近年の世界的なや物価高騰やインフレなどは数十年来の高水準に急上昇し、世界経済の見通しは不安定な相場に見舞われている。
そんな中、膨大な資産を運用する資産運用会社は、短期的なボラティリティ(変動性)に捕らわれず、中長期の視点を持ちながら、世界的な社会・環境問題に対して重要な役割を果たすことができる。パリ協定、SDGs、国連のビジネスと人権指導原則、生物多様性などの国際枠組みは、財務リスクとリターンを超えて、投資の現実世界における影響に対する行動を取り入れたスチュワードシップアプローチを必要とし、これまで以上に運用会社は預かる資産を増やすことのみならず、社会的インパクトに資する積極的なスチュワードシップが求められている。
金融機関や投資家に対して責任投資の促進を行なっている非営利団体であるShareActionは、世界最大級の資産運用会社77社の責任投資方針と実践をランキング付けし報告書を公表した。それによって各社の責任投資への意欲、範囲、透明性を評価し、各社が主要な社会・環境リスクに対してどの程度保護されているかを判断するのに役立てることができる。
※責任投資とは、投資判断の際に環境・社会・ガバナンス(ESG)の問題を考慮し、企業や資産に影響を与えること(アクティブ・オーナーシップまたはスチュワードシップと呼ばれる)。
責任投資ランキング概要
各社のランク付けはガバナンス、スチュワードシップ、気候変更、生物多様性、社会問題の5つの領域における資産運用会社の責任投資パフォーマンスの総合評価として評価されている。
2023年の責任投資会社のトレンド
・責任投資へのアプローチについてAAまたはAの評価を受けた資産運用会社は4社のみで、資産運用会社の35%がDまたはE評価を受けた。
・セクター全体のパフォーマンスには大きなばらつきがあり、全領域で一貫して高いパフォーマンスを示している資産運用会社はごく少数であった。
・一部の資産運用会社は、2020年以降にパフォーマンスの急激な変化を示した。
・ランキングの低い資産運用会社には、多量の資産を運用する世界5大運用会社のうち4社が含まれる。
・パッシブ投資を実践する運用会社は、責任投資への主導的なアプローチを持つ可能性がある。
・特定の資産クラスを重視する場合でも責任投資を実践することが可能である。
・欧州の資産運用会社は、北米やアジア太平洋地域と比較してリードしている。
・5領域のうちいくつかの分野では改善が見られるものの、生物多様性は遅れが見られた。
責任投資家のトップランナー
多くの資産運用会社は、責任投資への取り組みに熱心に取り組んでいるのにも関わらず、責任投資への取り組みが不十分であった。わずか4社のみがAAもしくはAランクを獲得し、35 %の資産運用会社がDもしくはEランクとなった。AAおよびAを獲得したのはロベコ(オランダ)、 BNPパリバ・アセットマネジメント(フランス)、アビバ・インベスターズ(イギリス)、リーガル&ジェネラル・インベストメントマネジメント(イギリス)の順であり、欧州勢が責任投資の実践をリードすることが示された。他方で、最高ランクのAAAランクを獲得した運用会社はなかった。
ロベコはガバナンスとスチュワードシップでトップであり、気候変動、生物多様性、社会課題の分野については上位にランクインした。BNPパリバ・アセットマネジメントは全ての分野でトップ10入りし、気候変動、生物多様性、社会課題の分野の総合スコアはトップであった。アビバ・インベストメント、AXA・インベストメントマネジャー、リーガル&ジェネラル・インベストメントマネジメント、シュローダーズ、スウェドバンク・ロブルは各分野でトップ25に位置した。
三菱UFJはトップ50外
多くの運用会社はそれぞれの分野について高い評価も低い評価を受け、改善できる分野が示された。Eファンド・マネジメント、 フランクリン・テンプルトン、三菱UFJ、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、ヴァンガード、ヴォントベル・アセットマネジメントは全分野でtop50の外にランクし、三菱UFJは全ての分野で最低評価を受けた。
地域ごとの特徴
世界全体ではヨーロッパの資産運用会社がランキング上位を占め、アメリカとアジア太平洋が続いた。特に、ガバナンス・スチュワードシップ・気候変動分野ではトップ10が全てヨーロッパの運用会社であった。
他の地域と比較してヨーロッパの運用会社が高いランキングに入った主要な理由はEUで2021年に発効した欧州のサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)によって投資機関の情報開示が進み、透明性が向上したことにあると考えられる。
北米の運用会社はランキングが総じて低く、気候変動分野の評価の低さが目立った。
アジア勢でランクの上半分に入ったのはわずか2社
上半分にランクインしたアジアの運用会社のどちらも日本企業であった。
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