世界的に著名な環境保護NPO8団体が、2023年6月8日までシンガポールで開催されたエコスペリティ*1・ウィークにおいて、「東南アジア気候・ネイチャー・ベースド・ソリューション連合(SCeNe Coalition)」を発足した。SCeNe Coalitionは、高いレベルでのネイチャー・ベースド・ソリューションの提供および投資を、東南アジア地域全体で支援することを目的としたパートナーシップだ。
ネイチャー・ベースド・ソリューション(NbS)は、国際自然保護連合(IUCN)が提唱し、世界的に注目を集めている概念である。「自然に根差した解決策」と直訳され、IUCNの定義では「社会課題に効果的かつ順応的に対処し、人間の幸福および生物多様性による恩恵を同時にもたらす、自然の、そして、人為的に改変された生態系の保護、持続可能な管理、回復のための行動」とされている。気候変動や自然災害、人の健康など、社会を取り巻く課題は、しっかりと自然に根差して解決を目指しましょう、というのがNbSの狙いだ。*2
Nbsのトリプル・ベネフィット
特に今回のパートナーシップにおいてはNbSの持つ3つのベネフィット(トリプル・ベネフィット)が注目され、その促進が重要視されている。このトリプル・ベネフィットとは、①生態系を保護し、②持続的に管理し、③回復するための行動を指す。気候変動対策、生物多様性の保全、生態系に関わる地域社会や先住民の利益を同時に実現するように設計されている。
SCeNe連合は、NbSを迅速かつ大規模に活用し、地域全体の集団行動を促進することを目的として設立された。NbSの成功は、私たちが今日直面している気候危機への対応に極めて重要だという。SCeNe連合の共同議長であり、環境NGOザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)のアジア太平洋地域マネージングディレクターであるウィル・マックゴールドリックは、「私たちは、産業界、政府、学界、そして幅広いコミュニティから、同じ考えを持つパートナーにこの取り組みに参加してもらい、持続可能な未来の実現に向けて共に努力していきます。」と語っている。
環境保護NPO8団体の連合、BCG、Googleも支援
SCeNe連合は、世界的に有名な環境保護NPO8団体で構成されている。コンサベーション・インターナショナル(CI)、ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)、サステナブル・トレード・イニシアティブ (IDH)、バードライフ・インターナショナル、野生生物保護協会(WCS)、マンダイ・ネイチャー、世界資源研究所(WRI)インドネシア、WWF-シンガポール(世界自然保護基金シンガポール)。また、民間企業もこの取り組みに対してサポートを行っている。例えば、BCGはSCeNeおよびそのイニシアチブに対してアドバイスを提供している。Googleのフィランソロピー*3部門は、共にNbSツールを開発するための100万米ドル(約1.4億円)の基盤的支援を提供した。NbSツールは、環境保護の最前線で活動する組織がNbSプロジェクトを行う際、資金にアクセスする際の参入障壁を低くすること、また投資家のNbSプロジェクトへの投資支援をすることを目的としている。
SCeNe連合は、6月8日、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)APACイベント2023の一環として、このNbSツールのデモンストレーションを行った。 NbSツールの実演を通じ、地域の炭素市場エコシステムで活躍する参加者からフィードバックを得ることで、本ツールのターゲットユーザーであるNbSを導入する組織や投資家の実際のニーズに答えることを目指す。
NbSポートフォリオの構築へ
NbSツールは、次のバージョンではトリプル・ベネフィットの高いNbSプロジェクトを紹介する機能であるNbSポートフォリオを搭載し、NbSの成功事例について市場参加者に情報を提供するとともに、市場の需要や気候変動を東南アジアのNbSプロジェクトに適用することを可能にするアップデートを行う予定だ。NbSツールの現在のMVPバージョンは、
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