5月21日に行われたオーストラリアの選挙では、有権者が長年にわたる石炭推進の保守連合政府を見捨て、野党・労働党が9年ぶりに政権をとった。有権者は気候変動への対策強化を支持する候補者を大量に支持したことから、「グリーンスライド(緑の地滑り)」とも呼ばれている。
気候変動への取り組みを強化すると約束した労働党は、全体で最も多くの議席を獲得したが、単独で過半数を形成できるかどうかは不明である。彼らのリーダーであアンソニー・アルバネーゼは、5月23日、首相に就任した。しかし、大きな驚きは、より野心的な気候変動対策を主張する緑の党といくつかの無所属候補が、両大政党から奪った議席数が過去最高となったことである。
まだ開票中だが、緑の党は下院151議席中4議席、上院76議席中12議席を獲得する見込みで、これは過去最高の成績である。また、下院の9議席は、元保守連合党員や都心部の女性プロフェッショナルが多く立候補者となり気候変動に重点を置く無所属の独立系候補が獲得している。
集計終了後の労働党の正確な獲得議席数によっては、緑の党と無党派層が議会のパワーバランスを握る可能性がある。
緑の党のリーダーであるアダム・バンド氏は、この結果を「グリーンスライド」と呼び、投票が義務付けられているオーストラリアの人々が「気候変動に関する行動への委任をもたらした」と述べた。
「これは我々の歴史の中で最高の結果である。これまでで最も多くの人々が緑の党に投票しました。
皆さんは、次の政権が気候変動と不平等に対して、さらに速く行動することを望んでいることが明らかです。」
- アダム・バント (@AdamBandt)
キャンベラにあるオーストラリア国立大学のマーク・ハウデン教授は、「オーストラリア国民が、気候変動にもっと真剣に取り組む必要があると考えていることを、はっきりと表明したのだと思います」と述べている。
オーストラリアは、既得権益のために化石燃料からの脱却が遅れていることで知られている。オーストラリアは世界第3位の石炭埋蔵量を誇り、現在でも電力の76%を化石燃料に依存している。また、石炭の輸出により今年度に年間約1,000億豪ドルを稼ぐ見通しである。
オーストラリアの自由党と国民党からなる保守連合は、政権を担っていた9年間、経済的に採算が合わなくなった石炭発電所の閉鎖を積極的に延期しようとしてきた。退陣するスコット・モリソン元首相は、国会に石炭の塊を持ち込んで、こう発言したことがある。「これは石炭です。Don't be afraid. 怖がらないで。あなたを傷つけることはありません 」と。
しかし、3年間続いた異常な干ばつ、森林火災、洪水によって、オーストラリア人は気候変動をますます恐れ、変化への不安を募らせていることが今回の結果につながっているという。
労働党は、オーストラリアの2030年の温室効果ガス排出量削減目標を、2005年比で26-28%から43%に引き上げることを約束した。同党は、
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