新型コロナウイルスをいち早く封じ込めたベトナムは、グリーンリカバリー(環境に配慮した経済復興)を導くために、パンデミック後の期間に炭素価格を導入する最初の途上国になりつつある。
ベトナムの国会は11月17日、排出権取引スキームを合法化する改正環境保護法を可決した。同法は2022年1月1日に実行される予定だ。
この政策は、パリ協定の目標達成に貢献し、ベトナムの温室効果ガス排出削減への取り組みを強化するものと期待されている。
炭素価格の設定は、ベトナムが再生可能エネルギーの潜在力をさらに活かし、ポストコロナの復興期に低炭素開発モデルへと転換するための道を開くものである。
同法は、政府が地域の状況に応じた炭素排出量取引制度を確立し、国際的な気候変動条約を遵守することを規定している。目標、期限、規制対象産業などの詳細は、後に政府の政令で特定される。
炭素価格を導入することで、ベトナムは欧州連合(EU)との自由貿易からさらなる利益を得る立場を強化することになる。さらに、国際的にベトナムのイメージを向上させる可能性がある。また、気候変動の影響や環境への負荷を軽減することで、持続可能な社会構築にも貢献する。
ベトナムは気候変動に対して非常に脆弱である。異常気象は激化し、より頻繁になっている。海面上昇は、沿岸地域の重要な経済圏を浸水させる危険性があり、潜在的に何百万人ものベトナム人が移住する可能性がある。
しかし、ベトナムの温室効果ガス排出量は急速に増加している。2009年から2019年までのベトナムの燃料燃焼によるCO2排出量の年平均成長率は約11%で、東南アジアでは最速だった。2019年、ベトナムは燃料燃焼からのCO2排出量が世界第22位、東南アジアではインドネシア、タイに次いで第3位となった。
炭素価格の最大のポイントは、温室効果ガスにコストをかけること。炭素価格が設定されていれば、市場経済は低排出の方向に自ら舵を切るインセンティブを持つことになる。
ベトナムの政策は、うまくいけば東南アジア諸国にも温室効果ガスの削減にコミットすることを奨励することになるだろう。ポストコロナに向けて、炭素価格を導入する最適な時期であり、より持続可能な経済へシフトさせるグリーンリカバリーのための基礎を築くことになる。
中国に続き、日本と韓国が2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言したのはベトナムの炭素価格導入に影響を与えたかもしれない。そしてバイデン政権下の米国のパリ協定への復帰は、世界的に脱炭素社会への移行をさらに加速させるだろう。
参考記事:
東アジアフォーラム(オーストラリア国立大学):https://www.eastasiaforum.org/2020/11/19/vietnam-pioneers-post-pandemic-carbon-pricing/