2023年、ChatGPTのローンチによって、AIがより私たちの身近なものとなった。誰でもアクセス可能で、日常生活におけるAIアプリケーションの有用性が多くの人に理解されただろう。これは、AIが社会課題や持続可能性に価値を加えることができる可能性に価値を加えることができる可能性ついてのより広範な議論を引き起こした。
一方で、AIは、人種的・文化的偏見を永続させるだけでなく、フェイクニュースや偽情報の蔓延を拡大し、大衆の心理や感性を操作するなど、関連するリスクも伴う。
さらに、大きな問題点として、生成AIはエネルギーと資源を大量に消費する。学習や生成に大量の電気を使用するだけでなく、データセンターを冷却するために水も使用する。生成AIの増加によって、消費電力量、そして発電の際に排出される二酸化炭素の排出量も増加するため、生成AIの流行が地球温暖化を悪化させる可能性についても、明らかになってきた。
大量のエネルギー消費
IEA(国際エネルギー機関)が2024年1月に発表した電力に関するレポートによると、データセンター、AI、暗号通貨セクターによる電力消費が、2026年までに倍増する可能性がある。データセンターは、世界中で電力需要増加の大きな原動力となっており、データセンターの世界全体の総電力消費量は、2022年に推定460テラワット(TWh)であったのに対し、2026年には2倍以上の1,000テラワット(TWh)以上に達する可能性がある。この需要は日本の電力消費量にほぼ匹敵する。*1
また、2023年の論文で、オランダのアナリストであるアレックス・デ・フリース氏は、AI関連のグローバルなエネルギー使用量を推定した。推定のために、米大手半導体メーカーのエヌビディアのグラフィックス処理ユニット(GPU)のAIハードウェアとソフトウェアの仕様を使用した。その結果、2027年までに、グローバルAIはオランダと同じ量のエネルギーを消費する可能性があることを発見した。*2
AIシステムは、水も大量に使用
またカリフォルニア大学(リバーサイド)の研究者であるシャオレイ・レン氏は、データ処理センターに関連する水使用量に同様の傾向があることを確認した。この研究では、グローバルAIのスコープ1およびスコープ2の水使用量を明らかにした。
スコープ1とは事業者が自社で燃料の使用や工場プロセスにおいて企業自身が直接排出するものを指しており、AIの場合、オンサイトサーバー冷却、つまりデータセンターでIT機器等の冷却のために使用した水の量を指す。
スコープ2とは他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出を示しており、AIの場合オフサイト電気生成、つまり消費者がAIを使った際に生じる電力を発電するために使用される水の量を指す。
研究の結果、2027年までに、グローバルAIのスコープ1および2の水使用量はデンマークの国全体が使用する水の量の4〜6倍になることが明らかになった。この発見は、グーグル(+20%)およびマイクロソフト(+34%)などの大手テック企業による水使用量の急増に反映されており、2021年から2022年にかけてAIプログラムが加速するにつれて大きな増加を示している。*2
同様に、米カリフォルニア大の研究チームがAIモデルの莫大な水消費量についてまとめたレポート「Making AI Less ‘Thirsty’」でも、2021年にグーグルが米国で所有するデータセンターだけで、冷却のために127億リットルの淡水が消費されたことや、マイクロソフトの最新鋭の米国データセンターでChatGPTを数十日間トレーニングすると、70万リットルの清浄な淡水が直接消費されることが示された。*3
AIシステムの開発者による自己規制
このようにAIシステムのエネルギーと資源集約度は周知の通りだ。企業は、AIシステムの統合と拡張が、スコープ1と2の排出量と、より広範なサステナビリティ及びネットゼロ目標にどのような影響を与えるかを認識し始めている。
AI関連のエネルギー消費をさらに軽減するためのベストプラクティスが登場している。最近の論文 「Power Hungry Processing」では、単純なタスク特化型モデルから、複数の相互接続タスクを実行する複雑な汎用型モデルまで、さまざまな機械学習(ML)アプリケーションの推論コストを調査した。
その結果、汎用モデルの方がはるかに大きなエネルギーと排出量を消費することが示唆され、さまざまなタイプのAIモデルとそれに関連する環境フットプリントが注目され始めている。グーグルとIBMは、以下のように取り組みを強化している。
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