国連事務総長直下に設立された専門家グループは、企業やその他非国家主体が発表するネットゼロ誓約について、明確な基準を策定し、グリーンウォッシュを避けることを目的とした一連の勧告を報告書として発表した。
パリ協定の発効に伴い、多数の企業、国家、都市がネットゼロ誓約を掲げてきたが、現在ネットゼロは一つの変曲点を迎えている。ネットゼロ誓約を掲げたにも関わらず、具体的な行動が実行されない例。
ネットゼロ目標を過小評価したり、独自解釈を行ったりする例。肯定的な報道による自社利益獲得を目的に、達成する予定がないにも関わらずネットゼロ誓約を掲げる例。気候変動問題に誠実に取り組んでいるにも関わらず、目標達成に必要な基準、資源、技術を有していない例。様々な形でグリーンウォッシュが溢れており、ネットゼロ達成の障害となっている。
そのため、一貫性、透明性、信頼性、公平性が確保されたネットゼロ誓約の実現が求められ、ネットゼロ誓約を行う企業、国家、都市、規制当局に向けて10の提言を取りまとめた報告書が発表された。
国連によるグリーンウォッシュ問題への対策
ネットゼロ誓約が企業、金融機関、地方・地域政府に拡散した一方で、それら誓約の詳細、確固さ、範囲には大きな広がりがある。対処策を講じるため、サステナビリティ、ビジネス、金融、政府のリーダーによって構成される「非国家主体のネット・ゼロ・エミッション・コミットメントに関する専門家グループ」が2022年3月にアントニオ・グテーレス国連事務総長によって召集された。
専門家グループの議長であり、カナダの元環境・気候変動大臣であるキャサリン・マケンナは、報告書の序文で、このグループが「ネットゼロおよびネットゼロに整合することの意味について厳しい定義を設定した」と述べ、「非国家主体は、長期の誓約だけではなく、科学に基づく短期の目標、およびこれらの目標やネットゼロ達成に整合する即時温室効果ガスの排出削減と設備投資を示す詳細な移行計画の報告が必要となる」ことを明らかにした。
マケンナ氏は、この報告書が、投資家や消費者などから寄せられた、「グリーンウォッシュを可能にするネットゼロ誓約の使用に関する懸念 」に対処していると付け加えた。
報告書では以下の10のカテゴリーについて提言が行われている。詳細な説明は後に続く。
- ネットゼロ誓約
- ネットゼロ目標設定
- ボランタリークレジットの活用
- 移行計画の策定
- 化石燃料の段階的廃止と再生可能エネルギーの拡大
- ロビー活動の調整
- 自然環境と人間にとっての公正な移行
- 透明性と説明責任の向上
- 公正な移行への投資
- 規制確立の迅速化
ネットゼロ誓約を行う企業、金融機関、都市や地域へ10 提言
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