二酸化炭素(CO2)の社会的費用(SC-CO2またはSCC=social cost of carbon)は、1トンの二酸化炭素排出が社会にもたらす損害を貨幣換算して評価したもので、その費用はCO2トン当たり185米ドル(約26,000円)に推計されると最新の研究結果でわかった。
人為的気候変動は極端な異常気象をもたらしており、熱波や洪水の頻度と強度の高まりによる作物生産への直接被害や生産性の低下、インフラの破壊や健康被害・疾病などをもたらしている。しかし温室効果ガスの放出に伴うこうした外部費用は市場価格に反映されておらず、温室効果ガス排出削減対策の有効性が過小評価されている。言い換えれば、社会への損害を考慮した場合、汚染者は温室効果ガス1トンにつき26,000円支払うべきである。個人の消費行動を考えた時に、最も温室効果ガス排出量の多い食べ物として知られる牛肉の生産で1キロあたりで平均100キロCO2が放出されるとした場合、牛肉1キロあたりにSCC 2600円を追加的に支払うことになる。首都圏の和牛カタセット相場の3,300円/キロに対して、約8割増となる。
このように、適切なSCCが市場価格に反映されたら、温室効果ガスを大量に放出するものを控え、排出量ゼロの製品やサービスへの投資を大きく促すシグナルとなる。
SCCは広くエネルギーに関連する公共事業の費用便益分析・規制影響分析にも用いられる重要な指標として、注目を集める。オバマ政権は3%の割引率を用い、2020年時点での炭素価格を1トンあたり51ドルと推計していたが、気候変動対策に消極的のトランプ政権では炭素価格がトンあたり1ドル程度に引き下げられ、バイデン大統領の就任後に再びオバマ政権並みにSCCの推定価値に戻した。
10年以上にわたって米国政府をはじめ国際機関などが便益費用分析に使用してきたSC-CO2の推定値は、気候科学、経済学、人口学などの分野を活用している。しかし、現在のSCC推定値がもはや最新の研究を反映していないことが問題視され、今回の新たな研究調査が行われた。
米国政府が取り入れるSCCの3.6倍高い
今回、総合科学ジャーナルのネイチャーで9月1日に公開された研究では、
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