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サステイナブル認証マークが森林破壊を推進している?

疑惑付き製品がグリーンラベルを取得新たな調査により、サステナビリティ産業が環境破壊や気候変動、人権侵害の有無に関わらず、サステイナブル認証を付与していることが明らかになった。

国際調査報道連合(International Consortium of Investigative Journalists:ICIJ)と39の協力メディアによって実施された調査は、環境監査人や環境認証会社が、森林破壊や紛争や侵害地域での伐採に関係のある製品を、頻繁にサステイナブル認証している事実を突き止めた。そして、厳格ではない監査結果や認証は、株主や顧客に対して企業の製品や事業が環境・労働法・人権基準に準拠しているという誤解を与えており、その被害は壊滅的で長期に及ぶ可能性があると結論付けた。

1998年以降、地域社会・環境保護団体・政府機関は、環境犯罪やその他の不正行為を理由に340社の“認定”林産物企業を告発しており、多くの会社が持続可能な林業経営を認証されながら、実態が伴っていないという事実が発覚した。ICIJが、少なくとも50カ国の企業の検査記録、環境違反データ、裁判所への提出書類を調査したところ、48の監査法人が、先住民族の森林地帯や保護区での伐採、虚偽の許可証の使用、違法木材の輸入で告発された林産物企業を持続可能と認証していた。

つまり一部の企業は「持続可能」な広告の下、貴重な天然資源の搾取と地球規模の気候危機への不対応を正当化していることが判明した。その結果、1990年以降、欧州連合(EU)を上回る面積の森林地帯が消滅しており、さらに多くの森林が、認証ラベルのついた製品を提供するために消え続けている。

環境監査はほとんど規制されていない

過去20年間、民間団体が提供するサステイナブル認証の取得は法的義務ではないが、森林破壊に関連する木材やその他の商品を取引、生産、使用する企業にとっては、事実上必須のものとなっている。多くの企業や投資家は、森林管理協議会(FSC)、森林認証プログラム(PEFC)、持続可能なパーム油に関する円卓会議(RSPO)などの森林認証制度を利用して、「環境、社会、ガバナンス」(ESG)ガイドラインに取り組んでいること、そしてその活動が環境に害を与えないことを顧客や株主にアピールしてきた。認証団体は、第三者監査法人の審査をもとに、木材製品会社やパーム油生産者などが違法伐採やその他の環境犯罪に関連していないことを証明する。

第三章監査法人とは、KPMGPwCなどの大手監査法人、スイスの多国籍企業SGS (Société Générale de Surveillance SA)などの大手上場企業、インドネシアのPT Inti Multima Sertifikasiなどの中小企業の専門部署のことを指し、監査法人は、工場視察、担当者インタビュー、リスクアセスメントを行い、業務や製品が民間の認証機関が設計した自主的な環境基準に沿っていることを確認する。

環境監査は100億ドル(約1兆3千億円)規模の産業であるにもかかわらず、監査法人が審査の過程で調査対象事業や対象企業の報告書での問題を軽視したり見逃したりしてもその責任を問われることはない。なぜなら環境監査は、規制の厳しい従来の財務監査とは異なり、ルールやガイドラインの適用が極めて少ないからだ。

ずさんな認証体制による甚大なダメージ

ICIJの9ヶ月に及ぶ調査によって、世界中で次々と違反データや不法文書が見つかった。2022年4月、大手環境監査法人は、広大な原生林で知られるルーマニア産の木材を扱うオーストリアの巨大企業が、環境基準に批准していると認定した。しかし認証から数カ月も経たないうちに、ルーマニア当局はオーストリアの巨大企業の一部の木材供給業者に対して違法伐採の調査を開始していた。米国、イタリア、ニュージーランドでの甲板製造業者や木材取引業者は、軍事政権の財源となる天然資源の取引を行っているにもかかわらず、広告資料にグリーンラベルを貼り続けている。フィンランドでは、生物多様性の豊かな保護区での伐採に対して裁判所から罰金が科された林業会社2社に対して、監査法人がその事実を監査報告書に記載しなかったため、会社は持続可能性証明書を取得することができた。

また、世界有数の熱帯木材や林産物の輸出国であるインドネシアでは、過去10年間に監査法人が少なくとも160社の環境違反を見逃していたと独立森林監視ネットワーク(JPIK)の環境専門家が報告している。JPIKによると、違反内容は、虚偽の許可証の使用、違法伐採、ゾウやトラの生息地の破壊などで、監査法人の自由放任主義により、インドネシア企業は、認証を利用して欧州やその他の市場への輸出ライセンスを取得することができた。JPIKの研究者であるダニアル・ディアン・プラワーダニ氏は、例え違反企業に対する制度や処罰を整えたとしても、原生林や野生生物の生息地、先住民の土地の破壊を補填することはできず、「生態系へのダメージや社会的影響は計測不能なため、実際の損失は物質的な罰金をはるかに上回る」と述べた。

利益優先の監査法人

FSCやPEFCといった自主的な森林認証機関は、1990年代、森林保全のための国際的な法的枠組みの構築について環境保護団体と規制当局が合意に至らなかったことを受けて設立された。この2つの組織は、世界中で7億9000万エーカー以上の森林と何千もの製品を「持続可能」と認定しており、日常のいたるところでロゴを見つけることができる。

しかしながら近年、審査・認証プロセスの透明性の欠如、認証顧客の不祥事、利益相反疑惑、提携監査人の監督不足が判明し、両者の評判は失墜している。ICIJの取材に応じた3人の元監査役は、林産物企業の経営に良い影響を与えることができると信じてこの仕事を引き受けたと語った。しかし、彼らは次第にこの制度に幻滅していったという。なぜならより多くのブランドがサステイナブル認証にお金を払うようになったため、両団体は基準を緩和し、そのプロセスは効果的でなくなったからである。元林業監査官で生物学者のボブ・バンクロフト氏によると、多くの人は林業の悲惨な状況を見て自主基準を設けるのはいいことだと考えており、純粋な良心からサステイナブル認証のラベルがついた商品を選んでいる。

このような批判に対して、FSCのキム・カルステンセン事務局長は、FSCラベルは

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