電に使った水は下部の調整池に貯める こと
◇液体空気エネルギー貯蔵(LAES)
液化空気の形でエネルギーを貯蔵し、必要なときに電力として取り出す技術
◇圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)
夜間電力を使って圧縮 空気を夜間に蓄えておき、昼間の電力需要の多いときに、この圧縮空気とともに石油や天然ガスを燃やしてガスタービン発電機を回して発電するもの
◇フライホイールエネルギー貯蔵(FES)
電気が持つエネルギーを一時的に回転運動の物理的エネルギーに変換することで保存しておき、後ほど電気が必要な時に回転運動から発電によって電気を得るもの
◇熱エネルギー貯蔵(TES)
熱エネルギー、あるいは氷や冷たい空気や水からのエネルギーの移動と貯蔵を可能にする技術
4. バッテリーエネルギー貯蔵の進展と課題
今回は、バッテリーエネルギー(蓄電池)システムに焦点を当てて、それらの種類と特徴を解説する。
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