9月18日、世界自然保護基金(WWF)は新たなドキュメンタリー「Our Planet, Too Big To Fail」を発表した。この映画は、気候変動と生物多様性の損失という二重の危機に関わる金融セクターの役割に直接焦点を当てる。金融セクター全体に緊急かつ体系的な変革を求め、世界経済が依存している自然システムの破壊に資金を提供するのではなく、パンデミックの後に繁栄し、より回復力のあるサステナブルな経済を構築するための解決策を提示する。
元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏や我が国の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者を努めていた水野弘道氏や金融業界をリードする様々専門家の意見を取りまとめている。人間の経済は自然界との共生を前提とした上で繁栄してきたが、この安定性はもはや保証されておらず、前代未聞の状態に陥っているという。本編では不作為のリスクを受け止め、通常投資の負の影響を縮小し、持続可能な未来のために金融業界が果たすことのできる役割として、以下の5つのアクションを挙げている。
- Action1: リスクを理解し、最小化する
- Action2: ネガティブ・インパクトに歯止めをかけ、それを宣言する
- Action3: 意思決定にあたり、あらゆる世代のステークホルダーを考慮する
- Action4: ネットゼロ経済の達成の新規機会を創出する
- Action5: 必要な制度作りに関わる
人類は文明を発展させてきたが、産業革命以降、環境への負荷を加速させていった。経済界は環境への配慮を欠き、短絡的な目先の利益のみを追求していた。しかし、近年金融業はその場しのぎの投資が長期的な損失を招くことに気付き始めたという。
今年はパンデミックにより記録的な経済停滞が起こった。生態系が崩れれば、今後も大規模な感染症の拡大が起こりうる。さらに、専門家によれば環境問題による経済影響はさらに深刻なものである。感染症は自ら距離を置くことができる一方で、環境悪化は逃れられないからである。
また、ここまで経済を発展させてきた人間の叡智を環境保全のために使うべきだと主張する。企業は公に対する金の流れの透明性を上げ、投資家はそれを把握した上でサステナブルな未来構築のために投資をするのが望ましいだろう。今回のドキュメンタリー作品のように、市民セクターやNGO・研究機関・投資家と企業の連携によるさらなるサステナブルなイノベーションを期待したい。