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G7が取り組むべき3つの気候変動対策

本日、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7カ国(G7)の首脳と欧州連合(EU)の欧州委員会委員長が広島に集まり、第49回目の首脳会議を開催する予定だ。当然ながら、経済安全保障と共に、気候変動への対策が重要な議題となっており、G7のリーダーシップが期待されている。気候変動による影響が増大し、低炭素エネルギーへの移行が岐路に立たされている中、G7は、取るべき行動を迅速かつ決定的にし、国際連携を強めることができるかが会議の成果指標の一つだ。ウクライナ侵攻に伴い、法に基づいた国際秩序が崩れないように、「主権国家の主権尊重と領土保全」という原則を守るために団結する姿勢を世界に示すとともに、革新的な気候変動対策を率先して行うことで、主要7カ国は好循環を生み出し、世界の脱炭素化を加速させることができる。

地球温暖化をパリ協定で定められた1.5~2℃のしきい値内に抑え、温室効果ガスの排出量を迅速に削減するためには、G7によるグローバルなリーダーシップが不可欠だ。G7諸国は、世界の国内総生産(GDP)の半分以上、化石燃料からの二酸化炭素排出量の28%、世界人口の13%を占め、過去の排出量も多く占めているため、先進国の集まりのG7の行動は重要だ。また、他の国々がより大胆な温室効果ガス削減目標を策定するのを支援する財政的な手段も持っている。

また、G7諸国は、気候変動に関するコミットメントを拡大し、グリーン・トランスフォーメーション(GX)を阻害する市場の歪みを取り除く必要がある。2020年と2021年に、COVID-19の流行に伴う世界的な景気減速からの経済回復のためのパッケージの一部として、クリーンエネルギー、エネルギー効率、電気自動車、グリーンイノベーション研究などのグリーン対策に725億米ドル以上を費やしたことで、経済のグリーン化へ舵を切るように動いてきた。

一方で、化石燃料に有利な市場の歪みも残っている。G7諸国全体では、石油、石炭、ガスに対する補助金(増産奨励、償却、税控除、消費者負担の軽減など)は、年間630億ドル(約870億円)、一人当たり平均620ドル(約8万6千円)に達している。補助金によってのエネルギー価格の抑制は再生可能エネルギーの普及を妨げ、パンデミック後の化石燃料の消費と温室効果ガス排出の急増に拍車をかけている。しかし、本当のコストはもっと大きい。気候変動への影響や公害など、化石燃料の使用による環境・健康コストや税収の減少などを加味すると、化石燃料の社会的コストは、G7諸国にとって毎年1兆2千億ドル(G7のGDPの2.8%、一人当たり約16万円)のコストになっている。世界通貨基金(IMF)によると、世界の他の国々では、そのコストは4.7兆ドル(約650兆円)に上る。

G7諸国は、自国内だけでなくその他の国に対しても、世界の脱炭素化において、もっと多くのことができるはずだ。先月、学術誌「ネイチャー」のコメンテーターであるエドワード・B・バービエは、広島サミットに向けて、G7が取り組むべき3つの気候変動対策について概説しており、その概要を以下に紹介する。

G7は、3つの中核的な政策を実行すれば、世界の脱炭素化を大きく前進させることができる。

1) 化石燃料に有利な市場の歪みを除去する

2) クライメート・クラブをグローバルに広げ、最低炭素価格を参加条件とする

3) 途上国の脱炭素化を支援する

1. 化石燃料に有利な市場の歪みを除去する

G7 の全メンバーは、化石燃料の使用による温室効果ガスの排出を削減するために、3 つのグリーン政策を実施することから始めるべきである。第一に、今後 5 年間で、化石燃料の消費と生産に対するすべての補助金を段階的に廃止することである。これにより、経費が削減され、経済がより持続可能で、化石燃料への依存度を減らし、安全なものになる。

第二に、より包括的な炭素価格(カーボン・プライシング)を段階的に導入することである。炭素税や排出権取引制度は、いずれも排出される炭素1トンごとに課金される仕組みである。税は、この税金を直接課すことになるが、排出権取引は、炭素排出量に上限を設け、汚染者が割り当てられた排出許可を取引できるようにする。その結果、取引された排出権の価格が炭素排出の対価となる。G7のいくつかの国は、温室効果ガスの排出を制限するために炭素税や排出権取引を導入しているが、一般的に炭素価格は、行動の変化にインセンティブを与えるには低すぎる水準にとどまり、これらの仕組みの範囲は広げる余地は十分ある。

2050年までに温室効果ガス排出量ゼロを達成するためには、G7のような高所得の大排出国は、排出される二酸化炭素1トンあたり少なくとも75ドルの炭素価格を設定し、価格設定をより多くの部門に拡大すべきである。

G7メンバーでこの両方を行っている国はない。例えば、欧州連合(EU)の排出量取引制度は、高い価格水準に達しているが(1トン当たり90ユーロ程度、約1万3千円)、足元電力、製造、航空のみを対象としている。日本の炭素価格は、二酸化炭素換算で1トン当たり289円と極めて低いが、幅広く課されている。米国には現在、国家的な炭素価格制度はないが、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、東部12州の地域温室効果ガス構想のように、州や都市がより広く炭素に課税・取引することを奨励できるだろう。

第三に、G7 諸国は、クリーンエネルギーの研究開発や交通インフラへの投資を含む、環境に配慮した優先課題に、調達した収入を向けるべきである。政府は、最低賃金の引き上げ、離職者への支給や再訓練の提供、弱者世帯への所得配当や税還付の対象化などにより、所得、雇用、不平等への悪影響を相殺すべきである。例えば、イタリア、フランス、ドイツ、スペイン、ノルウェー、エストニアでは、このような政策により、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰の影響を緩和している。

2.クライメート・クラブをグローバルに広げる

G7の「気候クラブ」構想は気候変動対策に連携して取り組む新たな枠組みとして産業部門の脱炭素化を促進するための方向性を示しているが、グローバルな視点から見ると、その成功は他の国々をいかに効果的に取り込むことができるかにかかっている。

2022年にドイツで開催されたG7サミットでは、

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