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9割のプラスチックは、実はリサイクルされていない?

世界全体で約90%のプラスチックがリサイクルされていない

サステナブル・ファイナンスに特化した非営利シンクタンク、プラネット・トラッカーが行なった最新の調査によると、プラスチック製品が広くリサイクルされているという一般的な認識は誤りであり、実際には世界全体で約90%のプラスチックがリサイクルされていないこと、またプラスチックバリューチェーンに依存している企業の時価総額148社の企業の中に日本企業が7社含まれるという事実が明らかになった。*1

この調査では、プラスチック産業が、プラスチック汚染の解決策としてリサイクルを強調することで、政策立案者と消費者を誤導しようとしていると主張している。

プラスチック業界は、プラスチックが循環型素材であるというイメージを強調し続けているが、これは現実とは大きくかけ離れている。

この誤ったイメージは、プラスチック産業が利益を保護し、一方でプラスチック・サプライチェーンの最も脆弱である地方自治体や自治体などがプラスチック廃棄物の清掃費用を負担することを可能にしている。この調査は、プラスチックリサイクルの現状と、その背後にある産業の動きについて新たな視点を提供している。

調査を行った団体、プラネット・トラッカー 

プラネット・トラッカーは、サステナブルファイナンスを促進することで、資本市場の投資と融資の意思決定が、プラネット・バウンダリーに沿ったものであり、公正な移行を支援することを目的としている。*2

プラネット・トラッカーは、2030年までにグローバルな金融活動を変革し、金融システムおよび企業経営陣と直接関わり、グローバルな金融活動の変革を推進することを使命としている。そしてレジリエントで公正な、ネット・ゼロの自然保護に配慮した経済へと、私たちの生産手段に現実的な変化をもたらすことを目指している。

プラネット・トラッカーは、グリーンウォッシングのような問題を含む企業行動の監視役であると同時に、金融とビジネスがどのように転換を図っていくかをサポートする役目も担っている。

対象とするサプライチェーンの中で、環境的・社会的に最悪の被害をもたらしている企業を特定し、その企業の投資家や貸し手を特定する。それによって、金融市場が自然資本をどのように認識し、評価するかについて、強力な転換を促す一助となっている。

プラスチックのリサイクルは壮大なグリーンウォッシュ?

プラネット・トラッカーは、プラスチック業界で、グリーンウォッシングが蔓延しているだけでなく、そのやり口は非常に巧妙であると論じてきた。本調査では、プラスチック業界が、プラスチック汚染の解決策としてリサイクルを推進することで、グリーンウォッシングを続けていると主張する。

その一例として、多くの人がプラスチックの「リサイクル・シンボル」だと信じているもの7つのマークすべてを検証し、それらが政策立案者、規制当局、消費者を欺くものであることを実証する。

(出典:Planet Tracker、Plastic Recycling Deception

プラスチック製品には 7 つの 樹脂識別コード(RIC) がある。これらのコードはリサイクル コードではなく、プラスチック製品に使用されている樹脂の種類を示す樹脂識別コードで、一般に、RIC コードが高いほど、リサイクルが難しくなる。RICは、プラスチック業界がプラスチックの生産者から注意をそらし、代わりにプラスチック汚染を廃棄物管理の問題にしてしまった優れた例である。

例えば広くペットボトルの材料として知られるポリエチレンテレフタレート(PET)は、世界で最も多く使用される樹脂といわれており、ペットボトルや衣類をはじめ、食品用のトレーや工業用のフィルム、磁気テープなどにも使われている。PETの素材は81%がリサイクルされていない。

その他のプラスチック素材である高密度ポリエチレン(HDPE)、合成樹脂(PVC)、低密度ポリエチレン(LDPE)なども90%以上がリサイクルされていない素材である。

大手日本企業もランクイン

プラネット・トラッカーは、本調査を実施するにあたって、プラスチックバリューチェーンの3つの主要セグメント、すなわち上流(使い捨てプラスチック、SUP)生産者、中流の容器および包装コンバーター、および商品を販売するためにプラスチック包装に依存している下流の消費者必需品企業から、時価総額でランク付けされた上位148社の企業を分析した。

148社のうち、日本企業でランクインしていたのは、三菱ケミカルグループ、三井化学株式会社、住友化学株式会社、日本製鉄、信越化学工業株式会社、日本たばこ、株式会社セブン&アイ・ホールディングスであった。

「プラスチックは循環する」は巧妙な嘘?

石油業界と化学業界は、世界的なプラスチック汚染の解決策はリサイクルであるというシナリオを支持するために、樹脂識別コードのシンボルを使用しているようだ。しかし、90%はリサイクルされていないため、これは誤りである

たった10%のプラスチックがリサイクルされているから、プラスチックがリサイクルされていると結論付けることがいかに不合理であるかはお分かりの通りだ。プラスチックは循環する、あるいは循環させることができるというメッセージをうまく宣伝することで、業界は政策立案者の目を代替(非化石燃料)素材の利点から逸らさせ、化石燃料を原料とする既存のプラスチック産業の生産削減を実施させないようにしてきた。

石油化学企業に期待される行動

プラスチックポリマーを生産する石油化学企業は、プラスチック循環に向けた行動を強化する必要がある。プラネット・トラッカーが投資家向けの宣言として打ち出している声明では、各企業に期待される以下の事項を定めている。*3

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