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サステナブル投資10年で17兆ドル、成果は大きく分岐

ベイン・アンド・カンパニーは「CEO サステナビリティ・ガイド2026」で、サステナブル投資が「分岐の時代」に入ったとする論考を公表した。この結論は世界経済フォーラムが最近公開したグローバルCSO調査でも同様な見解が示されているトレンドだ。ベインの分析によると、過去10年のサステナブル投資の総額約17兆米ドルの内9割近くが再生可能エネルギー・建築物・モビリティに集中し、収益も排出削減の成果も大きく分かれた。不確実性が高まる情勢の中、CEOに求められるのは確実性ではなく確信だという。*1

「サステナビリティは後退している」という見方をベインは退ける

ベインは前年に、企業が実際に行っていることと公に語ることの隔たりが広がる「ドゥ・セイ・ギャップ(やっていることと言っていることの差)」を指摘していたが、今回はそれよりも「はるかに重大な分岐」が産業をまたぐ移行のなかに現れたとする。炭素を減らし、より持続可能な経済の仕組みへの移行を支える投資と技術が、それぞれ違う速度で進んでいる、と同氏は見る。

その前提としては、サステナビリティが後退しているという語り口は誤りだとベインの執筆者が述べる。過去10年間に、世界全体で民間企業と政府がおよそ17兆米ドル(約2,640兆円)をグリーン技術に投じており、これは2015年に見込まれていたペースを約4兆米ドル(約620兆円)上回る。投資が最も速く加速したのは2020年から2023年で、年率15%だった。2025年には過去最高の2.4兆米ドル(約372兆円)に達し、現在は若干年率の上昇速度は落としているものの、約7%で成長しているという。

投資の9割近くがグリーンエネルギー・建築物・モビリティに集中した

問題は総額ではなく配分である。ベインの集計では、過去10年間でサステナブル投資のほぼ90%が、経済性が実証されコスト曲線が下がっている3つの分野——グリーンエネルギー、建築物、モビリティ——に流れ込み、グリーンエネルギー単独で投資総額の57%を吸収した。

一方で、経済性がそれほど明確でない重要なセクターにはほとんど投資が向かわなかった。農業、土地利用、製造・素材は合わせて世界の温室効果ガス排出量の約37%を占めるが、集めた投資は10%未満にとどまる。同氏はこの不均衡が次第にリスクを帯びてきていると指摘し、気候変動が農業生産を乱すにつれ、食料移行への投資が「単にサステナビリティ上の要請であることを超えて、急速に食料安全保障の問題になりつつある」と述べている。

収益も排出削減の成果も大きく異なる

収益の面でも差は大きい。代替タンパク質、水素燃料電池、電池分野の有力企業(チャンピオン企業)には莫大な資金が投じられたが、いずれも今のところ、ごくわずかなリターンしか生んでいないか、マイナスにとどまるという。対照的に、

最も多くの投資を受けた再生可能エネルギーは、近年の化石燃料価格の上昇により高い収益を上げてきたという。

環境面の成果も同じく不均等である。欧州では、グリーンエネルギーに投じられたおよそ1.8兆米ドル(約279兆円)が、この10年でエネルギー部門の排出量を42%削減することに寄与した。同氏はこれを「見事な脱炭素の成功例」と評価する。しかし同じ期間にグリーンモビリティへ投じられた4,500億米ドル(約69兆8,000億円)は、今のところモビリティ排出量の1%の純増をもたらしている。同じ「グリーン投資」という括りのなかで、投じた額と削減の成果が対応しない領域が生まれているということだ。

37技術を追跡した指数は「大多数が2015年の期待に届かなかった」と示す

技術ごとの達成度については、ベインが「グリーン技術パフォーマンス指数(Green Technology Performance Index)」を用いて、37の技術について2025年の実際の導入水準を見通しと突き合わせている。報告書はその結果を、太陽光、電池、EVを含む少数の技術が予測を大きく上回った一方、その後ろに長く連なる多数の技術はおおむね見通しに届かなかった、とまとめている。

ベインは、この未達を構想の誤りのせいにはしていない。「多くの場合、構想そのものが誤っていたわけではない」としたうえで、つまずきの原因は、3つある決定的な関門のうち、どれか1つが開かなかったことにあるという。脱炭素社会への移行は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が挙げたとおり技術・行動・政策の3つに支えられており、どれか1つでもつまずくと、その技術は採算と規模に届きにくくなる。「関門が1つ閉じているだけで、描いた見通しは狂ってしまう」というわけだ。

第一関門:技術

第1の関門は技術である。例えば、鍵を握る低コストのグリーン水素が足りないために、メーカーが産業規模で手頃な価格のグリーン鋼を作れずにいると指摘がある。この供給不足は、グリーンアンモニアや多くのゼロエミッション燃料の足も引っ張ってきた。報告書は「たった1つの技術——グリーン水素——の期待外れの成績が、移行の全体を塞いだ」と書く。

技術が代替手段に競争で負けた例もある。バッテリー電気自動車がコスト・インフラ・消費者の受容において決定的な優位を築いたため、水素燃料電池車はニッチにとどまっている。ここでの含意は、技術が失敗したかどうかではなく、同じ用途で代替技術に競争で勝てるかが結果を決めるという点にある。

第二関門-政策-と第三関門-行動-はそれぞれ別の形でつまずく

第2の関門は政策である。北欧では政策の後押しが長く続き、本物の需要を生むだけの強さがあったため、ヒートポンプが暖房の主流になった。一方で他の大半の市場では政策が断片的で弱く、同じ規模には育たなかった。

第3の関門は行動で、政策に支えられた強い技術でも利用者が採用しなければ停滞する。挙がっているのは2つの例だ。省エネで浮く光熱費の大半を受け取るのは家主ではなく入居者なので、家主は省エネ改修の費用を出すのをためらいがちだ。代替タンパク質も、十分な数の消費者を惹きつける味・食感・価格にまだ届いていない。

報告書は、3つの関門のどれが進展を塞いでいるのかを見極めることが重要な一歩だとする。それによって、投資を続けるのが合理的なのか、働きかけ(アドボカシー)に意味があるのか、それとも撤退すべきなのかが決まる。

確実性より確信が勝つ

ベインが第2の柱に据えるのが「確実性より確信が勝つ」という考え方だ。まず前提として、企業と政府がサステナビリティ移行への投資を今日のペースで続け、その資本が適切に配分されるなら、次の10年の資金総額は、国際エネルギー機関(IEA)の2.5℃シナリオが必要とする水準を上回りうるとする。

持続可能な技術は成熟の速度が異なり、政策は不均等に展開し、顧客の受容もばらつく。だからCEOには、自社の事業にとって最も重要な移行を動かしている技術の明確な地図が必要になるという。地図を正しく読むことは、ある技術が自社の事業とバリューチェーンに関わりがあるのか、それがどの速度で発展するのか、規模拡大のためにどの関門が開いていなければならないのかを理解することから始まる。

ベインは「CEOの課題は将来を確実に予測することではない。地図を読み、確信を築き、異なる将来シナリオに備え、それに応じた投資ポジションを取ることである」と指摘する。

地図は技術を3つに区分する

ベインが示す地図は、技術を3つに区分する。

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