ThinkESGプレミアム会員限定

気候変動リスクが企業価値を左右する現在、エネルギー構造の転換を捉えることはESG投資の最重要課題である。2025年、太陽光の爆発的普及によりクリーン電力が新規需要をすべて吸収し、ついに再生可能エネルギーが石炭火力を逆転した。本記事では、英シンクタンクEmberの最新レポート「Global Electricity Review 2026」を基に、世界の電力市場が迎えた歴史的転換点を詳解する。*1

レポートのハイライト:化石燃料の停滞と太陽光の躍進

記録的な太陽光発電の成長により、クリーンな電力源が2025年のすべての新規電力需要を満たすのに十分な速さで拡大し、結果として化石燃料発電の増加を完全に食い止めた。化石燃料による発電量が増加しなかったのは2020年以来であり、今世紀に入ってからはわずか5回目の出来事である。これまで世界の化石燃料発電増加を歴史的に牽引してきた中国とインドの両国においても、2025年は化石燃料発電の減少を記録した。両国では記録的なクリーン電力の導入が需要増加を上回り、これが世界の化石燃料発電の純成長を停止させる原動力となった。

太陽光発電は、世界の電力セクターに変化をもたらす最大の推進力としての地位を確固たるものにし、その記録的な成長は2025年の電力需要の純増分の実に4分の3を賄った。この太陽光の増加量は、2025年に唯一増加した化石燃料であるガスの18倍に達する規模である。現在、世界の太陽光発電量はEU全体の総電力需要に匹敵する規模にまで成長している。

中国は再び太陽光発電の建設を牽引し、2025年における世界の太陽光発電容量および発電量増加分の過半数を占めた。これにより、中国の発電ミックスにおける太陽光と風力のシェアは22%へと跳ね上がり、OECD平均(20%)を凌駕した。インドもまたクリーン電力の導入を急加速させている。再生可能エネルギーの成長は過去の記録を倍に更新し、初めて米国を上回る新規太陽光発電容量を導入した。

図【2025年には、クリーン電力の成長が世界の電力需要の増加を上回り、化石燃料発電を横ばいに維持した】

出典:Ember、Global Electricity Review 2026

もう一つの世界的なマイルストーンとして、2025年に再生可能エネルギーが石炭火力を逆転した。太陽光、風力、水力などを含む再生可能エネルギーの合計が世界の発電量に占める割合は、近代の電力システムにおいて初めて3分の1を突破した。対照的に、石炭火力のシェアは歴史上初めて3分の1を割り込んでいる。

太陽光発電の導入加速はバッテリー蓄電の普及と並行して進んでおり、「日中の太陽光」から「いつでも使える太陽光」への次なるパラダイムシフトを実現しつつある。バッテリーコストは2024年に20%下落したことに続き、2025年にはさらに45%下落するなど、2年連続で急激に低下した。その結果、導入量は46%増の推定250 GWhに達し、世界全体で2025年の新規太陽光発電量の14%を日中から他の時間帯へシフトさせるのに十分なバッテリー容量が設置された。

チリやオーストラリアに代表される先駆的な国々は、2025年の新規太陽光発電の50%以上をシフト可能なグリッドレベルの蓄電システムをすでに配備しており、電力価格の低下や出力抑制の削減といった恩恵をすでに享受し始めている。

重要なポイント

ここから先は「ThinkESG プレミアム」会員限定の
コンテンツです。

4つの特典が受けられる「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」の詳細についてはこちらをご覧ください

「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」へはこちらからお申し込みいただけます

「ThinkESG プレミアム」会員の方はログインしてください。

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2026/4/29

再エネが石炭を逆転、グリーン電力新秩序の全貌

気候変動リスクが企業価値を左右する現在、エネルギー構造の転換を捉えることはESG投資の最重要課題である。2025年、太陽光の爆発的普及によりクリーン電力が新規需要をすべて吸収し、ついに再生可能エネルギーが石炭火力を逆転した。本記事では、英シンクタンクEmberの最新レポート「Global Electricity Review 2026」を基に、世界の電力市場が迎えた歴史的転換点を詳解する。*1 レポートのハイライト:化石燃料の停滞と太陽光の躍進 記録的な太陽光発電の成長により、クリーンな電力源が2025年 ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2026/4/25

大西洋の主要海流「AMOC」に崩壊の兆候

大西洋の気候を司る巨大な生命維持システム「大西洋南北熱塩循環(AMOC)」が、これまでの予測を上回る速さで崩壊に向かっている可能性が明らかになった。*1 最新の研究は、今世紀末までにこの海流が50%以上という壊滅的な確率で減速し、人類を極寒の冬と深刻な干ばつに陥れるリスクを警告している。*2 海流を止める「淡水流入」と科学的な早期警戒シグナル AMOCは、熱帯の温かい海水を北ヨーロッパへ運び、冷えた海水が深海へ沈み込むことで循環を維持している。しかし、地球温暖化に伴うグリーンランドの氷床や北極の氷の急速な ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2026/4/19

AIデータセンターが引き起こす「見えない水危機」

生成AIの爆発的普及は、社会を劇的に進化させている一方で、その物理的な稼働を支えるインフラに多大な負荷をかけている。AIの学習と推論を支えるデータセンターは、これまで主に「電力消費」と「炭素排出」の観点から議論されてきた。しかし、その裏側で、施設の冷却に不可欠な「水」の大量消費が、新たな地球規模のリスクとして浮上している。 米国の投資家団体Ceresのミンディ・ラバーCEOが指摘するように、データセンターの成長スピードは異常な速さに達しており、それらをいかに構築し、いかに電力を供給するかが、企業の存続を左 ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2026/4/25

ESGは「義務」から「戦略」へ、2026年のトレンドを徹底解説

2026年のESG対応およびサステナビリティ経営は単なる規制対応の枠を超え、企業経営そのものに深く組み込まれる段階に入っている。 各国の規制は統一されるどころか分断が進み、企業は複雑なルールの中で意思決定を迫られている。さらに、人権・循環経済・AIといった新領域が急速に制度化され、ESGの範囲は拡張している。本記事では、2026年におけるESGの主要4領域を体系的に整理し、その本質的な変化を解説する。 1/気候変動関連の情報開示の義務化と「規制の分断」 2/人権デューデリジェンスの義務化とサプライチェーン ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2026/4/11

石油依存の限界と電化の台頭: ホルムズ海峡危機が示す構造転換

イラン戦争をはじめとする中東情勢の緊迫化により、石油に依存するエネルギー安全保障の脆弱性が改めて浮き彫りとなっている。特にホルムズ海峡のリスクは、世界経済がいかに化石燃料輸入に依存しているかを示した。 本記事では、シンクタンクEmberの最新レポート*1 をもとに、化石燃料依存の構造的問題と電化技術の可能性を整理する。 化石燃料依存の脆弱性が露呈 ホルムズ海峡は世界の石油およびLNG(液化天然ガス)の約20%が通過する極めて重要な輸送ルートである。この海峡の封鎖は、単なる地域問題ではなく、世界経済全体に波 ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2026/3/27

アジアのグリーン企業トップ50社ランキング

アジア太平洋地域では、低炭素ビジネスを展開する企業が急速に増えている。しかし、一般的な株価指数はそうした「グリーン経済」の実態を十分に反映していない。Corporate Knightsが発表した最新ランキングは、そのギャップを浮き彫りにした。アジアのグリーン企業はどの分野で成長しているのか、そして投資家は何を見落としているのか。本記事ではその全体像を整理する。 アジア太平洋のグリーン先進企業が浮かび上がる アジア太平洋地域には、世界でも特に意欲的な低炭素企業が数多く存在している。一方で、一般的に使われてい ...

ESGニュース ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2026/3/21

中東戦争が加速させる「経済安全保障としての脱炭素」

中東戦争の激化は、原油価格を押し上げるだけの出来事ではない。ホルムズ海峡という世界の石油・天然ガス輸送の要衝が不安定化し、産油・産ガス設備への攻撃リスクも高まることで、各国にとってエネルギー供給そのものが安全保障上の問題として再浮上している。ロイター通信は、イラン危機を受けて海運と生産の両面で混乱が広がり、欧州ではガス価格が戦争開始前の約2倍に達したと伝えている。こうした状況の中で強まっているのは、「環境のための脱炭素」ではなく、「高価で不安定な輸入化石燃料への依存を減らすための脱炭素」という発想である。 ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2026/3/21

生物多様性の崩壊は国家リスクに「自然安全保障」の概念

近年、生物多様性の危機は環境問題の枠を超え、国家安全保障や経済安定に関わる課題として議論され始めている。食料、水資源、感染症、エネルギーなど、多くの分野が自然環境に依存しているためである。2026年に入ってからも、英国政府や国際機関が、生態系の劣化を安全保障リスクとして分析する報告を相次いで公表した。本記事では、生物多様性の危機と安全保障との関係を整理する。 自然の劣化は国家安全保障リスクになりつつある 2026年1月、英国政府は「Nature Security Assessment(自然安全保障評価)」 ...

ESGニュース ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2026/3/20

自然の劣化が企業利益を直撃する時代へ

自然は経済活動を支える基盤資本である。企業の事業継続性や収益構造は、生態系サービスという見えにくいインフラに支えられている。 環境・エネルギー課題に特化したシンクタンクZero Carbon Analyticsの最新の調査*1は、自然の破壊が企業にもたらす財務リスクの構造と規模を整理する。世界経済の約55%が自然に依存する現実を踏まえ、水資源、安定した気候や生物多様性の劣化が企業収益やサプライチェーンにどのように波及するかを明らかにする。あわせて、将来予測される損失規模を示し、自然保全を経済合理性の観点か ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2026/2/19

気候変動が冬季オリンピックの開催を難しくしている?

冬季オリンピックは、雪と氷という自然条件を前提に成立してきた大会である。しかし近年、気温上昇や降雪量の減少により、その前提そのものが揺らいでいる。2026年2月6日〜2月22日に開幕中のミラノ・コルティナ大会では、競技用雪の大部分が人工的に補われている。人工雪は大会を支える一方で、安全性や資源負荷という新たな課題も浮き彫りにしている。本記事では、複数の報道や研究をもとに、冬季オリンピックが直面する現実を整理する。 冬季オリンピックは、制約の中で開幕した 2026年2月6日、イタリアでミラノ・コルティナ冬季 ...

© 2026 ThinkESG