生物多様性の損失と世界経済への影響
現在、人間の生産活動によって生物多様性の損失が急速に進展しており、世界経済が生物資源に由来する生産に支えられていることから、この損失は人類の健康、生活水準、雇用などに深刻な影響がもたらすことがわかっている。
世界経済フォーラムは生物多様性の損失が今後10年における深刻なリスクの一つとして発表し、国連環境計画 (UNEP) はこの損失が世界経済に毎年生産高の10 %の損害を与えているとし、生物多様性を回復するためには2050年までに自然共生型社会の構築に向けて総計8.1兆ドル超の投資が必要であると報告した。
これらの報告を受け、市民や投資家は生物多様性の損失を危機として認識し、各国政府・金融機関・企業が自然環境を意思決定の中心に据えることが課題となっている。
投資家の中でも生物多様性を投資テーマとする動きが活発化しており、大手資産運用会社が生物多様性の保全と回復に資する技術やビジネスモデルを評価し投資判断を行う投資ファンドを相次ぎ設立している。今回はフランスのAXAと米国のフィデリティの新設ファンドを取り上げる。
生物多様性に投資することのメリット
生物多様性への投資は、長期的な価値を生み出し、生物多様性の解決に資金を誘導するだけでなく、持続可能な世界経済への移行に伴うリスクを回避することになると予想される。想定されるリスクとしては、内燃機関や火力発電などの既存のバリューチェーンの崩壊、自然資本を保護するための政策や規制介入による規制リスク、訴訟や風評被害などが挙げられる。また、生物多様性への配慮を欠いた企業が直面する訴訟リスクや風評リスクもあり、生物多様性に投資する企業は、市場シェアを獲得する可能性が高いと考えられる。
アクサ・インベストメントマネジャーズ (AXA IM) の生物多様性に特化したインパクトファンド
AXA IMは、
生物多様性の損失の緩和を目的とする「AXA WF ACT Biodiversity Fund」を今年4月に設立した。AXAのインパクト・リサーチ・リーダーを務めるアマンダ・オトゥールが運用する予定である。
ポートフォリオは以下の4つの領域に取り組む企業によって構成される。
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