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日本における石炭アンモニア混焼戦略の経済性

日本の電力会社は二酸化炭素排出量を削減するため、既存の石炭火力発電所の改修によって石炭とアンモニアの混焼を目指している。しかし、BloombergNEF(BNEF)はアンモニア混焼が電力部門における二酸化炭素排出を削減する戦略として経済的でないと報告している。

脱炭素戦略としてのアンモニア混焼

日本は2050年までに二酸化炭素の排出量をネットゼロにするという長期目標を設定したことにより、電力部門の脱炭素化が急務となった。電力供給に占める石炭火力発電の割合は依然として30%と高く、2030年には19 %に削減することが目標となっている(第6次エネルギー基本計画)。

日本政府は石炭新発電技術を導入することで既存の火力発電をゼロエミッション発電に転換し、石炭に由来する排出量を削減する計画を発表した。

石炭新発電技術の一つに石炭とアンモニアの混焼がある。窒素と水素からなるアンモニアは燃焼により二酸化炭素を排出しないことからゼロカーボン燃料として注目されている。しかし、アンモニア混焼の排出量削減効果と経済性は他の再エネ電源と比較した場合はどのように評価されるのでしょうか。

グレー・ブルー・グリーンアンモニアの区分

アンモニア混焼はゼロエミッション電源の一種として位置付けられる一方で、アンモニアの製造過程によってライフサイクル排出量の観点から大きな違いがある。

グリーンアンモニア:再生可能エネルギーを用いて水の電気分解により製造を行うもので、製造過程で温室効果ガスを全くまたはほとんど排出しない。

ブルーアンモニア:二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術と組み合わせ、メタンの水蒸気改質や石炭のガス化により製造される。排出量はグリーンアンモニアより多く、グレーアンモニアよりは少ない。

グレーアンモニア:CCS 技術を用いず、メタンの蒸気改質や石炭のガス化により製造される、現在最も一般的な方法で、大量のCO2を排出する。

燃料製造の排出量を加味した場合の削減効果

アンモニアの混焼率とアンモニアの種類によってアンモニアの製造と発電における二酸化炭素排出量が異なる。アンモニア専焼 においてグリーンアンモニア、ブルーアンモニア、グレーアンモニアでは二酸化炭素排出削減量がそれぞれ100 %、92%削減、24 %となる。一方アンモニア20 %混焼ではそれぞれ20 %、18 %、4 %の削減量となる。このことから、二酸化炭素削減効果が最も高いのはグリーンアンモニアを燃料とした100 %アンモニア専焼となる。また、電力部門の脱炭素化を目指すならば、グリーンまたはブルーアンモニアを主原料にする必要がある。

脱炭素に向けたアンモニア混焼の経済性

BNEFの分析では、石炭火力発電所改修の平準化発電コスト(LCOE)を、日本産のグリーンアンモニア、オーストラリアからの輸入グリーンアンモニア、中東からの輸入ブルーアンモニアによる、3 種類のアンモニアに基づいて試算している。

現在、グリーンアンモニアのコストを押し上げているのが高価な電気分解装置である。また、オーストラリアから輸入されるアンモニアに比べて、国産のアンモニアが割高なこともコスト高の要因となる。しかし、電気分解装置と再生可能エネルギーのコストは 2050年に向けて低下し、これに伴いグリーンアンモニアのコストも低減する見込みである。一方で、天然ガス改質はすでに確立されたプロセスであることから、中東から輸入されるブルーアンモニアのコストは 2024年から2030年にかけてほぼ横ばいに推移するとみられる。2030年から2050年にかけても、ブルーアンモニアのコスト低下はグリーンアンモニアと比較すると限定的となる見通しだ。背景には、将来的な天然ガス価格の高騰が排出削減費用の縮小分を相殺してしまうことなどがある。

JERAが20%アンモニア混焼の実証試験完了を目指す 2024年には、

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