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「CSR企業ランキング」業種別トップ10が発表:NTTドコモを抜いてKDDIが総合トップに

信頼される会社をCSR(企業の社会的責任)と財務の両面から評価する「CSR企業ランキング」の業種別結果が東洋経済によって明らかとなった。

総合トップはKDDIであったが、CSR活動は業種・業態によって行える活動に差があるため、各企業のCSRの取り組みを評価する際は、全体の順位と合わせて業種ごとにも見ていく必要がある。

業種 業種別ランキング1位 総合得点
情報・通信業 KDDI 575.0
パルプ・紙/化学 花王 567.0
電気機器/精密機器 富士ゼロックス 560.2
食料品 JT 563.6
機械 コマツ 562.2
水産・農林業/鉱業/建設業 大和ハウス工業 557.5
石油/ゴム/ガラス・土石 ブリヂストン 556.9
繊維製品 東レ 555.9
輸送用機器 トヨタ自動車 553.7
医薬品 第一三共 546.5
鉄鋼/非鉄金属/金属製品 住友電気工業 536.7
電気・ガス業 大阪ガス 542.0
卸売業 三菱商事 553.0
小売業 セブン&アイ・ホールディングス 563.7
陸・海・空運/倉庫 ANAホールディングス 550.8
サービス業 リクルートホールディングス 538.8
不動産業 三井不動産 532.1
その他製品 大日本印刷 529.6
金融業 SOMPOホールディングス 392.1

 

情報・通信業

1位KDDI(575.0点)、2位NTTドコモ(572.6点)、3位日本電信電話(NTT、569.0点)。総合ランキングでも同じ順位である強豪だ。4位はZホールディングス(旧ヤフー)で549.7点。5位NTTデータ(543.0点)までが総合100位内で、NTTグループの存在感が強い。

KDDIは国内通信事業者としては初めて(KDDI調べ)CO2排出量の総量削減を掲げ、地球環境保全への取り組み、「安全で強靱な情報通信社会の構築」「多様な人財の育成と働きがいのある労働環境の実現」などを掲げたサステナビリティ活動を実施したことが首位に輝いた要因と考えられる。*

 

パルプ・紙/化学

有力企業が並んでいる。トップは花王(567.0点)。女性管理職比率16.8%という数値の高さに加え、フレックスタイム制度、在宅勤務制度、裁量労働制度をはじめとした幅広い勤務柔軟化の各制度などで人材活用は98.0点(5位)。財務も20位の278.8点と高得点。環境94.7点(39位)、企業統治+社会性95.5点(35位)とバランスよく、総合でも4位となった。

2位は、2017年まで3年連続で総合1位だった富士フイルムホールディングス(566.3点)。以下、3位旭化成(558.4点)、4位信越化学工業(547.4点)、5位三菱ケミカルホールディングス(546.0点)、6位ユニ・チャーム(543.1点)までは総合50位内だった。

 

電気機器/精密機器

トップは、未上場ランキングでも2位だった富士ゼロックス(560.2点)。富士フイルムホールディングスの主要子会社で、同社の財務得点(277.1点)を使っている。

2位は富士通(554.4点)。人材活用90.9点、環境94.7点、企業統治+社会性93.8点と環境が強い。3位は、財務が急回復した東芝(553.5点)。以下、4位キヤノン(552.2点)、5位オムロン(551.8点)と続く。10位のパナソニック(547.0点)でも総合36位という、高得点ぞろいの業種だ。

 

食料品

JT(563.6点)がトップ。人材活用91.9点、環境93.3点、企業統治+社会性97.2点といずれも高得点で、総合でも7位と上位だった。葉たばこの調達過程で、直接契約農家の96%で耕作労働規範(ALP)を展開、農家の収入や生活水準、労働慣行の改善に貢献。幅広い育児・介護への支援制度、在宅勤務制度、副業許可制度のほか、82.0%と高い有給休暇取得率など、働きやすい職場環境が整備されている。しかし、商品自体の社会的影響を考えると、「CSR企業ランキング」による「社会性」のクライテリアの内容が問われる。

2位はキリンホールディングス(557.8点)、3位アサヒグループホールディングス(550.7点)、4位サントリーホールディングス(541.5点)と、酒類を含めて幅広く取り扱う大手飲料メーカーが続く。5位明治ホールディングス(534.6点)、6位味の素(531.5点)までが総合100位内だ。

 

機械

コマツがトップ(562.2点)。人材活用97.0点、環境92.0点、企業統治+社会性94.4点、財務278.8点と満遍なく得点。8位の人材活用以外にベスト10入りはないものの、総合力で総合8位となった。同社は収益向上とESG(環境・社会・ガバナンス)課題の解決の好循環で持続的成長を図り、企業価値の最大化を目指している。

2位はダイキン工業(558.2点)。人材活用90.9点、環境97.3点、企業統治+社会性90.4点。以下、3位クボタ(552.7点)、4位日本精工(536.1点)、5位三菱重工業(531.8点)までが総合100位内となっている。

 

水産・農林業/鉱業/建設業

1位は大和ハウス工業(557.5点)。部門別は環境98.7点(3位)、財務279.0点(19位)を中心に、企業統治+社会性96.0点も高得点で、総合でも13位にランクインした。SDGsのゴール11「住み続けられるまちづくり」をベースとした経営戦略を描き、環境では2030年度、2055年度という超長期の数値目標を掲げている。

昨年業種トップだった積水ハウスは今年2位(553.1点)、3位は大東建託(540.4点)だった。水産・農林業は入らなかった。

 

石油/ゴム/ガラス・土石

トップがブリヂストン(556.9点)で総合14位。人材活用87.9点、環境92.0点、企業統治+社会性96.6点、財務280.4点と、いずれも高得点だった。タイヤの原材料の供給者である小規模天然ゴム農家に生産性向上技術や苗木を提供することで、品質・単位面積当たりの収量の向上と、天然ゴム生産に伴う土地利用の拡大抑制に貢献している。

2位はENEOSホールディングス(旧JXTGホールディングス)の540.2点。人材活用87.9点、環境88.0点、企業統治+社会性92.1点、財務272.2点と高得点。環境・企業統治+社会性分野については、温暖化対策や次世代エネルギー事業への注力が評価されたものと考えられる。以下、3位住友ゴム工業(535.2点)、4位AGC(527.8点)、5位TOTO(526.1点)が続く。

 

繊維製品

東レ(555.9点)が首位。人材活用90.9点、環境97.3点、企業統治+社会性92.1点と、いずれも90点以上だった。温暖化防止や水浄化、資源の有効活用などに貢献する「グリーンイノベーション事業」、公衆衛生や医療の質の向上、健康・長寿に貢献する「ライフイノベーション事業」をプロジェクトの中心に据えて推進する。

2位は帝人(541.0点)。この業種は対象社数が少なく、総合ランキングで500位内に入った企業は9社だった。

 

輸送用機器

トヨタ自動車(553.7点)がトップで、総合17位だった。人材活用92.9点、環境97.3点、企業統治+社会性93.8点と、いずれも高得点。2018年度の社会貢献支出額は190.7億円で圧倒的1位。グローバルな社会課題解決に幅広く取り組んでいる。

2位はアイシン精機(552.9点)、3位デンソー(550.2点)と、トヨタグループが並ぶ。以下、4位マツダ(547.8点)、5位ホンダ(545.8点)と続く。

 

医薬品

第一三共(546.5点)がトップ。中期経営計画にコンプライアンス経営、環境経営、社会貢献など、CSRの6つの活動分野における目標を設定。企業統治+社会性は97.7点と高得点。人材活用89.9点、環境86.7点、財務272.2点と合わせて、総合でも37位だった。

以降も、2位武田薬品工業(544.1点)、3位アステラス製薬(541.0点)、4位塩野義製薬(539.3点)、5位中外製薬(536.2点)と、製薬大手が並ぶ。

 

鉄鋼/非鉄金属/金属製品

住友電気工業(536.7点)が首位。人材活用85.9点、環境86.7点、企業統治+社会性87.0点と安定的に得点。住友電工グループCSR調達ガイドラインを取引先などに周知するといった、サプライチェーンでの取り組みを着実に進めている。

2位はLIXILグループ(527.9点)、3位日本製鉄(527.0点)、4位住友金属鉱山(521.1点)、5位ジェイ エフ イー ホールディングス(519.1点)と続く。

 

電気・ガス業

トップは大阪ガス(542.0点)。人材活用83.8点、環境96.0点、企業統治+社会性96.0点だった。環境は、ISO14001国内・海外100%取得や事務用品のグリーン購入比率100%などの数字が高い。国内外での風力・太陽光発電の推進、生物多様性保全の取り組みも推進する。

2位は東京ガス(541.7点)で、トップに僅差で及ばなかった。3位に電力トップの関西電力(520.8点)。4位中部電力(512.6点)、5位東北電力(498.3点)と続く。

 

卸売業

三菱商事(553.0点)が首位。人材活用93.9点、環境92.0点、企業統治+社会性92.7点だった。低炭素社会への移行や次世代ビジネスを通じた社会課題解決などをマテリアリティに掲げる。中南米のコロンビアにおいて、年間約300世帯の小規模コーヒー生産農家に対し技術支援や教育プログラムを行い、品質向上・増産を目指している。

2位は、6月に「時価総額が三菱商事を上回り総合商社トップになった」と話題になった伊藤忠商事(548.1点)。以下、3位三井物産(546.2点)、4位住友商事(541.6点)、5位豊田通商(539.2点)、6位双日(529.1点)と例年同様、大手総合商社が上位を占めている。

 

小売業

トップはセブン&アイ・ホールディングス(563.7点)。人材活用93.9点、環境96.0点、企業統治+社会性95.5点、財務278.3点だった。セブンと並ぶ業界の雄・イオンは546.4点で2位。人材活用96.0点、環境98.7点、企業統治+社会性97.2点、財務254.5点だった。

人材活用、環境、企業統治+社会性はいずれもイオンが上位だが、財務はセブンが大きく上回った。

3位は丸井グループ(539.3点)。総合でも63位で、同じく6位セブン&アイ、38位イオンと、小売り3強を形成し始めてきた。以下、4位ファーストリテイリング(512.5点)、5位ファミリーマート(509.1点)と続く。

 

陸・海・空運/倉庫

トップはANAホールディングス(550.8点)。人材活用100点、環境86.7点、企業統治+社会性93.8点と、人材活用に強みを持つ。障害者雇用率2.60%、女性管理職比率14.6%、月平均残業時間8.4時間などの高い数字が並ぶ。社員の健康管理やメンタルヘルス対策の強化、配偶者の勤務地転居に併せて、東京・大阪間の異動希望を申告可能な客室乗務員「かがやきサポート制度」など、実施されている。

2位は日本航空(534.4点)、3位が東日本旅客鉄道(JR東日本、529.2点)で、ここまでが総合100位内。以下、4位西日本旅客鉄道(JR西日本、523.3点)、5位日本郵船(518.8点)と続く。

この業界はコロナショックが直撃している。今後も厳しい経営状態が続く見通しで、社会貢献的な取り組みは後退せざるをえないだろう。企業の社会的責任を果たすために何をすべきかを考えてくことが、今後の浮沈に繋がるだろう。

 

サービス業

リクルートホールディングス(538.8点)がトップ。人材活用86.9点、環境78.7点、企業統治+社会性93.2点と、環境が少し弱いもののバランスよく得点。昨年時点ですでにグループ9社でリモートワークを導入し、約1.6万人が利用していた。ほかにも幅広い働き方を認めるなど、先進的な取り組みを行っている。

以下、2位セコム(534.0点)、3位電通グループ(525.9点)、4位日本郵政(516.5点)、5位オリエンタルランド(505.6点)と続く。

 

不動産業

トップは三井不動産(532.1点)。人材活用76.8点、環境89.3点、企業統治+社会性89.3点、財務276.7点と人材活用が若干弱い。地域コミュニティの核となる商業施設で、地域活性化のための環境・社会貢献イベントを実施。東京・日本橋などではコワーキングスペースを提供している。

2位は、昨年業種トップの三菱地所(513.8点)。以下、3位ヒューリック(508.5点)、4位野村不動産ホールディングス(502.3点)、5位イオンモール(502.1点)と続く。

 

その他製品

大日本印刷(529.6点)がトップ。人材活用82.8点、環境90.7点、企業統治+社会性95.5点だった。保冷剤で冷蔵状態の温度を長時間保てる電気不使用の「DNP多機能断熱ボックス」による、冷蔵インフラが遅れている東南アジアへの貢献など、社会課題解決の取り組みは多い。総合100位内は同社のみだった。

以下、2位ヤマハ(524.0点)、3位アシックス(517.3点)、4位オカムラ(488.6点)と続く。

 

金融業

1位はSOMPOホールディングスで392.1点。部門別では、環境が100点で1位、人材活用は99.0点で4位、企業統治+社会性は98.9点の4位と、上位にランクイン。女性管理職比率19.0%、総労働時間1782.6時間、男性育児休業取得率60.1%など、働きやすさを高く評価された。また、インドのマイクロファイナンスの活用を促進する農村・貧困層向けのマイクロインシュアランス(小規模保険サービス)を2008年から提供するなど、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みも積極的だ。

2位は東京海上ホールディングス(386.7点)。人材活用93.9点、環境96.0点、企業統治+社会性97.7点といずれも高い。以下、3位第一生命ホールディングス(384.9点)、4位日本生命保険(384.5点)、5位みずほフィナンシャルグループ(384.4点)と続く。

 

まとめ

今回のランキングは投資先を決定する上で、良質な参考材料となるだろう。しかし、タバコや石油といった、製品自体の社会的影響を考えると、この番付に疑問も残る。ランキングは絶対的ではなく、第三者による評価基準に基づくため、投資先として考える前に自己判断でそれぞれの企業のESGへの取り組みを客観的に見る必要がある。


参考リンク:

東洋経済:最新版「CSR企業ランキング」業種別トップ10CSR企業白書』2020年版

* 東洋経済:KDDIがCSRランキングで1位を獲得した理由

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