2020年と2021年の2年にわたり、イギリスの人権団NGO、Know The Chainは世界のアパレル・フットウェア大手企業64社によるサプライチェーン上の強制労働リスクへの取り組みを評価した 。日本企業では、ABCマート、アシックス、ファーストリテイリング、良品計画、しまむらの5社が調査対象となった。
スポーツウェアブランドのLululemonやAdidasは、様々な調達状況で移民労働者の権利を守るための実証可能な取り組みを行ったことが高く評価され、前回に続いて上位を独占する結果となった。日本企業では、アシックスとファーストリテイリングが世界平均スコアを上回り、両社とも2018年以降大きく改善したが、全体的な日本企業の取り組み状況には、企業間で大きな差が見られた。
企業の評価は、サプライチェーンにおける強制労働リスクへの各社の取り組み状況を測る以下の10の指標を元に行われた。
1. サプライヤー行動規範と サプライヤー契約への統合
2. 経営陣と アカウンタビリティ
3. ステークホルダー エンゲージメント
4. トレーサビリティと サプライチェーンの透明性
5. リスクアセスメント
6. 調達行動
7. 斡旋料
8. 結社の自由
9. 苦情処理メカニズム
10. 救済措置
その結果、アパレル部門のグローバル大手37社は、企業として利益を上げているにもかかわらず、パンデミックで生活苦に陥っている労働者を十分に保護できていないことがわかった。その理由として、KnowTheChainは、企業が方針や監視を重視する一方、労働者を中心に据えたフロセスや解決策への取り組みが不十分であることを指摘している。
分析結果は、以下に示すとおり、5段階に分類される。
・ほぼすべての領域に おいて措置を講じている(Advanced steps)
・「大半の領域において措置を講じている(Intermediate steps) 」
・「一部の領域において措置を講じている (Some steps)」
・「最低限の措置しか講じていない(Basic steps)」
・「何の措置も講じてい ない(No steps)」
日本企業5社の取り組み状況には、企業間で大きな差が見られた。日本のフットウェア小売最大手のABCマートと日本アパレル小売第二位のしまむらは、自社のサプライチェーンの強制労働リスクに対して「何の措置も講じていない(No steps)」であるが分かった。また、日本最大のカジュアルウェアブランドの一つ良品計画(無印良品)は「最低限の措置しか講じていない(Basic steps)」という結果になっている。
アシックスは「大半の領域において 措置を講じている(Intermediate steps) 」、ファーストリテイリングも「大半の領域において措置を講じている(Intermediate steps) 」となった。新型コロナウイルスのパンデミックによりリスクが高まっているにもかかわらず 、サプライチェーン上の強制労働リスクに対して「ほぼすべての領域において措置を講じている(Advanced steps)」と評価された日本企業はなかった。
(出所:KnowTheChain「2020年アパレル・フットウェア部門ベンチマーク結果報告書」)
調査対象の64社のうち、アシックスとファーストリテイリングを含む規模の大きい37社については、より詳細なベンチマーク手法を用いた評価も行われた。
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