はじめに
世界的な人口増加や食料不足、農業従事人口減少、食料廃棄の現状から、世界的に「食産業」のサステナビリティ課題が問題視されている。そんな中、課題解決に挑むアグリテックやフードテック企業が投資家の注目を集めている。日本においても、「スマート農業」と呼ばれる新技術や、代替肉商品や人工知能AIを活用したシステムの導入が進展している。今後、アグリテック・フードテック産業の成長余地は大きいと想定されており、農業の持続可能性を支える分野として、日本を含む世界のESG投資家はこうした関連株式に投資する傾向が高まってきている。今回のブログでは、2022年に取り組むべきESG課題として、「食産業」に焦点を当て、アグリテック・フードテック分野で活躍中の日本企業やベンチャーの最新事例や、関連する投資信託をまとめる。
1. 未来を牽引する「アグリテック」とは?
昨今、世界的に「アグリテック」という農業技術が進展してきている。ICT Business Online の定義によると、アグリテックとは、IoTやビッグデータ、ドローンを用いるなど、農業領域でICT技術を活用することをアグリテックと呼ぶ。AgriTechはAgriculture(農業)とTechnology(技術)を組み合わせた造語であり、すでに数多くの製品やサービスが登場している。これにより、農場のモニタリングから食品のサプライチェーン自体まで、農業プロセスをより効率的にすることが可能になる。
World Government Summitが作成した報告書で分類されるアグリテックにおける3つの一トレンドは以下の通りである。
- 革新的なアグリテック技術:水耕栽培、藻類原料、バイオプラスチック、 砂漠農業、海水養殖
- フードチェーンにおける効率を向上する技術:垂直/都市型農業、遺伝子組換え、 培養肉、3Dプリンター
- 業界を横断する技術・用途 :ドローン技術、データ分析、精密農業、ナノテクノ、AI、フードシェアリング、クラウドファーミング、ブロックチェーン
アグリテックは、モノのインターネットやブロックチェーンなどの技術を使って廃棄物を削減し、消費される食品のトレーサビリティを向上させ、食品サプライチェーン全体に大きな影響を及ぼしているという。
また、農薬を必要としない方法で作物を処理するロボットが開発されていると英国リンカーン大学の農業食品技術教授であるサイモン・ピアソンは説明した。つまり、農薬を畑に散布する代わりに、機械が雑草のある場所を見つけ、穴を使って雑草を取り除くことができるのだという。さらに、レディング大学のローズ氏は、「ロボットは農業の持続可能性を高め、労働力不足などの問題を解決するために利用できる」と言います。ローズ氏は、イギリスのEU離脱後のイギリスでは、以前は移民による季節労働者が担っていたポストを埋めることが困難になっていると指摘したが、ロボット労働者であれば、これらの問題を解決できるという。
機械学習とAIにおいては、アグリテックの世界でも中心的な存在であるとピアソン氏は言う。ロボットやセンサーが土壌の状態や水位を把握して生産を最適化するだけでなく、ブロックチェーン技術と連携することで、食品のトレーサビリティを高め、廃棄物を減らすことができるようになると説明した。
このように、アグリテックは、食料システムの連鎖に沿った問題のいくつかを改善する可能性を持つ幅広い技術を包含しており、同時に、気候変動を食い止めることにも貢献することができるのです。
2. 日本における「スマート農業」
日本の農業の課題解決にはアグリテックの力が期待されている。
日本の農業おける大きな課題として大きく二つ上げられる。一つ目に、以下のグラフで示されているように、担い手の減少・高齢化の進行等による労働力不足問題が生じている。
*農林水産省資料(2021)から引用
二つ目に、人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、省力化、 人手の確保、負担の軽減が重要な課題となっている。
そこで、日本におけるアグリテックの意味を持つ「スマート農業」の導入が進められている。「スマート農業」とは、アグリテックと同じ「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」のことを指す。
スマート農業は、大きく三つの効果が得られるとされている。
- 作業の自動化:ロボットトラクタ、スマホで操作する水田の水管理システムなどの活用により、作業を自動化し人手を省くことが可能に
- 情報共有の簡易化:位置情報と連動した経営管理アプリの活用により、 作業の記録をデジタル化・自動化し、熟練者でなくても 生産活動の主体になることが可能に
- データの活用:ドローン・衛星によるセンシングデータや気象データの AI解析により、農作物の生育や病虫害を予測し、 高度な農業経営が可能に
それらのアグリテック・スマート農業分野で活躍する日本企業の最新事例を紹介する。
ーICT・ロボット技術の活用例ー
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