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「プラネタリーバウンダリー」地球環境の境界~9つ中6つがすでに限界越え~

2023年9月に発表された調査報告書(*1)にて、人間が地球上で持続的に生存していくためには、越えてはならない地球環境の境界(プラネタリーバウンダリー)の9つのうち、すでに6つが限界を越えており、地球が人類にとって安全な領域から大きく外れていることが示唆された。

プラネタリー・バウンダリーとはストックホルム・レジリエンス・センター所長ロックストロームらにより開発された概念で、現在人類が地球システムに与えている影響の状態を表す。*2 この報告書が示す発見や考察について本記事で説明する。

プラネタリー・バウンダリー

プラネタリー・バウンダリーには9つの指標がある。

(1)気候変動

(2)大気エアロゾルの負荷

(3)成層圏オゾンの破壊

(4)海洋酸性化

(5)淡水変化

(6)土地利用変化

(7)生物圏の一体性 

(8)窒素・リンの生物地球化学的循環

(9)新規化学物質

経済発展や技術の開発により、人々の暮らしは豊かになっているように見えるが、地球はその代償を払い続けている。気候、水環境、生態系などが本来持つレジリエンス(回復力)の限界を超えると、回復不可となるため、突然大規模な不可逆的な環境変化が発生するリスクが高まる。 劇的な変化は必ずしも一夜にして起こるわけではないが、これらの境界線は、人々と私たちが属する生態系に対するリスクを増大させることが予測されている。

現在、地球環境における懸念として、気候変動、生物多様性の損失、汚染が個別の問題であるかのように扱われている。プラネタリー・バウンダリーは、人為的な地球環境への影響を科学的に理解し、地球システム全体の状態を考慮する枠組みをもたらすものである。

この枠組みの目的は、人類が地球に与えている影響の限界点を明確に定量化し、その限界点を尊重することで地球を完新世のような間氷期(※1)にとどめることである。完新世とは、地質時代区分のうちで最も新しい時代(最終氷期が終わる約1万年前から現在)で、農業や現代文明が発展し、比較的安定した温暖な気候が特徴であった。

※1 間氷期:氷河時代のうち、氷期と氷期の間に挟まれた、気候が比較的温暖な時期

人間の活動によって、地球は完新世の環境変動の窓から外れているため、プラネタリー・バウンダリーの指標を使って、限界(臨界点)がどこにあるかを知ることが非常に重要である。

9つの境界のうち6つが限界点を超越

人間の活動が地球の気候や生態系に与える影響はかつてないほど大きくなっており、地球全体の安定を脅かしている。過去の報告書では、定量的にデータが図れておらず公開されていない指標もあったが、今回の報告書で初めて9つの指標すべてが評価された。

下記の図は、上昇するリスク(黄色)から高いリスク(赤色)、そして非常に高いリスク(紫色)への段階的な移行を表現している。この指標の中では、上昇するリスクと高いリスクの区別を明確に定義することはできないが、このリスク間の移行がいつ起こるかを特定している。

(出典:Science Advances、Earth beyond six of nine planetary boundaries)

上記の図でも示されている通り、9つの境界のうち、6つが安全圏を越えている。危険レベルに入った指標は2009年には3つ、2015年には4つであったが、2022年から6つとなっている。また地球のオゾン層の劣化を除くすべての境界の危険レベルが増加していることがわかった。

(出典:University of Copenhagen、Six of nine planetary boundaries now exceeded)

このことから、世界が気候変動だけに目を向けている現状は十分ではなく、この9つの境界間の相互作用、特に気候変動と生物圏の完全性を正確に再現する地球システムモデルの開発が急務であることが示唆された。*3

  1. 地球の血圧が高すぎる

6つの指標が境界を越えていることは、人間に例えるならば血圧が高いと言えるだろう。人間の場合、血圧が120/80を超えても必ず心臓発作を起こすとは限らないが、そのリスクが高まるため、血圧を下げようとする。地球の場合、6つの指標が境界を越えていることで必ずしも災害が発生するとは限らないが、明らかな警告信号である。

「私たち自身そして子供たちのためにも、この6つの指標の境界にかかる圧力を下げる必要がある」

コペンハーゲン大学・地球研究CMEC教授、キャサリン・リチャードソン氏

「地球システムを不可逆的な被害から守りたいのであれば、気候変動のみに注目していてはいけない」

ポツダム気候影響研究所、ヨハン・ロックストロム所長

「気候変動の次に重要なのは、生物圏の完全性であり、地球温暖化を緩和することと、将来のために機能的な生物圏を守ることは、両立しなければならない」

ポツダム気候影響研究所・地球システム分析部門責任者、ヴォルフガング・ルヒト氏)

  1. バイオマスの利用は生物多様性に影響を与える

コペンハーゲン大学のリチャードソン氏は、産業革命以前には生物多様性を支えるために利用可能だったエネルギーの30%に相当するエネルギーを人類が使用していることを示唆した。自然が利用できたはずのエネルギーの多くを人間が奪っていることは、生物多様性の損失の要因に繋がっているため、石炭、石油、ガスに代わるものとして、バイオマスの利用が世界的に増加している。バイオマスは光合成の産物であり、植物が太陽のエネルギーを他の生物が利用できるエネルギーに変換するプロセスである。

  1. 改良された地球システムモデルの必要性

世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えることを目指すパリ協定や生物多様性の回復に向けたCOP15の生物多様性目標等など、人類は科学的に定義された範囲内で発展していく世界を目指して行動している。しかしこの研究では、それだけでは不十分であることが示された。地球上のすべての人々の繁栄と公平性を本当に確保したいのであれば、気候変動だけではなく、斬新な地球システムのモデリングと分析、そして惑星の回復力を保護し、回復させ、再構築するための体系的な取り組みが必要である。

リチャードソン氏は、「この新しい研究が多くの人々への警鐘となり、高度な人間社会の繁栄を可能にする地球条件を維持・保護するために、私たちが地球に与える影響を制限する必要性について、国際社会の関心が高まることを願っている」と付け加えた。

9つの指標の詳細

報告書で示された9つの指標についてひとつずつ詳しく紹介する。

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