世界最大の資産運用会社であるブラックロックが、自然資本を「外部性」ではなく「投資可能な資産」として正式に位置付けた。これは、資産評価のパラダイムシフトを示す重要な転換点であり、ESG投資の未来を再定義する可能性がある。*1
ブラックロックはこれまで、環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した投資を推進してきたが、近年は「ESG」というラベルに対する市場の過敏な反応を受け、表立ったESG戦略から距離を置く動きを見せている。しかし、本質的な方向性は変わっていない。むしろ、長期的な財務レジリエンス(回復力)の確保という観点から、自然資本への投資を強化しているのだ。
自然資本の「再評価イベント」が迫る
自然資本とは、水、森林、土地、生物多様性など、経済活動に不可欠な自然の資源を指す。
従来、これらは「外部性」として市場評価に正しく反映されていなかったが、ブラックロックはこの状況が変わることを見越している。
PwC(プライスウォーターハウスクーパース)の調査によると、世界のGDPの55%(約8700兆円)が自然に依存している。しかし、現在の市場価格にはその価値のごく一部しか反映されていない。*2
ブラックロックの広報担当は、「資産価格は、自然資本に関連するリスクと機会をより適切に反映するよう調整されると見ている。その兆候はすでに現れ始めている。」と述べた。
これはつまり、「自然資本の価格が再評価されるイベント(repricing event)」が迫っており、その変化に適応できない企業や投資家は、大きなリスクを抱えることになるということだ。
水、土地、生物多様性を抑える
ブラックロックは、自然資本が適切に評価されていない現状を利用し、すでに長期的な資産保有戦略(ロングポジション)を構築している。具体的には、水資源、農地、森林、再生型農業(Regenerative Agriculture)への投資を拡大しており、2024年には自然資源・エネルギーインフラを管理する「グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)」を買収した。
これにより、ブラックロックは水利権、土地利用権、生物多様性関連資産を確保し、将来の市場変化に備えている。また、企業の評価基準にも変化が現れている。
ブラックロックは、以下のような項目を非財務評価の重要な指標として位置づけている。
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