世界経済フォーラムは1月10日に「グローバル・リスク報告書2024」を発表した。*1
報告書は急速な技術革新、経済の不確実性、気候変動、紛争などを背景に、今後10年間に世界のあらゆる地域の人々が直面する、これらの最も差し迫った課題を示している。この調査結果は、学術界、企業、政府、国際社会、市民社会から約1500人の世界的な専門家の見識を集めたフォーラムの「グローバル・リスク認識調査(Global Risks Perception Survey)」に基づいている。*2
重要な発見
報告書は、世界が「気候変動と紛争という2つの重大な危機に悩まされている」ことを明らかにしている。これらの脅威は、急速に加速する技術革新と経済の不確実性を背景にしている。国際的な協調が迫られる中、弱体化した経済や社会を変革するために必要なことについて説明する。
1. 今後の世界は暗い~悪化する見通し~
2023年の出来事を振り返ってみると、スーダンやガザなど脆弱な人々が致命的な紛争に直面し、また記録的な暑さ、干ばつ、山火事、洪水が発生した。社会の不満は多くの国で顕著であり、分極化、暴力的な抗議行動、暴動、ストライキなどが報道され続けた。
調査の結果、今後2年間の世界の見通しは圧倒的にネガティブで、さらに今後10年間で悪化すると予想された。2023年9月の調査では、回答者の過半数(54%)が何らかの不安定性と世界的な大災害の中程度のリスクを短期的に予想しており、さらに約30%は激動する状況を予想している。10年後の見通しでは、回答者の3分の2近くが猛烈な荒れ模様または激動の見通しを予想しており、見通しは著しくネガティブである。
2. 今後10年世界規模で重大な危機をもたらす最大のリスクは異常気象
報告書では、現在、2年後、そして10年後に分けてのリスクについての調査結果が発表された。
現在の結果を見ると、極端な気象現象がもたらすリスクがリストのトップに挙げられているが、これは、地球温暖化により、「長期的で、不可逆的な、自己永続的な変化を引き起こす可能性のあるティッピング・ポイント」が、世界の平均気温の上昇が1.5℃に到達すると予測されている2030年代初頭時点か、それ以前に通過する可能性があることに対する備えが、各国にはまだないためである。この準備不足が、急速な気候変動の影響に適応できないコミュニティや国を生む可能性がある。
2024年現在の最も深刻なリスク
- 極端な気象現象
- AIが生み出す誤報と偽情報
- 社会的・政治的偏向
- 生活費高騰
- サイバー攻撃
異常気象の脅威は差し迫ったものであると考えられているが、生物多様性の損失や生態系の崩壊など、他の気候関連リスクの緊急性については意見が分かれた。これらのリスクに対する懸念は、調査に回答した若い世代で顕著に高く、意味のある行動が取れる時点よりも緩和が遅れるのではないかという懸念を促している。
3. 今後2年間、分裂を拡大するAIによる偽・誤情報が最大の脅威
一方で、今後2年間で、AIの悪用を通じて「外国と国内のアクターは同様に、社会的・政治的分裂を拡大するために誤報や偽情報を活用するだろう」と報告書は指摘しており、AIが生み出す誤報と偽情報が短期的に最大のリスクであると警鐘を鳴らしている。このリスクは、
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