2025年は、ESGが逆風と追い風の両方に直面する重要な年となった。米国の反ESGの動きが目立った一方で、エネルギー転換に加えてネーチャーテック分野へ投資が拡大した。トランプ政権の逆行に流されネットゼロに向けた金融アライアンスが次々と縮む中、気候変動による物理的リスクの高まりはさらに深刻化する。不安定な世界情勢が続くことで、中長期的なレジリエンスを確保する取り組みの重要性が高まっている。見逃した方のために、ThinkESG編集部による2025年中に投稿したESG記事10選を時系列で紹介する。
- 1) ブラックロックの転換?〜自然資本市場とESG投資の新時代〜 2025年3月9日
世界最大の資産運用会社であるブラックロックが、自然資本への投資を強化している。自然資本を「外部性」ではなく「投資可能な資産」として正式に位置付けた。これは、資産評価のパラダイムシフトを示す重要な転換点であり、ESG投資の未来を再定義する可能性がある。
- 2) 日本のメガバンク、気候変動対策グループから相次ぎ脱退 2025年3月20日
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が脱退してからわずか二週間で、野村ホールディングスが2025年3月12日に、そして三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)も3月19日に銀行の投融資活動における温室効果ガス削減を促す国際的イニシアチブであるネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)から脱退をすることが明らかとなり、日本の銀行の脱退が相次ぐ形となった。
- 3) DEIと政治的対立 ~米国での反DEIの動き~ 2025年3月23日
トランプ大統領が就任直後の2025年1月20日、21日に、DEIに関連する大統領令を発布した。これによる連邦政府、企業、大学への影響はどうなるのか、発令から1ヶ月以上たった今どんな変化が起きているのか、今後どのような事態が予測されるのかを本記事にて紹介する https://thinkesg.jp/dei_trump/
- 4) 世界の総発電量の4割をクリーンエネルギーが占める 2025年4月16日
エネルギーに特化したシンクタンク「エンバー」の最新の報告書によると、2024年、再生可能エネルギーと原子力が世界の電力供給の40.9%を占め、クリーンエネルギーの成長が加速していることが明らかになった。これに対し、米国ではトランプ政権が化石燃料の利用を推進し、再生可能エネルギーへの転換が後退している。しかし、他国、特にアジア市場ではクリーンエネルギーの導入が着実に進んでおり、今後のエネルギー市場における変革は止まらない。
- 5) 世界気象機関、今後5年間の気温は記録的な高温で推移 2025年6月11日
世界気象機関(WMO)の最新の気候予測によると、世界の平均気温は今後5年間、記録的なレベルかそれに近い状態が続くと予想される。WMOは温暖化に伴う気候リスクは社会、経済、持続可能な開発への影響を増大させると警鐘を鳴らしている。https://thinkesg.jp/wmo-global-climate2025-2029/
- 6) ICJの勧告的意見:各国政府には気候変動による被害を防ぐ法的義務がある 2025年8月5日
国際司法裁判所(ICJ)は、国家の気候変動に関する義務について初めての勧告的意見を示した。国連総会の要請により発出されたこの意見は、国家が気候危機に対して負う法的責任を詳細に明らかにしたものであり、パリ協定以来、国際気候法における最も重要な進展である。ICJは、気候変動を「存在に対する脅威」と明確に位置付け、国家の義務はもはや努力目標ではなく、法的拘束力を持つ実効的な責任であると断言した。https://thinkesg.jp/icj_advisory_opinion/
- 7) EU、2040年温室効果ガス90%減 2025年8月25日
欧州委員会は1990年を基準年とする2040年までのEU全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を90%にすると提案した。これは、EUの2030年排出量削減目標55%と2050年までのネットゼロ目標の中間的な重要なマイルストーンとなる。https://thinkesg.jp/eu2040-climate/
- 8) 世界で注目が高まるネイチャーテックを徹底解剖 2025年10月25日
技術革新と自然再生を結びつける取り組みである「ネイチャーテック」に世界で注目が高まる。投資規模は約3000億円に拡大し、衛星やドローンによる自然の計測技術や、地域単位で自然を守る取り組みの重要性が示された。日本は今後、自然計測の国際標準化を主導していく方針を掲げている。
- 9) SBTiの企業ネットゼロ基準v2.0、主な変更点 2025年11月24日
SBTIは、企業向けネットゼロ基準v2.0の最終草案を公表した。同草案はネットゼロに向けた企業行動の柔軟性を強化すると同時に、実質ゼロ達成までの過程で削減しきれない排出量への責任ある対応を義務化する方向へ移行している。スコープ3対策やカーボンクレジットの活用も更新。
- 10) COP30ベレン会議が示した成果と深まる国際的対立 2025年11月29日
先週閉幕した国連気候変動会議COP30の最終文書からは「化石燃料からの移行」の文言が削除され、国際的な対立が表面化した。結果として、化石燃料や森林についての新たなロードマップや明確な実施計画は打ち出されず、多くの国が失望を表明した。争点となったテーマを徹底分析。
