はじめに
現在、自然環境の悪化に伴い、生物の多様性が、これまでにない早さで刻一刻と失われつつある。これは、私たち自身が、人類を含めた多くの生命にとって欠かすことの出来ない命の土台である生物多様性を自ら壊していることに他ならない。人為的な動物の移動による外来生物の生態系への影響や、森林伐採などで動物たちの住居を奪うという事態も頻発している。
そんな中、海外では政府や企業が生物多様性を考慮した取り組みが徐々に進んできている。本ブログでは、欧州における政府、投資家や企業の取り組みや、生物多様性の世界的保護を話し合う国連会議の「COP15part.2」についてまとめ、生物多様性の今後の動向を考察する。
1. 欧州の森林伐採に対する取り締まり:パーム油、大豆、木材、牛肉、ココア、コーヒーの輸入に審査義務付け検討
欧州委員会は昨年11月に、EU市場で販売される製品が森林減少や森林劣化に関連していないことを確認するための審査を義務付ける計画を提出した。提出に至った背景として、森林は二酸化炭素(CO2)の吸収や洪水防止の機能があり、企業の気候変動対策やBCP(事業継続計画)と直結する事があげられる。特に、欧州は中国に次いで世界の森林破壊の最大の輸入地域の一つであり、WWFによると、2017年、EUは国際貿易に関連する森林破壊の16%に関与している。さらに、EU気候変動担当のフラン・ティマーマンスは、この法案を発表する際に「パーム油、大豆、木材、牛肉、ココア、コーヒーなどの商品に対するEUの需要は、森林破壊の強力な推進力となっており、より多くの市民が、このような状況に終止符を打つことを望んでいる」と述べている。
「この審査を義務付けることにより、森林破壊を伴わず、合法的に生産された製品であることが確認された場合のみ、輸入することができるようになるシステムを構築するものである。」と付け加えた。
法律が承認されれば、EU市場に出回る牛肉、大豆、パーム油、木材、ココア、コーヒー製品およびその派生製品の生産過程に、より焦点が当てられることになる。そして、中小企業を含む企業は、2021年1月以降、EU市場に出した製品について情報を収集し、それらが森林破壊に関連していないことを確認する必要がある。
しかし、一部の環境保護団体からは、森林破壊に取り組むための審査義務の導入を歓迎している一方、法律の範囲が狭すぎるという批判もしている。NGOマイティーアースのヨーロッパディレクター、ニコ・ムジは、
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