国連環境計画(UNEP)は新たな報告書「Limiting Overshoot」で、世界の気温上昇が産業革命前の平均に比べて今後数年のうちに1.5℃を超え、最も楽観的なシナリオでも1.8℃でピークに達すると警告した。一方、急速な排出削減と二酸化炭素除去で1.5℃未満へ戻す道は残るとし、ネットゼロは通過点にすぎないと位置づけた。
+1.5℃を超えても「戻る道」は残る
UNEPの新たな報告書によると、世界の気温上昇はおそらく今後数年のうちに1.5℃の閾値を越え、人々と生態系はますます危険な影響にさらされる。そのうえで報告書は、気温をなお閾値の下へ戻し、パリ協定の目標を達成することは可能だとしている。*1
報告書「Limiting Overshoot(オーバーシュートの抑制)」は、「オーバーシュート・ピーク・低下」の経路を残された最善の選択肢と位置づける。*2 オーバーシュートとは、目標水準を一時的に超過することを指す。この経路では、各国が温室効果ガス排出を急速に削減し、最終的には排出量を上回る二酸化炭素を大気から除去するのに伴い、気温は一時的に1.5℃を超えてピークに達し、その後低下していく。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、2026年夏の焼けつくような暑さ、猛威をふるう山火事、死者を出す洪水は「この先に待ち受けるものへの警告」だと述べた。そのうえで「1.5度を超えるオーバーシュートを、できる限り小さく、短くしなければならない。それには野心のオーバーシュートが求められる」と訴えた。
排出削減と炭素除去(CDR)に加え適応の強化も不可欠
この経路を実現するには、ネットゼロ(温室効果ガスの排出量と除去量を均衡させる状態)に向けて、メタンを含む温室効果ガス排出を直ちに、かつ持続的に削減する必要がある。加えて、大気から炭素を除去し、植林などの手段で貯留する二酸化炭素除去(CDR)も、最終的に気温を引き下げるうえで不可欠になる。
各国は排出削減と同時に、社会・地域・経済の脆弱性を減らすための適応も強化しなければならない。ただしUNEPは、適応には限界があり、とりわけピーク気温をできる限り低く抑えられなかった場合には、一部の影響が不可逆になる可能性が高いと注意を促す。IPCCは、海面水位上昇の「ロックイン(不可避)」成分は短期的な緩和策の選択にほとんど左右されないため、たとえ低排出シナリオであっても、一部の小島嶼開発途上国(SIDS)における脆弱性が2100年よりかなり早い段階で適応の限界を超える可能性があると、高い確信度で結論付けている。
UNEPのインガー・アンダーセン事務局長は「気温上昇が1.5℃を上回る状態にとどまるなら、良い結果は一つもない」と述べた。世界各地の極端な熱波は、気候変動の影響が「より速く襲い、より強く打ち、より長く続き、より多くの命を奪い、より深刻な混乱をもたらす」ことをすでに証明しているという。
最も楽観的なシナリオでも上昇幅は1.8℃
報告書が検討したシナリオのうち最も楽観的なものでも、気温は産業革命前から1.8℃高い水準でピークを迎える。温暖化を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標をすでに上回る数字であり、他の大半のシナリオはさらに高いピークを見込んでいる。
1.5℃を超えた状態では、0.1度の追加上昇ごとに、そして超過して過ごす1年ごとに、リスクは増していく。想定される影響は、
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