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地球に優しい企業の見つけ方(その1)

前回のブログでも紹介した通り、気候変動対策に取り組む企業はESG投資家によって高く評価され、株価にも反映されることが期待されます。そこで気候変動に対する取り組みが特に優れた企業を選ぶには、どのような方法があるかについて紹介します。 

まず、ESG投資には主に2つの方法があります:

1)自分で企業を選ぶ

2)ESG型の投資商品を選ぶ

はじめに、自分で企業を選ぶ方法についてです。これはそのまま通り、気候変動に配慮した企業の株式や債権を自分で選択して購入するというものですが、このとき企業の選び方が重要となります。

株式を購入するには、上場銘柄のうちESGに積極的に取り組む企業の株を個人で探します。一方で債権を購入するときには、ESGに取り組んでいる企業が発行する個人向け社債などを購入します。両者とも、証券会社等を通じて取引を行う点が共通しています。

さて、投資をする際に、気候変動への対応が優れた企業を選別するためには何を判断基準にすれば良いでしょうか?(※以下のリストは判断要素の一部に過ぎませんので、ご注意ください)

気候変動への取組が優れた企業を確かめる3つの企業評価リストを紹介します:

RE100

RE100は「Renewable Energy 100%」の略称で、脱炭素社会への循環を生み出すために、2014年に発足された国際イニシアチブを意味します。RE100設立の意図としては、電力供給側となる電力会社ではなく、使用する需要側が再生可能エネルギーの必要性を社会に訴えることで、電力会社に技術開発を進めるよう促したり、政府や関係機関に法令を制定する流れを促したりすることが挙げられます。したがって、RE100加盟企業は「遅くとも2050年までに使用電力を完全に再生可能エネルギーにすること」を目指します。発足以来、アメリカ、ヨーロッパ、中国、インドで広がり、現在は日本やオーストラリアでも関心が高まり始めています。

加盟企業の業種は多種多様で、金融から保険、食料品、小売り、建設、IT、運送業など、実に様々です。しかし、業種によって必要となる消費電力量が異なるため、「100%再生可能エネルギー」の目標にコミットしやすい業界と、そうでない業界があることに注意が必要です。例えば、部門別に見ると製造業は日本の全電力使用量の大部分を占めており、その他の業界に比べるとはるかに多くの電力を消費しています。つまり、消費電力が高い企業ほど、サステイナビリティーの実現に向けて努力していることになります。 

企業の情報開示の質の向上に取り組む米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)によると、ESG課題の内、エネルギー消費や管理を、特に「重要課題」として取り扱っている産業セクターは、食料・飲料、再生可能エネルギー・代替エネルギー、資源転換(産業機械製造・電気機器メーカー・化学工業など)、技術・通信の4セクターとなります。これらの産業に当てはまる企業のコミットメントは注目すべきです。*1

また、本来RE100に加盟するには、購入電力の再生可能エネルギー比率の中間目標の達成期限も設けられているため、最低ラインは「2020年30%、2030年60%、2040年90%」となりますが、遅れている日本の再エネ環境を鑑み、日本企業の中間目標設定は必須から推奨に緩和されています。その代替要件として日本企業には、『日本の再エネ普及目標の向上』と『企業が直接再エネを利用できる、透明性ある市場の整備』に関する政策関与と、公的な要請を、積極的に行うことが求められています。その中で積極的な中間目標を設定している企業は評価できます。

RE100に加盟している日本企業33社(2020年3月時点)は、以下となります。*2

RE100加盟日本企業

SBTi

SBTiは「Science-Based Target Initiative」の頭文字をとった名前で、企業に対し「科学的根拠に基づいた」二酸化炭素排出量削減に取り組むことを求めるイニシアチブです。「科学的根拠に基づく」というのは、パリ協定で定められた地球温暖化を摂氏2度以下に抑えるのに十分な迅速さで、各企業が温室効果ガスの排出量を削減することを意味します。多くの企業は、この目標を実現するためのスキルや専門知識を持っていることをすでに実証しています。したがって、このイニシアチブでは、企業がとる変革的な行動が現在の気候科学に沿ったものであることを保証しています。

SBTiは各企業の科学的根拠に基づく目標設定の方法として、セクター別脱炭素化アプローチ(SDA)を推奨しています。SDAでは、業界ごとの二酸化炭素排出削減目標が定められており、それを基に各社が削減目標を定めています。これまで、7つの業界(アパレル、 化学・石油化学製品、金融、石油・ガス、交通、エネルギー、森林・土地・農業)において、具体的な脱炭素化アプローチが定められています。

業種ごとのコミットメントの高さを比較する際には、企業が排出する温室効果ガスを3つの領域に分類して考える必要があります。スコープ1は、その組織または管理下にある活動から発生する全ての排出量です。ガスボイラー、車両、空調の漏れなど、事業所内での燃料の消費も含まれます。スコープ2では、組織が購入、使用する電力からの間接的排出量です。ここでの排出は、企業が利用するエネルギーの生産過程で発生します。最後にスコープ3は、組織の活動から発生する全ての間接的排出量で、サプライヤーや投資先など、組織が直接所有または管理していない排出源から発生するものを指します。スコープ3は、通常、企業が排出するカーボンフットプリントの中で最も大きな割合を占めるため、スコープ1・2とともにも重要視すべき領域です。

SBTiから目標が認定されている企業は65社で、SBTiが求める目標の設定を約束した企業は25社です(2020年4月現在)。*3 

SBTi目標認定済み企業

SBTi目標設定を約束済みの企業

CDP

CDPは2000年に英国で設立された国際NPOで、投資家・企業・地域自治体・国家等が、環境への影響を管理するための情報開示システムを運営しています。CDPは毎年、世界中の企業の気候変動に対する取り組みを測定し、その格付けを発表しています。気候変動に対する取り組みを検証するために、1) 自社の温暖化ガス排出量(スコープ1~3)に対する削減目標のSBT設定、2) 炭素価格(カーボンプライシング)施策への対応、3) 組織が内部的に使用する炭素価格(インターナル・カーボン・プライシング)、4) 気候変動が事業活動に与える影に関するシナリオ分析と事業戦略、という4つの具体的な項目から質問が構成されています。これらの質問に対する回答をもとにスコアリングが計算されます。*4

さて、各対象企業はそれぞれの取り組み度合いによって、リーダーシップ(A, A-)、マネジメント(B,B-)、認識(C,C-)、情報開示(D,D-)、十分な情報開示なし(F)にランク付けされます。情報開示レベル(D,D-)では、企業の開示度合いを評価し、認識レベル(C,C-)では、企業が自社の事業に関わる気候変動に対してどの程度の取り組み姿勢があるかを測っています。さらに、マネジメントレベル(B,B-)では、気候変動に対する自社の方針や戦略をどの程度吟味、実行しているかを検証し、トップのリーダシップレベル(A, A-)では企業が環境対策に最善を尽くしているかをみています。

2019年には、8000を超える企業がCDPの調査対象となり、全体の上位2%に当たる181社、日本からは38社が気候変動Aリストに選定されました。この気候変動Aリストに選定されるためには、企業は以下の4つの条件をクリアする必要があります。*5

  1. リーダーシップポイントの最低基準80%を満たしている。
  2. スコープ1および2の合計排出量の70%以上について検証が行われていて、この検証から重大な情報が除外されていない。
  3. スコープ1および2の総排出量を報告している。
  4. 回答内容を一般公開している。

また選定企業を業種別にリストを見ると、サービスや製造業の企業が多く選定された一方で、アパレルやホスピタリティー、化石燃料・発電・輸送などのエネルギー消費量が高い業界の企業数は非常に少なくなりました。さらに、現在のスコアリングではスコープ3排出量(サプライヤーや投資先などの間接的排出量)は含まれていないことも考慮する必要があります。最も高い評価であるAリストに選定された日本企業は、以下となります。*6

CDP気候変動Aリスト(日本企業)

RE100、SBTi、 CDP気候変動Aリストのそれぞれに特徴がありますが、その3つ全てに入っているのは以下の11社です。これらの企業は「気候変動への対応が優れている」*といえるでしょう。

RE100・SBTi・CDP気候変動Aリスト3種加盟

なお、今回紹介した3つのリストそれぞれは気候変動の影響に伴う「物理的リスク」(詳しく前回のブログまで)に対する備えは詳しく評価されていませんので、各企業の年次報告書や統合報告書を確認する必要があります。業種別の気候変動対策評価をさらに勉強されたいかたは、WWFの企業評価シリーズをおすすめします。

 

まとめ

気候変動対策において、どのような日本企業が評価されているのでしょうか?その答えを探すには、それぞれの取り組みの基準や、業種ごとの違いを考慮するのが重要です。そして最後には、投資する前は、財務状況を始めに証券会社またはアドバイザーの情報を元に、個々の企業の年次報告書、統合報告書を読んで、信頼できるか自身で判断することも重要です。企業が公開している情報とともに、常にNGOや評価機関による第三者の評価を確かめることをおすすめします。次回のブログでは、ESG型投資商品の選び方に迫ります。

(PROTIP: 自分が興味のある業種に集中して、企業を比較できるように勉強を重ねてからはじめてみましょう)


出典:

*1:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、SASBマテリアリティマップ、2020

*2:よくあるご質問(RE100) | JCLP | 日本気候リーダーズ・パートナーシップ 

*3:Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)とは

*4:2019年CDP気候変動質問書

*5:CDP Climate Change 2019 Scoring Methodology

*6:GREENa ESGマネジメント、2019年度最新スコア、2020

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