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自然なくして、ネットゼロは成立しない

自然破壊と気候変動という2つの危機は、表裏一体の関係にある。しかし、あまりにも長い間、この2つの危機は別々に議論され、対処されてきた。資本市場も同様で、両者の問題は別個のものとして扱われてきた。しかし、そうではないはずだ。

経済的には、自然環境は何千兆円もの価値を持つが、今までその価値は正しく財務的に評価されていなかったため、環境を破壊するのにコストがほとんどかからず、逆に環境を保全する取り組みがコストとして計上されてきた。しかし事実場、逆のはずだ。企業は公の財産である自然環境を破壊した場合、社会にそのコストを支払い、逆に環境保全または再生に関与した場合、その行動が社会から評価され、補償されるのが自然資本の考えだ。同じように、温室効果ガスの排出量による外部不経済が正しく財務的に計算されてこなかったことで、その排出量に対して十分なコストが支払われず、社会や環境がその影響を受けてしまっている。

自然資本の考え方が主流化する中、自然環境に対するリスクは今や重要な財務リスクと見なされ、規制当局や投資家が気候関連の財務リスクを精査するのと同じようになりつつある。

自然資本の枯渇は、短期的に大きな経営コストを生み出し、生活や重要な資源の供給を脅かし、世界のGDPの半分を危険にさらすことになると持続可能な開発のための世界経済人会議( WBCSD )が指摘する。

WBCSD の調査では、世界のリーディング企業200社以上の代表サンプルの87%にとって、自然関連の課題が重要であることが判明した。しかし、自然関連の影響や依存度について財務評価を行っているのは、わずか27%にとどまる。

食品と農業の分野に関する調査によると、気候変動、生物多様性の減少、長期的利益と短期的利益の断絶、土壌の劣化と栄養分の保存といった一連のリスクは、第一産業にとって最も厳しいリスクを生み出しているという。

気候変動と自然に関する情報開示の融合

自然資本を戦略的な意思決定に組み込むために、より多くのことを行う必要があることは明らかである。これらの相互に関連するリスク間の因果関係を断ち切り、あるリスクが他のリスクへ波及するのを防ぐことが重要である。

企業がこれらの統合された課題を管理・開示し、資本市場に対してパフォーマンスを示すことを支援する新しいツールやガイドラインが議論されている。その中には、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が代表的な取り組みだ。この枠組みは、自然資本の破壊が企業経営に及ぼす影響について開示を迫るものだ。TCFDを始め、広く採用されている気候変動に関する情報開示のガイドラインを基に、企業が自然への依存度や影響を把握し、対応策を特定するためのフレームワークを提供する。

他のツールには、KPMGのダイナミック・リスク・アセスメントもある。これは、相互に関連するリスクのクラスターを分析し、企業があるリスクの存在によって、関連するリスクが誘発される可能性がどう変わるかを評価できるようにするものである。

環境経営と脱炭素経営を同時に実践

サステナビリティ関連情報開示に関する統一的な規制がない中、気候変動と自然関連のリスクを統合的に管理・開示するために、「待ち」の姿勢に傾きがちかもしれない。しかし、先進的な企業は、政府や法律を待つのではなく、気候変動と自然関連の解決策について積極的にコミットすることの利点を認識している。

先進的な企業は、すでに以下のような行動を起こしている。

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