ESGブログ・意見

2021年のESG投資予測

新年を迎えてから早11日間。まだまだ新型コロナウイルス感染収束の兆しはない。

そんな中、2021年のESG投資の行方はどうなるか?今回は2021年のESG投資予測を4つにまとめた。

1. 脱炭素の加速

昨年、各国が次々に脱炭素化を目指す声明を発表したのことは記憶に新しい。ヨーロッパと中国に続いて、日本と韓国も国をあげた野心的なネットゼロ目標を立てている。バイデン次期大統領の就任後、アメリカも早速脱炭素化へ向けてアクセルを踏み出すだろう。

世界的な脱炭素化への動きにより価格の低迷が予測される原油とは対照的に、電動化や再生可能エネルギー技術に欠かせないリチウムなどの鉱物の需要が高まっている。

グリーンリカバリーのリーダーである欧州のグリーンディールでは、気候変動対策に官民合計で10年間で1兆ユーロ(約116兆円)以上投資する。その中でも、2030年までに水素製造装置の増強に最大420億ユーロ(約5.2兆円)を投じる予定だ。製造した水素は、再生エネルギー利用が困難であると考えられている製鉄やガス製造、大型車両による輸送などの産業に集中させる。CO2を多く排出する産業も脱炭素型に転換し、EUの競争力を維持する狙いがある。

中国は世界的に再生可能エネルギーや電動車の需要拡大を見据え、ニッケルやコバルト、リチウムなどのバリューチェーンを確保。風力発電のブレードや太陽光発電においても過半の世界シェアを押さえている。さらに、蔚来汽車(NIO)、「理想汽車」(LEADING IDEAL)、「小鵬汽車」(XPENG)といった電気自動車を手掛けるスタートアップも活発であり、売り上げや調達金の高さで話題を呼んだ。今後も業界内での競争は激化しそうだ。さらにこの脱化石燃料は新たな市場獲得に繋がり、国家成長戦略に寄与するだろう。

以前のブログでも取り上げた通り、バイデン政権は4年間で2兆ドル(約210兆円)の予算を組み、交通・電力・建築分野でのクリーンエネルギーの利用を大幅に拡大する公約を掲げた。トランプ政権の環境規制緩和と真逆の道を走る。

欧・中・米は脱炭素へ更に大きくシフトすると言っても過言でない。それの流れに応じざる負えない日本と韓国も必死にキャッチアップする努力が期待される。

2. グリーン外交・炭素価格が焦点に

予測の2つ目は、環境課題が外交の主軸となっていく点だ。ThinkESGでも報じたように、先日バイデン氏は大統領就任100日目を迎えるまでに気候変動対策に関する首脳会議を開催することを発表した。パリ協定締結から 6 周年を迎える11月には、各国政府からCO2排出削減目標の提出が期待さる国連気候変動サミット「COP26」が英国で開催される。COP26では、元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏を中心に、ゼロエミッションへの移行に向けた業界の再構築を目指す金融機関の地球温暖化対策への貢献にも焦点が当てられる。このように、脱炭素を中心とした国際間の連携が見られる機会が増えるだろう。

特に注目したいは、炭素価格(カーボンプライシング)の導入に関する国間交渉だ。EUは2021年の炭素国境調整措置導入を明らかにしている。脱炭素化にはサプライチェーンの整備などのコストがかかるため、EUよりも野心レベルが低い他地域との国際競争力低下、貿易収支の悪化、カーボンリーケージが懸念される。この措置はCO2排出量に応じた課税やクレジット取得の義務付けによって、EU域内産業の競走条件の公平化を図る狙いがある。EUの動きに対して、中国及びアメリカはどのように動くかが焦点となるだろう。

中国もカーボンプライシングの国内導入に急ぐ。中国政府は今年から2000社以上の電力会社を対象にCO2排出制限を設ける。中国の電力システム改革を促すポテンシャルを秘めているだろう。

アメリカでは国レベルで炭素価格を導入するのは厳しいと見られる一方で、バイデン時期大統領とハリス副大統領は選挙以前にカーボンプライシングの導入に対して前向きなスタンスを明らかにしている。さらに、バイデン政権の次期財務長官候補の前米連邦準備制度理事会(FRB)議長ジャネット・イェレン氏を始め、経済学者や企業関係者を含む民主党・共和党議員はカーボン配当政策(Carbon Dividend Solution)に賛同している。これは、1トン当たり炭素税を40ドルと設定し、その税収を経済的弱者に再配分するという案だ。

アメリカ国内でのカーボンプライシングの議論活発化に加え、炭素価格導入に積極的な州政府も注目されるだろう。例えば、ニューヨーク州政府は1トンあたり125ドルの炭素価格設定を推奨している。 

さらに、イェール大学教授で2018年ノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・ノードハウス氏は論文の中で「気候変動対策クラブ」構想を発表した。法的拘束力とインセンティブをもたないパリ協定を始めとする従来の国際協定は失敗に終わったと指摘。この「クラブ」が誕生すれば、炭素税やカーボンプライシングを導入しない地域に対して罰則を課すことになり、野心的な行動を促す強力な措置と期待される。

日本の電力システムは世界と比べても排出源単位で炭素濃度が高く、改革加速が喫緊の課題だ。その上で、産業界の抜本的イノベーションの鍵となるのは、税制優遇措置以上に価格競争だ。世界的に注力される炭素価格の本格的導入において、日本企業は競争力を問われるだろう。

3. ESG情報開示の厳格化

3つ目として、上場企業にサステナビリティに関する情報開示がますます求められるようになると考えられる。昨年、ESG関連の非財務情報に関する国際的スタンダードをまとめるGRI、IIRC、SASB、CDP、CDSBの5団体が企業の報告について財務情報と非財務情報の統合型企業報告を目指す声明を発表した。 報告形式の乱立による混乱を解消するためだ。

加えて、国際的会計基準を統べるIFRS財団はレポートの中でサステナビリティ基準審議会 (Sustainability Standard Board)の新設と国際的基準の設定を提案した。もし、世界的な情報開示の審査組織と基準が確立されれば、企業はそれに従わざるを得ない。このESG関連の情報開示の改善に伴い、投資家はより豊富な情報を基にESG判断を実施するだろう。同時に、資産運用会社・信託にも投資先企業のESGデータに基づいた投資ファンドのESG情報拡充が求められる。

4. 投資規模拡大と"物言うESG株主"

4つ目はESG投資の規模拡大だ。国際金融協会(IIF)によると、ESGを重視した運用を実施するファンドの総額は20年11月末に約1兆3000億ドル(130兆円強)に達し、19年末の1.5倍、5年前の2.7倍となった。また、アメリカの資産運用会社ブラックロックは世界27カ国・地域、425の機関投資家を対象に調査をし、ESG要素を重視したサステナブル投資への資産配分比率は20年の平均18%から25年は37%に高まると予測。2021年にはESGを配慮したマネーの流れは増大する。

同時に、ESG投資家は投資先企業に対し、課題解決への大胆な行動を求めるだろう。環境面のESGの「E」では、炭素ゼロ達成への短期・中期目標設定の明確化、生物多様性を守るサプライチェーン管理が焦点となる。ESGの「S」では、コロナショックで浮き彫りになった労働環境の改善、下請けのサプライヤーから原産地までを含む「ビジネスと人権」への配慮がさらに注目される。Sのダイバーシティ課題に関連して、ESGの「G」では管理職のダイバーシティ・インクルージョンを促すガイドライン設定や役員報酬へのESG基準適用が求められるだろう。こうしたESG課題に積極的でない企業において、株主総会で役員らは反対票を投じられると考えられる。

ESG投資を謳うファンドの増加は、その分多様な性質をもつ投信が現れることを意味する。名ばかりのグリーンウォッシュが増えてしまうようではESG投資の本質からずれ、元も子もない。明確な定義付けと、より厳しい評価がなされるべきだろう。日本の金融庁が設置したサステナブルファイナンス有識者会議でこのような課題を視野に一般投資家向けのわかりやすい説明を義務付ける制度設計を期待したい。

まとめ

2021のESG投資に関連するキーワードは以下の4本柱だ。

  1. 脱炭素の加速
  2. グリーン外交・炭素価格が焦点に
  3. ESG情報開示の厳格化
  4. 規模拡大と"物言うESG株主"

今年もESGの最新トレンドやニュースをいち早くピックアップし、皆様のESGリテラシー向上や投資判断のお役立てるよう一層努めてまいります。


参考リンク:

Reuters:展望2021:脱炭素が「隠れた地政学リスク」に=欧州エネ取引所・高井氏

東洋経済:中国の「新興EVメーカー」生き残りに必要な条件 | トレンド

EnergyShift:日本はなぜ世界のエネルギーシフトに遅れているのか 末吉竹二郎氏インタビュー

金融庁:グローバルにおけるESG情報開示の標準化と日本企業の個性

Foreign Affairs:How to Fix Failing Global Climate Accords

日本経済新聞: 投資マネーが「人新世」の痛みを鎮める

S&P:New York regulators set central cost of carbon dioxide emissions at $125/mt

Carbon Leadership Council : Baker-Schultz Carbon Dividend Plan:BIPARTISAN 

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