ブラジル議会が、ブラジルの環境許可制度を弱体化させる法案を7月17日の未明に可決した。この法案は、自己承認型の許可制度を導入し、決定権を地方の政治家に委ねる内容となっている。
新法は、鉱山ダムなどの大規模企業に対する重要な影響評価を緩和し、数百の先住民と国の奴隷文化の最後の痕跡であるキロンボラコミュニティを脅かす可能性がある。
この法案の可決は、ルラ大統領と右派主導の国会との間の継続的な政治危機の真っ只中で行わた。NGOや環境保護団体はこれを「破壊法案」と称し、過去40年間で最も重大な環境後退と位置付けている。最終投票結果は267対116で可決されたこの法律は、自然資源を使用し、環境や地域社会に損害を与える可能性があるすべての企業に義務付けられている環境許可制度のルールを複数変更する。
ブラジルの環境・気候変動大臣であるマリーナ・シルバはインスタグラムで、この法案が「国の主要な環境保護手段の一つを致命的に傷つける」と述べた。法案の最も議論を呼ぶ点の一つは「同意と約束に基づく許可」制度で、プロジェクトはオンラインフォームを記入するだけで承認される仕組だ。
大規模開発を優遇、地域コミュニティーを犠牲に?
国際環境NGOのWWFは、この新ルールにより約80%の事業が恩恵を受けると推計しており、鉱山ダムのような大規模インフラプロジェクトも対象となる。「だからこそ、私たちはこれが環境許可制度の終焉だと主張するのです」 とWWFブラジル環境保護専門家のアナ・カロリーナ・クリソストモ氏はモンガベイにコメントした。
この法案は、連邦政府が「戦略的」と認定したインフラプロジェクト(アマゾン沿岸の石油探査や、ロンドニア州とアマゾナス州の州都を結ぶBR-319高速道路の改修など)に特別な環境許可証を創設する。後者のBR-319高速道路は40の保護区域と50の先住民地域に影響を及ぼす可能性がある。「これは掠奪的なセクターを優遇するプロジェクトであり、ブラジルの環境立法における数十年の進展を破壊するものです」と、下院の環境議員団調整役であるニルト・タット議員が述べた。
新たな立法は、連邦政府によって完全に所有権が認められていない先住民とキロンボラコミュニティ(奴隷化された黒人の子孫が住む地域)の数百のコミュニティへの影響を考慮する必要を事業者に免除する。ブラジルの人権団体「インスティトゥート・ソシオアメンタル」によると、先住民の居住地域の32.6%とキロンボラコミュニティの80%が影響評価の対象から除外されることになる。
国連気候変動会議COP30主催国ブラジルの評判リスク?
国際的にも批判材料になりうる同法案は、ブラジルがアマゾン地域のベレン市で国連の気候変動サミットCOP30を開催する4ヶ月前に可決された。ブラジル科学振興協会は、この法案が「ブラジルの気候変動の緩和と適応に関する国際的な取り組みにおけるリーダーシップ役割に疑念を投げかける」と指摘している。市民社会連合「気候観測所」は、外務大臣マウロ・ヴィエラ宛ての書簡で、この法案がブラジルの国際的な約束を脅かし、メルコスールと欧州連合(EU)間の貿易協定の締結を危うくする可能性があると指摘した。
国内ステークホルダーから様々な意見
法案の承認前には、アニッタのような国際的なポップ歌手を含む著名なブラジル人アーティストが参加するソーシャルメディアでの激しい反対キャンペーンが展開された。法案支持者は、
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