国連気候変動会議COP27は、11月6日(日)にエジプトのシャルムエルシェイクで正式に開幕し、気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)が採択されてから30年、2015年のCOP21でパリ協定が合意されてから7年の節目となった。
毎年開催される「締約国会議」または「COP」には、UNFCCC、京都議定書、またはパリ協定に署名した190以上の政府が集まり、今年のCOPは、2021年にスコットランドのグラスゴーでイギリスとイタリアが共同開催したCOP26に続くイベントとなる。
昨年のCOP26では、メタンの排出量削減に向けた「グローバル・メタン・プレッジ」、世界の森林破壊の防止に向けた宣言、そして石炭火力発電の段階的廃止の加速を約束する前向きな発表が相次ぎ、ファンファーレとなったが、しかし最近の出来事で、気候変動に対処する世界の機運が低下している。ロシアのウクライナ侵攻、米中間の緊張、エネルギーと食料価格のショックによって悪化した新型コロナからの回復の遅れなどが、COP27での協力関係を阻害する可能性がある。成功には、現在緊張が高まっているすべての締約国間の友好関係が強く求められるだろう。
このような厳しい世界情勢にもかかわらず、世界の指導者、閣僚、交渉団は、エジプトに集まり、気候変動とその影響に共同で対処し、是正措置を加速する方法について合意する。市民社会、企業、国際機関、メディアは、このプロセスに透明性とより広い視点をもたらすために、オブザーバーとして議事を「傍聴」する。
「Together for implementation (共に実行する)」をスローガンに掲げる COP27 は、アフリカ開催の COP として、3 つの主要な論点が議論される予定である。
議論される主要課題とは?
2015年以降、法的拘束力のあるパリ協定のもと、世界のほぼすべての国が以下を約束した。
- 温室効果ガスの排出を削減することにより、世界の平均気温の上昇を産業革命以前の水準より2℃の「十分下」に抑え、理想的には1.5℃未満に抑制する(気候変動の「緩和」と呼ばれる)。
- 気候変動に適応する能力を強化し、レジリエンスを構築する。(気候変動への「適応」と呼ばれる)。
- 金融の流れを「温室効果ガスの排出削減と気候変動に適応した開発に向けた道筋」に整合させる。(「気候資金」と呼ばれる)
パリ協定は、個々の国が上記の課題に対してどのような行動をとるかを決める「ボトムアップ」方式をとっている。
緩和(気候変動の進行を抑えること)については、各国が排出削減目標とその達成方法を「国が決定する貢献」または「NDC」として発表している。現在のNDCは2030年までの行動を対象としており、パリの「ラチェットメカニズム」に基づいて5年ごとに野心を高める必要がある。最後の更新はCOP26までに行われる予定だったが(各国の削減目標が達成されたとしても、パリ協定の2℃〜1.5℃未満には届かないことで、今年のCOP27でもさらなる野心引き上げが期待されている)。
適応(現在および将来の気候変動の影響への適応)については、緩和の「NDC」に相当するのが「国家適応計画(NAP)」で、脆弱性の低減、適応能力・回復力の構築、国家レベルの政策・計画への気候適応の組み込みなどのアプローチを詳述している。適応の分野では、開発途上国への支援が強く求められており、歴史的に最も排出量を出してきた先進国の責任として捉えられている。
気候資金については、2009年にコペンハーゲンで開催されたCOP15において、先進国は、気候変動への適応とさらなる気温上昇に対する緩和対策を支援するために、2020年までに年間1,000億ドルを開発途上国々に提供することを約束した。この資金の約束はまだ達成されておらず、2015年からこの目標に向けた進捗を追跡調査しているOECDは、先進国が拠出した公的・民間資金の額は、2021年には約830億米ドル(約12兆円)に相当すると推定している。COP27では、開発途上国の気候変動対策をさらに支援するため、先進国の約束の履行が期待される。
なぜCOP27が重要なのか?
気候変動に関する世界的な科学的権威であるIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)は、世界は今、特別に危険な領域にあると述べている。気候変動は、地球環境、私たちの生活、私たちの幸福、そして私たちとこの世界を共有する他のすべての生物種の健康に対する差し迫った脅威である。その影響は、エネルギー、水、食糧、そして人間と生態系の健康における問題を悪化させている。世界人口の約半数が気候変動の影響に対して「非常に脆弱」であり、脆弱性の高い地域の人々は、脆弱性が非常に低い地域に比べて、洪水、干ばつ、暴風雨によって死亡する可能性がすでに15倍も高くなっていると報告している。
国連環境計画(UNEP)は最近、地球温暖化の最悪の影響を抑え、気候災害を回避するためには、緩和と適応の両面においてこの10年以内に根本的に変革する行動が必要であると報告している。UNEPは、昨年から更新された各国の誓約は、2030年の排出量予測に対してごくわずかな違いしかなく、地球温暖化を2℃以下、できれば1.5℃に抑えるというパリ協定の目標からはほど遠いと警告を鳴らしている。現在実施されている政策では、今世紀末までに2.8℃の気温上昇を予想している。現在の誓約を実施しても、今世紀末には2.4~2.6℃の気温上昇が起きてしまう可能性がある。これは、長期的な誓約と短期的な行動の間に大きなギャップがあることを示している。この緊急性は、COP27での各国召集でも認識されている。
COP27 は、締約国とオブザーバーが一堂に会し、全人類に影響を及ぼす課題に取り組む貴重な機会である。COP は世界的に複数の危機が重なる中で開催されるが、気候変動対策と多国間・多部門協力は、食糧、エネルギー、自然、安全保障に関する効果的な前進方法を提供し、これらの問題に対する国際対話と協力の重要なネクサスとなり得るものである。
COP27は何を目指しているのか?
<1 緩和>
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