化石燃料を廃止するために金融機関や太平洋諸国が動き出す

化石燃料の段階的廃止を推進する金融機関や太平洋諸国が動き出す。

世界的な金融機関であるフランスのBNPパリバが化石燃料開発に今後一切資金提供を行わないことを発表した。化石燃料開発に資金提供を行わないことで、石油・石炭・ガス業界の成長にブレーキをかけ、自社の事業活動による気候変動への影響を減らすために同社が方針改訂に踏み切った。また、石炭、石油、ガスをの新規開発を廃止し、公正な移行を促進するための国際的な枠組み案である「化石燃料不拡散条約」の策定を目指す太平洋諸島諸国の取り組みについて紹介する。

フランスの大手銀行が化石燃料開発への資金提供停止発表

フランス最大の金融機関であるBNPパリバは年次株主総会を数日後に控えた2023年5月11日、融資条件にかかわらず新規油田・ガス田開発専用の融資は今後一切行わないと発表した。新しい公約には2030年までに石油開発融資を80％削減するという目標を改めて掲げただけではなく、多角的な方針を取り入れない石油会社に対する融資を段階的に、そして最終的には完全に廃止することも含まれている。 ＊1

ESG投資推進NGOのShareActionは声明で、「BNPパリバの新たなコミットメントは歓迎すべきものであり、新規石油・ガス開発に対する銀行の融資意欲が急速に減退していることを示唆している」と述べた。また今年、化石燃料への融資をめぐって同行を提訴したオックスファム、フレンズ・オブ・ザ・アース、ノートル・アフェア・ア・トゥーの3団体は、この動きは「小さな一歩」だとした。ShareActionと3団体は、銀行の気候政策はまだ十分ではないと批判し、BNPパリバの、関係企業への融資を通じたガスプロジェクトへの間接的な資金提供や、社債の取り扱いなどの抜け穴を埋める必要性を強調した。

より迅速で厳しい対応を求める投資家たち

欧州の銀行は、2050年までに融資による二酸化炭素排出量をゼロにするという誓約の一環として、化石燃料に対する融資基準を厳しくしているが、環境保護団体や一部のESG投資家は、より迅速な対応を求めている。銀行は、低炭素分野へのシフトと化石燃料からの脱却を図る計画を発表しているが、その目標の多くが2030年を目標としているため、進捗状況を評価することは困難である。

例えば、BNPパリバは他に、排出量の多い鉄鋼、アルミニウム、セメント部門について、2030年に向けて新たなポートフォリオ調整目標を設定し、投資対象の「排出強度」を昨年から10～25％削減することを検討していると公表した。BNPパリバのライバルであるフランスのソシエテ・ジェネラルは昨年、石油・ガス生産部門への金融エクスポージャーを2019年と比較して2025年までに20％削減したいと発表し、クレディ・アグリコルは、2025年までに石油採掘プロジェクトへの融資を停止すると公約した。

このように世界的な流れは、化石燃料からクリーンエネルギーに転換する方向へ進んでいる。銀行や投資家の気候変動に対する取り組みに企業が応えるためには、各国政府による再生可能エネルギー技術の研究開発や普及支援や税制改革、また国際的な枠組みによる気候変動に関する規制の整備や条約が欠かせない。

南太平洋海諸国が化石燃料拡大防止条約の決議を推進

気候変動の問題は金融機関や民間企業だけではなく、一般市民と各国政府による国際社会の協力関係があって初めて解決の方向に動き出すことができる。また、気候変動の影響を受けやすい発展途上国やグローバルサウスが直面する損失と損害への対応策も同時に解決しなければならない。

先進国による十分な温暖化対策が実行されないまま、南太平洋の島嶼国が化石燃料からの公正な移行の枠組みを定める化石燃料不拡散条約の策定を目指し、リーダーシップを発揮している。

2023年5月12日、トンガ王国は、バヌアツのポートビラで開催された第5回太平洋地域エネルギー・交通大臣会合で公式発表を行い、太平洋諸島諸国に対して、化石燃料不拡散条約（石炭、石油、ガスを廃止し、公正な移行を促進するための国際的な枠組み案）を整備するための合意形成を求めるよう呼びかけた。＊2

トンガ王国首相のソバレニ氏は、