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インドもネットゼロ目標に踏み切るか?国内の議論が浮上

今年11月にグラスゴーで開催される国連気候変動会議(COP26)に向けて、インドは今世紀半ばまでに温暖化ガス排出量を実質ゼロにするという目標を発表した国々に加わるのか、また加わるべきなのかについて、インドの政策当局が激しい議論を展開している。

気候危機の深刻な影響がすでに感じられている今、温室効果ガス「ネット・ゼロ」の目標は心強いものに聞こえる一方で、専門家は、達成が難しく、インドの経済的な発展に長期的な影響を与えると指摘している。

世界的に高まる圧力

国連によるとこれまでに100カ国以上がネット・ゼロ目標を発表している。この目標を達成するためには、人為的に排出された温室効果ガス(GHG)を大気中から除去するプロセスを経て、残りの温室効果ガスの排出量をすべて相殺(オフセット)する必要がある。

米国の外交的圧力は大きなプレッシャーになっているという。バイデン大統領は2050年までに米国をネット・ゼロ・エコノミーにするための「不可逆的な道」を歩むことを発表した。その続きに、バイデン大統領は、4月22日に主要排出国の首脳を招き「リーダーズサミット」を開催し、2030年までの野心的な温室効果ガス削減目標を新たに発表する予定で、他国のリーダーにも対策強化を呼びかけている。

インドのモディ首相もサミットに参加する予定だ。その場で、インドがネット・ゼロの目標を発表するべきかについて、政府関係者や専門家の間で活発な議論が行われている。インドがネットゼロを達成するには完全な変革が必要であり、開発計画を大きく影響するのは間違えないだろう。ヒンドゥスタン・タイムズの取材によると、環境省のある高官は「2023年にグローバルストックテーキングプロセスが終了した時点で、世界は新たな目標を宣言するのに適した状況になるだろう」とコメントしており、まだ時期は早いという意見も根強い。

また、インドは、パリ協定の実施を導く重要な原則の一つとして、炭素予算への公平なアクセス(途上国・新興国の開発の権利)の必要性を主張し続けてきた背景があり、国民のニーズと願望に沿った持続可能な開発という大きな目標の達成を支持する声が主流だ。国際NGOアクションエイドのグローバル・クライメイト・リーダーであるハルジット・シンは「インドは、遠く離れた偽の目標を設定して流行に乗るのではなく、排出量を根本的に削減し、経済を急速にグリーン化し、国内の大気汚染に対処し、世界的な気候目標の達成を支援する真のゼロアクションでリードする機会がある」と述べている。

気候正義の考え方

ネットゼロ目標のもうひとつの側面は、2015年のパリ協定の最も重要な原則のひとつである「共通だが差異のある責任」を無視していることだ。これは、豊かな国が率先して、自分たちが過去に引き起こした排出量の歴史的責任を負うことを求めるものである。これに関連して「気候正義」という概念がある。これは、危機の壊滅的な影響は、富裕層と貧困層が平等に負担するものではなく、各国の事情に差異があることを認め、先進国がより早い段階でネットゼロを達成し、その上途上国のネットゼロへの移行を支援することが求められている。

4月22日に開催されるサミットでは、バイデン政権の2030年度の温暖化ガス削減目標の野心度とともに、インドが欧州・中国・日本と米国の次に温室効果ガス排出量をネットゼロにするという目標の設定に踏み切るかは世界的に注目されるだろう。


参考記事:

Climate Home:https://www.climatechangenews.com/2021/03/18/indian-lawmaker-submits-private-bill-achieve-net-zero-emissions-2050/

Hindustan Times: https://www.hindustantimes.com/india-news/india-debates-zero-emission-target-what-is-at-stake-101617139314016.html

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