ドイツ西部のボンにおいて9月末に開催された第5回国際化学物質管理会議にて、化学物質に関するグローバル・フレームワーク(Global Framework on Chemicals)への世界的な合意が形成された。同枠組みは化学物質と廃棄物の健全な管理を改善することを目的とした28の目標に基づいており、国際連合環境計画(UNEP)*1は、このグローバル・フレームワークに歓迎の姿勢を見せ、すべての人々にビジョンの達成のための努力を呼びかけている。日本政府が新たな枠組みにおけるアジア・太平洋地域の地域フォーカルポイントに選出されたことによって、アジア太平洋地域の途上国の化学物質管理に対する支援を今後も着実に実施して行くことが期待される。
フレームワークは、化学物質や廃棄物による害のない地球、安全で健康的かつ持続可能な未来のためのビジョンを示すものであり、持続可能な開発目標(SDGs)、昆明・モントリオール世界生物多様性枠組み、交渉中のプラスチック汚染に関する世界条約など、より広範な協定の重要な一部だ。
今回の合意で各国政府は、2030年までに化学物質汚染を削減するための規制環境を整備し、より安全な代替物質を促進する政策を実施することを約束した。産業界に対しては、2030年までに化学物質汚染と悪影響を削減する方法で化学物質を管理することが求められる。
またこの枠組みは、より安全な代替品が利用可能な農業において、2035年までに危険性の高い農薬を段階的に廃止することを求めている。気候、生物多様性、人権、健康の各分野の課題との関連性を強化するという目標も掲げられている。
ここで重要なのは、資金調達に対する統合的なアプローチが世界的に合意されたことである。専用の信託基金が設立され、UNEPによって管理される。この基金には、各国政府、民間セクター、NGO、財団が、ドイツが誓約した2000万ユーロに追加することができる。これは大きな前進だ。
世界保健機関(WHO)によれば、大気、土地、水、職場における直接的な化学汚染は、年間200万人の死者を出している。生態系や生物種は枯れ、死滅している。
この事実を踏まえ、UNEPはすべての関係者に直ちに行動を開始するよう呼びかけている。持続可能な環境に対する人権に基づき、化学産業やその他のセクターを支援する新たな政策やインセンティブを策定し、危険性の高い農薬を2035年より早く段階的に廃止する努力を行うことを各国政府に求めている。さらに化学薬品会社に対しては、有害な化学物質を人や自然にやさしい代替品に置き換えるための投資を求める。
日本の化学汚染対策
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