ESGブログ・意見

2025年10月17日、東京国際フォーラムで「NATURE TECH!」が開かれた。技術革新と自然再生を結びつける取り組みが紹介され、世界で注目が高まるネイチャーテックの動向が共有された。投資規模は約3000億円に拡大し、衛星やドローンによる自然の計測技術や、熊本など地域単位で自然を守る取り組みの重要性が示された。日本は今後、自然計測の国際標準化を主導していく方針を掲げている。*1

ネイチャーテックとは?

ネイチャーテック(Nature Tech)とは、自然を測定・評価・再生・活用するための技術群である。国際的には、「自然を基盤とする解決策(NbS)を支援するために、自然をモニタリング(Monitoring)・報告(Reporting)・検証(Verification)する技術を総称したもの」と説明されている。*2 具体的には、衛星観測、AI、IoTセンサー、ドローン、DNA解析、データプラットフォームなどを活用して、森林、海洋、土壌、水循環などを可視化・管理する仕組みが代表的である。

またネイチャーテックは最先端技術だけでなく、野焼きなどの伝統的知恵も含む広義の概念であり、地域の自然を再生するには「企業間で共通の課題認識と目標を持つこと」が重要だと、国際自然保護連合(IUCN)日本委員会の道家哲平氏は強調している。*1

つまり、ネイチャーテックは「自然を守るためのテクノロジー」ではなく、自然の状態をデータとして見える化し、その価値を定量的に示す仕組みを指す。

なぜネイチャーテックが必要?

2022年の国連「ネイチャーポジティブ(自然再興)」目標採択を契機に、企業や金融機関には事業活動の自然への影響とリスク・機会の開示が求められている。IUCN日本委員会会長道家哲平氏によれば、2024年時点でネイチャーテック関連産業への投資は約20億ドル(約3000億円)に達し、200件以上の取引が確認されている。*1

こうした流れの背景には、世界的に生物多様性の減少の危機に向き合うために主に3つのトレンドが関わっている。

  • 自然資本を経済システムに組み込む世界的潮流
  • TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)など国際的な枠組み
  • サプライチェーン全体の環境負荷の見える化・削減の必要性

日本もまた、自然の「測定・評価」の標準化を主導し、2026年7月に熊本市で開催予定の第2回グローバルネイチャーポジティブサミットで国際指標化を目指している。*3

ネイチャーテックの導入・実践の例

国内

  1. 熊本県阿蘇地域の水循環モニタリング *1、*4

ここから先は「ThinkESG プレミアム」会員限定の
コンテンツです。

4つの特典が受けられる「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」の詳細についてはこちらをご覧ください

「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」へはこちらからお申し込みいただけます

「ThinkESG プレミアム」会員の方はログインしてください。

ESGニュース ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2025/10/25

世界で注目が高まるネイチャーテックを徹底解剖

2025年10月17日、東京国際フォーラムで「NATURE TECH!」が開かれた。技術革新と自然再生を結びつける取り組みが紹介され、世界で注目が高まるネイチャーテックの動向が共有された。投資規模は約3000億円に拡大し、衛星やドローンによる自然の計測技術や、熊本など地域単位で自然を守る取り組みの重要性が示された。日本は今後、自然計測の国際標準化を主導していく方針を掲げている。*1 ネイチャーテックとは? ネイチャーテック(Nature Tech)とは、自然を測定・評価・再生・活用するための技術群である。 ...

ESGニュース ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2025/9/19

TICAD9から見るESG投資でつなぐ日本とアフリカ

アフリカの未来をめぐる国際的関心が高まる中、日本は持続可能な協力の新たな方向性を示している。 2025年8月に横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)は、その象徴的な舞台となった。会議では「協働」と「質の高い成長」が掲げられ、単なる援助からESG投資を通じたパートナーシップへの転換が打ち出された。 アフリカ初のESGサムライ債の発行や太陽光発電の急速な普及は、この新潮流を裏付ける具体的成果である。本記事では、TICAD 9の意義と日本・アフリカ協力の新たな潮流、そしてESG投資がもたらす展 ...

ESGニュース ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2025/8/25

EU、2040年温室効果ガス90%減、約4億トンの炭素クレジットの活用も

7月に、欧州委員会は1990年を基準年とする2040年までのEU全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を90%と提案した。これは、EUの2030年排出量削減目標55%と2050年までのネットゼロ目標の中間的な重要なマイルストーンとなる。新たな2040年目標には一定の柔軟性が組み込まれており、パリ協定に準拠した国際的な炭素クレジットの限定的な使用を認めている。本記事では、この目標が投資家と産業に与える影響を詳しく分析する。 2030年と2050年の気候変動目標とは異なり、提案された2040年気候目標に ...

ESGニュース ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2025/8/25

プラスチック汚染終息を求めた国際会議は失敗?

プラスチック汚染を根絶するための世界初の法的拘束力ある条約を最終決定する重要な交渉の場である国連会議が、2025年8月5日から14日までスイス・ジュネーブで開催された。本記事では、プラスチック汚染の現状、国連会議の結果等を解説する。 気候変動と環境汚染の両方の原因としてのプラスチック プラスチック生産は気候変動の主要因の一つであり、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の3〜5%を占めている。これは航空セクターと同等の規模であり、今後介入がなければ2050年までにその生産量は2倍から3倍に増加すると予測されて ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2025/3/23

DEIと政治的対立 ~米国での反DEIの動き~

トランプ大統領が就任直後の2025年1月20日、21日に、DEIに関連する大統領令を発布した。これによる連邦政府、企業、大学への影響はどうなるのか、発令から1ヶ月以上たった今どんな変化が起きているのか、今後どのような事態が予測されるのかを本記事にて紹介する。 DEIとはなにか DEI(Diversity, Equity, and Inclusion)とは、多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)の略で、異なる背景を持つ人々が平等な機会を得て活躍できる環境を構築する ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2025/1/19

2025年のESG展望~サステナビリティの重要な年に向けて~

気候変動の影響が顕著化する中、年々異常気象や自然災害が増加しており、環境への取り組みが各国で優先事項となってきている。 一方で、近年、各国の金融センターでは、サステナブル・ファイナンスの方針が見直されている。石油・ガス価格の高騰やエネルギー安全保障の優先が影響し、特に米国ではサステナブル・ファイナンスが困難に直面している。 金融セクターは、将来のエネルギー転換を支える道を選ぶのか、それとも現在のエネルギー需要に押し流されるのか?本記事では、2025年におけるサステナブル・ファイナンスに関する7つの予測(* ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2024/5/29

企業のESG努力の欠如が離職原因に

コロナ禍では、リモートワークへの移行、生活の中の優先順位の変化、そして辞職する従業者が顕著にみられるなど、多くの企業は優秀な人材をよりよく採用し、雇用を継続する方法を再考する必要に迫られた。今、叫ばれているのは、「気候退職者 (英:Climate Quitting)」だ。*1 労働用語集に最近追加されたClimate Quitting (気候退職者) とは、雇用主がESGへの取り組みの期待を満たしていないと感じたために仕事を辞めたり、内定を断ったりする従業員を指す。*2   マッキンゼーによる2023年の ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2024/5/12

サステナブル・ツーリズムの可能性

新型コロナのパンデミックからの復帰に伴い、日本の国内観光とインバウンド観光が回復し、新たな高みに達した。日本政府観光局(JNTO)によると、3月の推定訪日外国人旅行者数は308万人に急増し、2019年同月比で11.6%増と顕著な伸びを示し、1964年の記録開始以来、月間最高を記録した。 しかし、観光客の増加が地域経済を活性化させる一方で、差し迫った懸念も再燃している。結果として生じるオーバーツーリズム(過剰観光)は、地域住民の日常生活に害を及ぼすだけでなく、観光が依存する環境資源にも多大なストレスを与え、 ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2024/4/4

アウトドア・ブランドのPFAS問題への取り組み

ランニング、ハイキング、登山、ウィンタースポーツが好きな人は多いだろう。しかし、着ているアウトドアウェアが「永遠の化学物質」で作られていたり、コーティングされていたりする可能性があることを知っている人はどのくらいいるだろうか。*1 PFAS問題への対策は、世界的に有名なアウトドア・ブランドや関連サプライヤーが数多く存在する日本にとっては、死活問題だ。代替品を見つけるのが非常に難しいだけではなく、国内規制が遅れていることを理由に、あらゆる業界の日本企業はPFASフリーへの圧力への対応が全体的に遅れている。し ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2024/2/21

AIは社会課題を解決できるのか。責任あるAIの導入方法

Siriやアレクサ、ChatGPTなど私たちの周りには多くのAI機能を掲載した製品が溢れている。社会貢献を通して、より多くのことを実現し、より多くの人々を助けるために、テック企業、NGO、社会的インパクト・セクター全体が、急速に拡大する人工知能の可能性をどのように責任を持って社会問題の解決のために活用できるか、奮闘している。一方で、拡散されるフェイクやバイアス、所有権問題などAI導入における課題は多岐にわたる。 本記事では、社会問題の解決のためのAI導入について、利点と欠点、課題と規制、AIの社会貢献の具 ...

© 2025 ThinkESG